第45話 VSヤクザ屋さん その2
「助けてって……どういうことだ委員長?」
私は状況の一部始終を森下君と阿倍野先輩に説明した。
途中からは涙が出てきて上手く説明ができたかは分からないけど――。
「それが、今の私の置かれている状況なの」
「委員長?」
「何?」
「お前の親父が死んだのはいつだ?」
「2ヶ月前よ」
森下君と阿倍野先輩は顔を見合わせてため息をついた。
そして阿倍野先輩が私に残念なモノを見るような視線を向けてきた。
「ねえ、森下君? この子が前に話題に上がった眼鏡の委員長なのよね?」
「ああ、そうだ」
「顔は上の中……胸はとんでもないことになっているわ。けれど――この小娘は胸に栄養を取られて脳みその発育が残念なことになっているようね」
「え……?」
「なあ、委員長?」
「何? 森下君?」
私の言葉に問いに森下君は押し黙った。
そして大きく大きく息を吸い込んで彼はこう言った。
「――相続放棄って言葉を知っているか?」
「ソーゾクホーキ?」
「ああ、やっぱり知らないみたいね。えーと……そのヤクザ屋さんはお前の親父の借金を払うのは家族の責任とか頭のおかしいこと言ってんだよな?」
「うん。そうだよ」
「日本の法律では親の財産は相続できる。これは分かるな?」
「うん。知ってるよ?」
「借金まみれで親が死んだ場合も……当然マイナスの財産は相続の対象だ」
「だから私たち家族は困ってるわけで……」
「法律ってのは基本的には偉い学者さんが……色んな事を考えて色んな立場の色んな考え方の人がいることを含めて調整して、そうやって至極まともに作られているんだ。冷静に考えてみろ。親の借金を子供が返せとか意味わかんねーだろ? あくまで契約主体は親と第3者なんだからさ」
「言われてみればそうかもしれないね。それで?」
「だから、親が借金まみれで死んだ場合、相続については『親の借金なんて私は知りません』って裁判所に訴えればチャラになるんだよ。ただし期間付での裁判所への手続きは必要だがな」
「えっ!? そうなの!?」
そこで阿倍野先輩は深くため息をついた。
「巨乳には馬鹿が多いって噂は……本当だったのね」
「ところでどうして森下君はそんなことを知っているの?」
「俺の親父は信用金庫勤めだからな。金の事は色々と話題で上がる」
なるほど。
「じゃあ、阿倍野先輩は?」
「私の偏差値は全国模試で76よ。ちなみに、日経新聞も毎朝読んでいるわ」
説得力抜群だった。
っていうか、この人……どこの世界の完璧超人なんだろう……。
「え? 阿倍野先輩ってそんなに頭良いの?」
「ええ。ちなみに理系で……数学と化学と物理の公式はめんどくさいから覚えない派よ。作り方だけ理解して試験のときは自分で1から作る派ね。センター試験系の時間勝負だとちょっと困るのだけど……まあ、だから、喧嘩も上手いでしょ?」
「なるほどね」
喧嘩? と私の頭がクエスチョンマークで埋まった。
と、その時、森下君は立ち上がり、パンパンと手のひらを叩いた。
「で、そのヤクザの金融屋の事務所はどこだ?」
「場所は知ってるけど……どうするつもりなの森下君?」
「俺が話つけてやるよ」
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