第149話

 世界樹の雫が銀色の霧になって降り注ぐ。


 陽光を浴びて、虹がかかり、そして――


「あれ? 体から……光が……?」


 コーデリアの体から無数の光の粒子が溢れ出し、そして宙に溶けていく。


 そして、次に俺の体からも。


 先ほどのコーデリアのものよりも規模が大きいのは、まあそういうことなんだろう。


「ナノマシンによる武装が解かれているんだ」


 キラキラと輝き、空に舞い上がり――溶けていく。


 今までの修行の全てが、霧散していく。


 リリスや龍王達にも同じ現象が起きているようで、次にドドドと林の樹木が倒れる音が鳴り響く。


 世界樹もまた、人類の守護の為にナノマシンをたんまりと内包した植物だから、当たり前と言えば当たり前か。


「これで、ファンタジーも終わりっていうこと……だな」


「でも……これで良かったのかな? 武装を解いて、魔物に対抗できない世界で、私達……生きていけるのかな?」


「俺たちには知恵がある。いつの時代でもどんな状況でも、それこそ図太く生きていく。それが人間ってもんだろ」


「それにな」と言葉を続ける。


「悪い事ばかりじゃない。その代わり誰にも縛られない、人口が調整されることも、外なる神に怯えることもない……誰にも縛られない管理されない世界だ。人間は神じゃない。神じゃない者が……世界をあり方を決めるなんて許されて良いことじゃないんだよ」


「じゃあ、誰がこれから先の未来を決めるの?」


 そうして、俺は「はは」っと笑ってコーデリアに言った。


「――これから先を決めるのは俺たちを含めた世界中のみんなで……だ」


 空を見上げる。

 見えるのは、ポカポカと温かい陽の光と、銀色の世界樹の霧にかかる虹、そして宙に溶け行く光の粒子。


 幻想的な光景に思わず息を呑む。



 そして……思う。


 そう、人間は環境に応じて進化ができる生き物だ。

 どこかの誰かにその存在の在り方なんて決められるわけがない。


 何があっても世界は回る。地球は回る。

 同じことを繰り返しながら、けれども螺旋を描きながら上方に。


 俺たちが願った――より良き未来へとな。





・補足


 と、いうことで次回エピローグで完結です。

 書籍版では世界に対する回答として、外なる神の全てを駆除し、危機を排除するという方向でお話が進みます。


 ネット版は武装放棄で未来に託すというお話ですね。


 商業版は筆者の趣味は抜きにして、想定読者が求めるであろうエンタメに徹する関係上、分かりやすい方が良いだろうということでその形です。


 個人的にはどっちのルートも好きですけどね。




 ちなみに外なる神ですが……




1 この時系列では劉海が寝返っていないので、リュートとの死闘がない→外なる神・人魔皇に唯一対抗できる奥義でもあるマリオネットの伝承がリュートに行われていない


2 コーデリアが人魔皇化していない


3 陽炎の塔での完全状態での魔人化フラグが立っていない




 この関係で外なる神とガチンコの殴り合いができないというか、勝てないので、ピンチヒッターで女神様を登場させました。


 設定上、魔人状態のリュートがマリオネット使って、龍王・龍海・マーリン・リリスが揃っていて頭を捻れば何とかなるくらいのパワーバランスです。


 人魔皇コーデリアはリュートよりも余裕で強いので、全員揃っていれば、ちょっと策を練れば普通に勝てます。

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