第59話
「何言ってやがんだお前? AランクにSSSランク相当冒険者だって?」
剣士の男の言葉を皮切りに、3人は腹を抱えて笑い始めた。
「エ、エ、エ、SSSランク? Aランクってのも失笑モノなのに……冗談は休み休み言えよな?」
「うふふ。ハッタリってのはスケールが大きすぎると逆効果になっちゃうのよ? せめてギルドから私達の内偵を受けたBランク下位の冒険者とかCランク上位の冒険者とか……色々あるんじゃなくて?」
いや、まあ事実なんだけど……。
まあどうでも良いや。
そこで戦士の男が俺に向けてニヤケ面を浮かべながら近づいてきた。
「へへ……しかしお前さんのツレはとんでもない美形揃いだったが、お前さん自身も可愛い顔してやがるな」
「アニキ……またですかい?」
「俺はどっちでもイケんだよ。いや、むしろ女よりも男の方が良い……本当にお前は可愛い顔してやがるな」
その会話を聞いて、お尻にゾワっと嫌な汗をかいた。
いや……本当に死ぬほど頑張って強くなって良かったな。
前回の歴史の時の俺ならここで為すすべもなく処女を散らしていたんだろう。
そう考えると、背筋から尻にかけて汗をかき、そして鳥肌が全身を覆った。
と、その時、剣士の男が戦士の大男にすがるような声色で懇願した。
「アニキィ……あっしもどっちもいけるタイプです。だから女を犯しますが……でも、男は喰いません。何故なら……男はアニキ一筋だからでやす」
「へへ、可愛い事言ってくれるな」
「アニキが男を無理矢理に喰うのは……もう性癖だから仕方ありやせん」
「ああ、確かにこりゃあ癖のもんだ」
「ですが……レイプは良いですが、浮気はダメでやすよ?」
「ああ、確かにこの兄ちゃんは……可愛い顔をしているが……俺もお前一筋だ。心までは奪われないさ」
アニキって……こいつらそういう関係だったのかよ。
ってか、会話内容がぶっ飛びすぎるだろ。
「ふふ、坊や……驚いた? ちなみに私はレズビアンよ」
「いや、聞いてねーから」
そこで魔術師の女は頬を膨らませた。
「ちなみに……先ほどいたお爺ちゃん……僧侶はロリータコンプレックス」
「いや、だから聞いてねーから」
そこで魔術師の女は口元を醜悪に歪ませた。
「片方は10に満たず、もう片方は13~4歳くらいかしら?」
リリスは16だが、ちんちくりんなのでそう見られても仕方ねーな。
「ん? 何が言いたい?」
「何故に子供を二人……あの場所に残してきたかって事よね。Dランク冒険者に対する相手はEランクとただの子供。あのお爺ちゃんはただの僧侶じゃなくてあの見た目で格闘スキルも高いモンクなのよ。まあ、向こうは向こうでそろそろ始めてるんじゃない?」
ああ、そういう事ねと肩をすくめた。
「そりゃあ可哀想な事をしちまったな」
「あら? 仲間が蹂躙されるってのにえらい余裕ね?」
いや、むしろお爺ちゃんのほうが危ないからな。
リリスは俺と違って容赦ねーからな……。しかもリズを溺愛してるっぽいので……下手すればここいら一帯が焦土になる危険がある。
と、その時、戦士の大男が舌なめずりしながらこう言った。
「って事でお楽しみと行こうか」
そういうと男は鎧を脱ぎ始めた。
上半身が裸になった所で剣士の男が息を呑む。
「アニキィ……何度見ても惚れ惚れしますわ」
まあ、確かにガチムチも良い所だ。
地球のボディービルダーの選手権に出ればかなり良い所までいくだろう。
そこで、戦士の大男は何かを思いついたように掌をポンと叩いた。
「これからお前は俺に蹂躙される訳だ」
「……」
「そして俺の職業は戦士だ。鉄壁の防御力とタフネスを誇る」
「まあ、それが前衛の盾である戦士の……絶対必要条件だよな」
戦士の大男は俺に向けてウインクをした。
気持ち悪い事、この上無い。
「そこで……だ」
「ん?」
見事に鍛え上げられた腹筋をドンと叩いてこういった。
「一発だけ殴らせてやるよ。それでお前が俺を悶絶させることができれば無罪放免だ」
無罪放免もクソも俺は何も悪い事はしてねーんだが……。
「どうしてお前みたいなクソ野郎が、慈悲……というかチャンスを与えるような事をさせるんだ?」
「決まってるじゃねーか。全力で殴っても微動だにしない俺に……圧倒的実力差を感じたお前の可愛い顔が絶望に歪むところが見てみたい。俺は生粋のドSでね?」
「…………」
最早溜息しか出ない。
呆れた表情の俺に、ドヤ顔で戦士はこう言った。
「全力でやって良いぞ? 鎧なしでも……俺の腹筋は駆け出し冒険者の扱う刃物程度なら通さないからな」
ニヤニヤする剣士と魔術師。
恐らくだが、一発殴らせるという茶番は何度も行われているんだろう。
3人全員の瞳に絶対の自信が見て取れる。
まあ、格闘職で同格以上の冒険者ランクなら話は別だろうが、それ以外の下位ランク冒険者に戦士という職業の絶対防御はそうそう抜けるもんではねーわな。
「ああ、そりゃあどうも」
手首のスナップだけで、ドアをノックするように軽く殴る。
俺が全力で普通に殴ったら……こいつは上半身の全てが吹き飛んで肉片になっちまうからな。
「……グキャ……ハッ……っ」
ドサリ。
大男は腹を抱えて、顔色を真っ青にして脂汗を垂らしながら蹲った。
そして剣士の男と魔術師の女は信じられないとばかりに大きく目を見開く。
パクパクと口を何度も開閉させて呆け面でこう呟いた。
「…………ハァ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます