第19話 俺の阿倍野先輩がこんなにハレンチな訳がない 前編
サイド:レーラ=サカグチ
ビルの屋上から繁華街のネオンを見下ろしながら私は呟いた。
「さて……」
ヴァチカンからの指示を受けて、私は九尾復活のカーニバルに参加している訳だ。
ちなみに、私はヴァチカンの特務退魔部隊ドミニオンズに所属している。
ヴァチカンでも極右勢力と知られ、スタンスとしては信徒には限りなく寛容に――そして敵対する異教徒と化け物は発見次第にぶち殺せと言うものだ。
日本と言う国は霊的には八百万の神々が統治する雑多なカオス状態だ。
なので、今まではあまり私達は関与をしていなかったが、ヴァチカンとしては今回の事件を足がかりに日本に進出し、この国の全ての化け物をぶち殺すつもりのようだ。
そうして私は阿倍野家の生贄選抜試験に同席して、狩りまわっていると言うか場を荒らしまわっている訳だ。
大体、阿倍野家の面々と私を併せて総数で一晩で500体程度は低級な妖魔を狩る訳だ。
そして、そのうちの半分は私が狩っている。
まあ、正直な話、阿倍野家の巫女たちははっきり言っちゃうと雑魚よね。
っていうか、私が超絶天才美形エリート退魔系少女っていう身も蓋も無い事実があるんだから仕方ないんだけどさ。
正直、私と同席しちゃう凡人達には心の底から同情しちゃうわね。
「……今夜も踊るわよ」
私はそのままビルの屋上から夜の街へとダイブした。
――そして数時間後。
私は24時間営業の喫茶店で頭を抱えていた。
「なんで妖魔が……いないのよ……」
最初の内に20体を狩ったところで、今夜は打ち止めとなったのだ。
いくら探しても妖魔の気配は周囲から完全に消え去ってしまっていて、どれだけ探してもこれ以上の発見は不可能だろう。
「ヴァチカンにどういう報告をすりゃあいいってのよ……」
化け物をぶち殺すのが私の至上命題で、今回のミッションはとにかく数を狩りまくれというものだ。
恐らくは……私は阿倍野家に出し抜かれた形になっている。
憂鬱気に私は軽くため息をついた。
サイド:森下大樹
阿倍野先輩他達が夜な夜な行っているという謎の儀式の翌日。
珍しく学校では特にイベントも起きず、母ちゃんのカレーを食べて風呂に入った俺はスマホを弄っていた。
と、そこで電話がかかってきた。
「もう……こんな時間か」
時刻は11時半。
日課となっている阿倍野先輩との電話タイムの時間だ。
「もしもし森下ですけど」
「ところで森下君?」
「はい、なんでしょうか?」
「私は今……どんな服装だと思う?」
「パジャマでしょうか?」
「いいえ違うわ。今は上下……下着姿よ」
「突然何を言い出すんですか貴方は」
まったく、この人は俺にそんな情報を与えてどうしようっていうんだ。
「ちなみに黒よ。スケスケよ」
「スケスケって言う情報を俺に伝える必要あるんですか!? っていうか寒くないんですか?」
4月とは言え今日は寒い日だ。
エアコンでも入れていないと下着だけでは厳しいだろう。
「私はね森下君?」
「はい?」
「昂っているのよ」
「たかぶって……いる?」
「ええ、昨日は私一人で400体の妖魔を殲滅したわ。これで私の単独首位が確定したの」
「そりゃあ良かった。索敵スキル便利でしょ?」
「ええ。大体私が一番先に発見して一番槍で消滅させてやったわ。従妹連中の涙目といったら……今思い出しても笑ってしまうわ」
「それで昂っている……と?」
「そうなのよ。体が熱くてね……火照って仕方がないの」
「風邪は引かないようにしてくださいよね」
「だからね、森下君?」
「何でしょうか?」
「体が……火照って仕方ないのよ。言い換えるのであれば……私は興奮しているの」
阿倍野先輩の……ハァハァと切なそうな吐息が聞こえてくる。
「……興奮?」
「ねえ、森下君?」
阿倍野先輩の……ハァハァと切なそうな吐息が更に強まっていく。
「……何でしょうか?」
「私は今、昂っているの……興奮しているの」
「……はい。それは聞きました」
「テンションアゲアゲなのよ」
「アゲアゲ……ですか?」
「ええ、昂って荒ぶっているわ。興奮しているわ。だから――鎮めなくてはいけないの」
「鎮める……ですか?」
「ええ、そうよ」
しばしの間があって、阿倍野先輩が尋ねてきた。
「ねえ、森下君?」
「何でしょうか?」
「体が火照って熱いので……今……ブラを取ったわ」
「……」
「ねえ、森下君?」
「何でしょうか?」
「テレフォンセックスって言う言葉を知っているかしら?」
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