第104話
「――足手まといだから……後ろで見ててっ!」
「え……いや……でも……コーデリア?」
狼狽するオルステッドを私は叱責した。
「良いからっ! 大人しく見ておいてっ!」
そうして私は「さて……」と独り言ちた。
相手はアルティメットゴブリンであり、大厄災の代名詞。
その力は単独で大国をも飲み込むと言われているほどの規格外だ。
アルティメットゴブリンは先ほどの私の動きを見てから警戒の度合いを高めている。
立ち上がり、そして周囲を一瞥して――やはり指をパチリと鳴らした。
残る全ての強化ゴブリンエンペラーと、そしてアルティメットゴブリンがこちらに飛び掛かってきて……応戦を開始する。
そこで私は思わず舌打ちをしてしまった。
と、いうのもゴブリンエンペラーが5体ほど体表硬化術式を使用したのだ。
いや、そのこと自体には何も思う事はないのだけど――アルティメットゴブリンはその5体を盾に使用したのだ。
5体を矢面に立たせて、その背後に隠れながら私に突撃してくる格好となる。
更に私の周囲には他のゴブリンたちも散会していて……中々に多勢に無勢の状況だ。
とりあえず、一番厄介そうなのは硬化したゴブリンの背後に隠れている親玉なのは間違いない。
私は気合の咆哮と共に、硬質化したゴブリンに剣を突き出した。
ゴブリンエンペラーの硬質化術式は相当に高度なものだ。
だから、いくらかのダメージを与えれば御の字と思っていたが――
――剣は高質化したゴブリンの表皮をものともせずに、それどころかまとめて3体分のゴブリンを貫いた。
「これが……火之迦具土神(ヒノカグツチ)?」
ドサリと三体のゴブリンが地面に倒れ、続けざまに背後から襲い掛かってきたゴブリンも一閃。
っていうか、硬質化したゴブリンも、そうでないゴブリンも手ごたえに違いを感じない。
まるで水を切るかのように……手ごたえを何も感じないのだ。
「どんだけデタラメな性能なのよ……」
半ば乾いた笑いと共に、私は横合いから飛び掛かってきたゴブリンを大上段から切り下す。
勢いあまって地面に剣が接着したが――地面も切れた。
いや、地面が……燃えた。
剣閃の直線状に10メートル。青い炎柱が走り所々の土がガラス化している。
「勢いあまって自分を産んだ母神を焼き殺したっていう……神話は伊達じゃないみたいね」
良い剣ってのは、使用者の思うがままに切れたり切れなかったりする。
ただ、この剣は――触れるモノの全てを切り裂き燃やし尽くす炎の魔剣で……本当にじゃじゃ馬も良いところみたいだ。
「ハアアアア――っ!」
剣を振る。ゴブリンが倒れる。
剣を振る。ゴブリンの首が飛ぶ。
――これでトータル13匹っ!
全てのゴブリンエンペラーを屠った私は、剣を片手にアルティメットゴブリンと向き直った。
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