第58話
「じゃあ、俺は後ろで控えていればいいのか?」
俺の問いに剣士の男が応じた。
「だから黙ってって言ってんだろ?」
「一切の発言も許されないってのか?」
ジワジワとリザードマン達がこちらに寄ってきている。
「だからさっきからそう言ってんじゃねーか。Eランク級の素人がDランクの……いや、パーティーとしてならCランクのベテランに指図してんじゃねーぞ?」
まあ、俺としてはこいつらがリザードマンに殺されようがどうでも良い。
連続殺人犯の尻尾が掴めないままに容疑者が死亡。
そしてその後は犠牲者も出ないって話なら、未解決事件でもそれはそれで構わない。
と、そんな事を思っていると、リザードマンが俺達の半径15メートルに入った。
そこでリーダー格である戦士の男が叫んだ。
「時刻は夕暮れ……いや、半ばは闇だ! 閃光魔法を使え!」
「はいなっ!」
妙齢と言うにはいささか年の行きすぎた40を少し超えた魔術師が応じる。
と、同時に響き渡る轟音と閃光。
同時に剣士が敵に切り込み瞬く間に4体のリザードマンを切り伏せる。
戦士は続けざまの魔法の詠唱を続ける魔術師を守りながらも、要領よく近くにいたリザードマンを1体を屠る。
そして数秒後。
「ぶちかませっ!」
戦士の言葉に頷いて、魔術師は叫んだ。
「ホーミング……ラージファイアーっ!」
世間一般的には上位魔法にランクされる魔法だ。
ファイアーの上位魔法を複数同時に発動させて、更に追尾機能も与えるという便利技だ。
「ギっ!」
「グギュっ!」
「ヒィギュブッ!」
甲高く、そして冗談のような音と共にリザードマンの焼死体が出来上がっていく。
総数15体程度の群れのほとんどはそこで壊滅し、そして生き残った数匹も大やけどを負って、逃走を図るも背後から剣士の斬撃を受けて絶命した。
「まあ、ざっとこんなもんだな」
へえ……流石はベテラン集団だな。
見事に切り抜けやがった。
いや、まあ、100体に囲まれたらいざしらず、15体くらいでどうにもならないならベテランと呼ばれる年齢までは生き残っていないのいだろう。
「しかし、これだけのリザードマンを狩ってしまったのももったいないわねえ……ポーターがいれば回収できるのに」
うんうんと一同が頷く。
そして俺はおいおいとため息をついた。
――リリスを殺る気マンマンの発言じゃねーか。
そのことにすら、どうやらこいつらは気づけない程に頭がよろしくないらしい。
そこで、リーダー格の男は満足げに頷いた。
「それじゃあ本題に入ろうか?」
俺に向けてそう言ってきたので、俺は小首を傾げた素振りをする。
「ん? 本題?」
その言葉に剣士の男がニヤリと笑った。
「へへ……お前のツレはとんでもねえ美形揃いだよな?」
まあ、実際そうだろうとは思う。
「で?」
「安心しろ。殺す前に散々に犯してやるからな?」
なるほど。
ここでネタバレをするつもりらしい。
冥土の土産に教えてやろう的な奴だな。
俺の予想通りの言葉を戦士の男が続けた。
「強盗に狙われるってのはアイテムボックス持ちの宿命だな」
「ああ、そうだろうな」
「だが、俺達は慎重だ。お前もあの女の護衛って自分で言ってた位なんだから……少しは腕が立つんだろう。なら、先に片付けた方がいい。だからワザと別行動を取らせる風に誘導した」
まあ、そうだろうな。
全てを分かっている上で、敢えて乗ってやっている俺の心も知らずにドヤ顔で男は続ける。
「まあ、お前とお前の連れの不運だったことは、まさか上位冒険者にそんな強盗がいるとは思わなかったという事だろうさ。普通はそんな連中はいないからな」
そこで俺は大きく頷いた。
「不運ってのは……同感だ」
「同感? どういう事だ?」
「お前が俺を不運と思うように、俺もお前が不運と思っているってことだよ」
「……?」
そして俺はニヤリと笑った。
「まさかお前等もAランク級上位……あるいはSランク級下位の冒険者と、そしてSSランク相当……いや、SSSランク相当の冒険者相手に……喧嘩を売ってるとは思ってねーだろうからな」
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