第97話
サイド:リュート=マクレーン
獣人の国の戦争の後、龍王と愉快な仲間たちとの話し合いがあった。
で、なんやかんやで決戦まで半年間の猶予があるってことで……。
とりあえず、半年間をどうしようかと俺は考えた。
リリスは良いとして、コーデリアは確実に渦中に巻き込まれるので、俺があいつを鍛えようか思ってたんだが……。
俺に相談もなく、コーデリアは劉海のジジイのところに行っちまった。
前回、コーデリアと戦った時に一撃で終わらせちまって……色々と思うところがあったらしい。
まあ……あいつの身の安全と言う意味では、あそこ以上に適切なところはないで心配はしてないが……。
でも、あの男の娘ジジイは無茶苦茶やりやがるからな。俺も毎日殺されかけたし。そこは非常に心配ではある。
リリスについては前々からの予定通りに、龍の里で覚醒イベントをすることになってて、あいつも色々と思うところがあるらしく……それまでの間はマーリンのロリババアのところに弟子入りしてしまった。
ったく、どいつもこいつも勝手な連中ばかりだな。
いや、まあ……俺が一番好き勝手やってはいるんだけどさ。
で、俺が今何をやっているかと言うと――合宿だ。
「ってことで、お前らをキッチリ鍛えなおすからな」
今、俺は三枝とエルフのジジイと、そしてギルド長を引き連れて人界と魔界の淵にいる。
流石に半年後でも、コイツ等を最果ての極地に連れていくことは不可能だ。
とはいえ、ギリギリで人間を辞めたといわれるレベル程度には到達してもらわないと……俺が困る。
「無理ですよリュートさん? レベル上げって次元じゃないですよこれっ!?」
討伐難度S級のエビルサイクロプスの、ジャンプからの着地の振動に吹き飛ばされながら三枝は叫んだ。
「いや、ちゃんとしたレベル上げだ。俺の時はもっと酷かったぞ」
そうして俺は後方に視線を向ける。
「今更こんなジジイを捕まえて無茶を言いよる……安全マージンという言葉を知らんのかお主は?」
同じく討伐難度Sランクの……エルフの極大魔法の直撃を受けても無傷のアークミノタウロスに狼狽えながらエルフの爺さんが叫んだ。
「安全マージンという言葉なら、前回の人生に置いてきた。すまんな」
そうして俺は右方に視線を向ける。
「何でアッシまで……こんなことやらされてるんでやすかああああああっ!」
これまた討伐難度Sランクのデーモンプリンスに追いかけまわされているギルド長が叫んだ。
「オッサンは数合わせだ」
「本当にひでえ扱いでやすねっ!?」
と、そこで俺が全員に助け舟を出してやった。
まあ、全ての魔物を一刀の下に屠っただけなんだがな。
全員が息も絶え絶えで真っ青の表情を作っている。
ってか、やっぱりこいつ等……全然駄目だな。世間一般的には強者の部類なんだが、これじゃあ俺たちの戦場じゃあ使い物にならない。
三枝は覚醒状態ならまだ……ほんの少しだけなら使えるが、そもそもの素体が貧弱過ぎるので神の力を100%扱えていない。
まずは素のままでそこそこできるようになってもらえんと……。
「ああ、オッサンさ。さっきの……数合わせってのは冗談だ」
「っていうと?」
「俺の信頼できる知り合いの中では、リリスとコーデリアを除けば……お前らが一番戦力的にまともだからだよ」
そうして俺は指を3本立たせた。
「三人で一組だ。せめてそれで……今のコーデリア……いや、それじゃ全然駄目だな。今の本気を出した状態のリリスレベルには到達してもらう。当然――命がけの道のりとなるがな」
三枝を中心としての3人一組。
アタッカ―の三枝で、盾役のオッサン、そして臨機応変に攻守の2手で全員を魔法補佐するエルフの爺さん……意外にこの3人のパーティーとしての相性は悪くない。
「……でも、どうしてそんなことをするんです?」
「あっしに至ってはギルドの仕事があるんでやすぜ? ピクニック感覚で数日……くらいの感覚で誘われたからついてきましたが……」
「ああ、実はな……」
と、そうして俺は今現在のこの大地が置かれている現状と、モーゼズ達のような転生者の説明を始めた。
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