第145話
「……終わりだ。何もかも。もうサジを投げるしかない」
「ちょっと待ってリュート? で、で、でもさ!? 防御障壁は抜けるんだよね? だったら本体を一撃で沈めてしまえば――スキル:村人の怒りでもダメなの?」
「ああ、結局のところはそこがネックだな。ラストを決めるの俺がしかいないんだが……火力不足だ。シミュレーションでは後少しのところまではいったんだがな。魔人化というピースが抜けててどうにもならん」
「でも、この前……魔人になってなかった?」
「いや、アレはモーゼズの遠隔操作が必須で、俺の意思じゃどうにもならん」
「それじゃあやっぱり……?」
「ああ、ここ数年、ありとあらゆる可能性を考えて、無理だという結論に達した。どうにもならねえ」
「アンタがそこまで断言するなら……本当にどうにもならないんでしょうね」
全員が沈痛な面持ちを作ったその時、一面が銀色の光に包まれる。
そして、光が収まった時――
「女神……だと?」
思わず、俺はすっとんきょうな声をあげてしまった。
転生の女神にしてこの世界の管理者。
しかし、一体どうしてこの局面で……?
そんな俺の疑問を見透かしたように女神はクスリと笑った。
「人間同士の争いでは既に勝者は貴方達です。未来へのサイは投げられました」
「そして……」と、女神は言葉を続ける。
「システムもまた人類の根絶を目的とするものではありません」
待て、待て……ちょっと待て!
いや、言ってることは分かるし、凄くありがたいことをしてくれそうなんだけど……ちょっと理解が追い付かない。
「ここは人類の生息圏にして安息の地――箱庭の内部です。まあ、私にも多少の権限があります」
「ってことは……?」
「ええ、これはいわば掟破りの場外乱闘です。故に非常事態と認識し、外なる神の生物兵器としてのナノマシンに介入。一時的に私が弱体化を施します」
そうして女神は床に掌を置いて――機械のような音声で言葉を続ける。
≪コード623。殲滅者のシステム管轄内での暴走を確認≫
≪これより殲滅者の弱体化を実施≫
≪自動回復プログラム。オールグリーン。武装解除を確認≫
≪即死回避プログラム。オールグリーン。武装解除を確認≫
≪物理耐性・魔法耐性。オールグリーン。武装解除を確認≫
≪免疫超活性・細胞組織超再生。オールグリーン。武装解除を確認≫
≪対物理障壁・対魔法障壁・対物理魔法混合障壁の自動修復システムに介入……オールグリーン。武装解除を確認≫
≪オールグリーン。殺戮者の障壁も含めた全回復能力の解除を確認≫
「と、ここらが私の介入の限界ですね。殲滅者……外なる神の絶対防御も含め自動回復システムを停止しました。ただし、既にある防壁はそのままですがね」
しばし俺は押し黙り、そして……女神に尋ねる。
「場外乱闘だからってだけじゃねーだろ? なあ、女神様? どうして……そこまでやってくれるんだ?」
俺の質問に困ったように女神は笑い、「何だかんだで――」と、言葉を続けた。
「――私はこの世界を愛する女神ですから」
そうして、俺たちに向けて慈愛の笑みと共にこう言った。
「さあ、抗いなさい……この星の子等よ。そして、貴方達の思う未来をその手に掴みなさい」
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