第142話


 サイド:劉海


「ったく、一体全体何だったんだあの変な喋り方の女は」


 全ての敵を片付けて、俺様ちゃんはその場にペタリと座り込んだ。


「ふふ、流石のお主でも疲れたと見える」


「テメエは最初の一発だけで後は高みの見物だったろ? 流石の俺様ちゃんでも数千の人数は骨が折れる」


 まあ……実際問題、最初の畳みかけで総崩れにしないとやられてたのはこっちだからな。

 最初に恐怖を植え付けて、組織的抵抗を奪って恐慌状態。

 逃げるウサギの集団の状態にしなかれば、実は結構ヤバかった。


 なんせSランクの集団が数千だからな……何だかんだでモーゼズって言う野郎はそれなりに鉄壁の布陣を敷いていたのは間違いない。


 ま、そこは作戦勝ちだな。 


「とはいえ僕も疲れたけどね」


「龍化して本気も出してねぇのにか? 結局、まともに働いたのは俺様ちゃんだけじゃねーか。ヘトヘトだぜ。もうやりたくねえくらいだ」


 そうして俺様ちゃんはそこで言葉を止めて――


「まあ、美少年相手なら何回でもイケるけどな」


「……」「……」


 何だか残念な目で二人がこっちを見てきた。


 ったく、本当に冗談の通じねえ奴らだ。


「まあ、軽口が叩けるなら問題ないでしょう」


 と、そこで俺様ちゃんは地下から気配を感じた。


 強者の気配が4000程度、そしてその中に10人程度……こちらは更に強い気配。


 龍王も気付いたように肩をすくめる。


「どうやら≪おかわり≫のようですね。まだ量産型を隠していたとは……」


「今度は転生者が直々に率いているみたいだな。それにお付きの連中もさっきの連中よりも間違いなく強い」


「しかし、本当に準備の良い連中じゃ」


「ああ、さっきの変な喋り方の姉ちゃんも含めて様子見の捨て駒ってことだったんだろう。で、お前らは調子はどうなんだ?」


 この事態も当然想定している。

 だから、龍王は龍化しなかったのだし、マーリンも最初の一発しか撃っていない。


「効率的に運用して残り2発というところじゃな」


「龍化したとして、全力でのブレスは20回というところだね」


「悪い、俺様ちゃんは割とマジでガス欠気味だ」


 で、三人でしばらくあれこれ思案して、どうやら結論は一緒だったみたいだ。


「はは、こんなことは生まれて初めてだよ」


「ああ、俺様ちゃんもだ」


「無論、ワシもな」


 そうして三人の瞳に闘志が宿る。


「察する敵の戦力から考えて……命のやり取りのギリギリのラインじゃねーか。はは、燃えてくるぜ」


「ああ、同感だねっ!」


 そうして俺様ちゃん達は、敵の出てくる地下への階段から離れて、入り口に陣取る。


 ここなら十分に敵を惹きつけることができる。

 そもそも、最初に大砲をぶっ放す以外に勝機もないし、この手しかない。


「結局、やることはさっきと同じってことだ」


 そして、ゾロゾロと地下から量産型が出てきて、地上に溢れたその時――



「|創造の原初(ビッグ・バン)」



 ――核熱爆破による第2ラウンドのゴングが鳴らされたのだった。

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