第146話
「さあ、抗いなさい……この星の子等よ。そして、貴方達の思う未来をその手に掴みなさい」
「でも、俺たちにはもう力が残っちゃねぇ。3種の防御障壁……絶対防御を抜くにしても龍王たちが万全の状態が前提だ」
実際、コーデリアやリリスは別として、3人は満身創痍でどうにもならない状態だ。
万全の状態なら、あるいは俺たちの剣は外なる神にも届いたかもしれないが……。
そこで、女神は「あら?」と悪戯っぽく笑った。
「あなた自身が最初に選んだのではないですか? お忘れになったので?」
「俺が……最初に選んだ?」
「エクストラレベルのスキルですよ? その効果は抜群です」
と、そこで俺は「あっ!」と息を呑んだ。
「それってひょっとして……?」
「ええ、死に戻りの際に不屈と共に選んだあのスキル。コーデリア嬢が笑顔でいられるためにと……あのスキルを選んだのでしょう?」
興奮と共に少しの間、思案する。
そして拳をギュっと握りしめて、俺は大きく頷いた。
「……そうか。いける……確かにいけるっ! それなら……勝てる!」
そうして、俺は全員に向けて大声で叫んだ。
「外なる神は地下から来る! 今すぐ外に出るぞ――そこで迎え討つ!」
そのまま、急いで外に出て、林に向かう。
かつて、転生者達が立ち枯らせた世界樹の子供……若木の林へ。
しかし、100メートル程度の樹高で子供ってんだから、本当に驚きだ。
「リュート? 林で迎撃するの?」
「いや、迎撃は奴が方舟から出てきてからすぐの所だ。ここでは――これをやる」
若木の一つに掌をあてがう。
そして、俺のMPのありったけを世界樹に流し込む。
――まだだ、こんなんじゃ足りねえ
仙術を駆使し、大気中の魔素を吸引、それを右から左に樹木に流す。
そして――
――スキル発動:農作物栽培レベル15っ!
本来、MAXレベルが10のところの、限界突破の15だ。
多少の無茶でも、根性で道理を通して見せる。
――否、システムが――女神が無茶を通してくれるっ!
そのままスキルにMPを乗せて流すこと数十秒。
メリ、メリっ、メリメリメリメリ――――っ!
物凄い音と共に、樹木が爆発的に巨大化していく。
あれよあれよという間に樹木は伸びに伸び、気が付けば数百メートルの大きさに。
そして、それは起きた。
樹氷と葉が金色に輝き、霧――いや、雫が降り注いできた。
金色に輝く霧は即時に周囲に充満し、木漏れ日を受けて虹色に輝く。
そこで、ようやくコーデリアは俺の狙いを理解して……大きく頷いた。
「世界樹の雫……HPとMPの……全回復っ!」
「そういうことだ。これで俺たちも万全……なら、これで俺たちの勝ちだ」
言葉を受けて、コーデリアは大きく目を見開いた。
「アンタが勝ちって言ったってことは、信じても良いんだよね?」
「ああ、ここまでお膳立てしてもらえればな。なら、どんな無茶でも通して見せるさ」
ドンと俺は胸を叩き、そしてコーデリアは「うんっ!」と、ニコリと笑顔の花を咲かせる。
と、俺は「はは……」と思わず吹き出してしまった。
「……どうしたの?」
「いや、本当にこのスキルでお前に笑顔の花を咲かせるとは思わなかったからさ」
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