第61話

「間違いなく……彼は最低でもSランク級冒険者の下位以上の実力を持っているはずよ」


 ようやく状況を理解してくれた所で、俺は二人に問いかけた。


「で、どうするんだお前等?」 


 剣士の男と魔術師の女はマッハの速度で土下座の姿勢を取った。



 

「「降伏します! すいませんでしたっ!」」



 うんと俺は頷いた。

 賢明な判断だと思う。


「まあ、素直にするなら|俺は(・・)お前等にこれ以上の危害は加えない」


 そこで剣士と魔術師は顔を見合わせて安心したような表情を見せた。

 まあ、強盗殺人をしかけているのだから、返り討ちにされた場合は殺されても文句は言えない。

 温情処置と言う事で安堵の息が出るのも無理はない。


「つっても、お前らの場合がやってる事がやってる事だ。このまま街に連れ帰って衛兵に後の沙汰は引き継ぐよ。良くてギロチンで痛み無く死ねる。普通にいけば吊り首で苦しみながら死ぬ。悪ければ晒し者にされて、呑まず食わずで絶命するまで、衆人からの石投げだろうな」


 そこで二人の表情が凍り付いた。


「お前等……命まで奪うまでの追いはぎをやってたんだろ? 因果応報って言葉を知らんのか?」


「……」


「……」


 二人は押し黙り、ぐったりとした表情でその場で表情を蒼くした。


 聞いた話によると下級冒険者を何人も殺してきたって話で……まあ、死は免れないだろう。

 ハムラビ法典的な目には目を的な法律の社会なので、ひょっとすると、見せしめのために皮剥ぎなんかの拷問が追加されるかもしれない。


「まあ、どちらにしても殺っちまったお前等が悪いな」


 と、そこでガサガサと音が聞こえて来た。

 全員が音の発信源を眺めていると、藪の中からリリスが現れた。


「どうしたんだリリス?」


「……リュート? 大丈夫?」


「質問に質問で返すなよ」


 相当に急いで来たようで、リリスは肩で息をしていた。


「大丈夫って何が?」


「……そこの女」


「女?」


 リリスが鬼の形相で魔術師の女を睨み付ける。


「……ショタコン気味でリュートを無理矢理に襲う予定だと聞いた。だから急いで私はここに来た。泥棒猫を阻止する為に」


「何言ってんだお前?」


「……僧侶。お爺ちゃんがそう言っていた」


 そういえばさっき、魔術師の音が言っていたな。


『ちなみに……先ほどいたお爺ちゃん……僧侶は真性のロリータコンプレックス。片方は10に満たず、もう片方は13~4歳くらいかしら? 何故に子供を二人……あの場所に残してきたかって事よね。Dランク冒険者に対する相手はEランクとただの子供。あのお爺ちゃんはただの僧侶じゃなくてあの見た目で格闘スキルも高いモンクなのよ。まあ、向こうは向こうでそろそろ始めてるんじゃない?』


 ふむ。 

 どうやら、神聖のロリコンであるとことのお爺ちゃんはリリスですら守備範囲外だったようだ。

 見た目は12歳~13歳だが、実年齢が16だと言う事がバレたのだろうが。


 まあ、そこはどうでも良いが……状況は良くない。


「……リュート? どういう事?」


「子供……ってか、リズをレイプするのにお前が邪魔だったんだよ。で、お前は口車に乗せられてこっちに来ちまったって事だ」


 リリスの顔色が見る間に蒼くなっていく。


「……何という事」


「その台詞はこっちが言いたいわ」


 ともかく……と俺は剣士と魔術師にこう言った。


「最初にお前等には危害を与えずに衛兵に引き渡す……逮捕だって言ったよな?」


 ブンブンと二人は首を縦に振った。

 どの道、終了した未来しか待っていないだろうが、それでもこの場で殺されるよりかはいくらかマシと言う事だろう。


「悪いが、あれはウソだ」


 剣士の表情が瞬時に歪んでいく。


「そんな……酷っ……ブベラっ!」


 剣士のアゴに蹴りを入れる。

 脳震盪で意識を奪うと同時にエクスカリバーでアキレス腱を切断。


「お互いに切った張ったの世界で生きてんだろうに。しかも殺人強盗の追いはぎ稼業……何されたって文句も言えねー立場なんだから酷いもクソもねーだろ? まあ、殺されないだけでありがたく思うんだな」


 言葉と同時に魔術師の女にも同様の処置を施す。

 これで、途中で目が覚めたとしても遠くまでは逃げられない。


「って事でリリス?」


 呼びかける前に既にリリスは駆けだしていた。


「……急ごう。リュート」


 ああ、と頷き俺はリリスの後を追った。

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