第41話
魔法学院から程近く、王都のギルドでリュートとリリスは閉口していた。
「ここは由緒あるギルドでしてね? 何しろ元はAランク級冒険者のギルドマスターがいるのでしてよ?」
エルフの受付嬢が嘲笑の笑みと共にリュートとリリスに言葉を続ける。
「貴方のような学生が来るべき場所ではなくってよ?」
「で、何を言いたい?」
そこでクスリとエルフの受付嬢は笑った。
「一昨日きやがれ……ですわ」
そこでリリスが眉間に皺を寄せてエルフを睨み付ける。
「……ステータス測定は?」
ハハっと鼻で笑って受付嬢は言った。
「さっきの話聞こえました? 一昨日来やがれって私は言ったんですけどれど?」
さすがに俺もイラっと来たので受付嬢に疑問を投げかける。
「どういう事だ?」
「見た所10代半ばの魔法学院生が学費に困ってギルドに駆けこんできた。そして、そんな連中の死体の片づけは私の仕事なんですわ! 夏場にどれだけ迷惑と思っているんですの?」
途中からはかなりの剣幕だった。
相当に死体処理には思う所があるらしい。
「……」
「……」
俺とリリスは押し黙る。
そこでリリスが受付嬢を睨み付けた。
「……本当に私たちがこういう扱いをされたとして……貴方はクビにならない? ステータス測定すらしなくていいの? ギルド規約にはとりあえずステータス測定というのはあるはずだけれど」
ハハっとリリスの言に受付嬢は笑った。
「クビ? どうして私がクビ? 身の程知らずの学生の命を助けたと思って逆に感謝されたい位だわ」
そこでリリスは俺に耳打ちした。
「……帰ろう。今日はギルドマスターは不在の日みたいだ」
そして背筋が震えるようなスマイルで言葉を続けた。
「そして、本当にクビにしてやれば良い」
そこで俺は首を左右に振る。
「いや、リリスよ。そういう訳にはいかんでしょうよ」
俺は頭を下げて受付嬢に懇願する。
「悪い事は言わないから、せめてステータスだけでも見てくれないか?」
「見てくれないかって……見てくださいでしょ? さっきから偉そうね貴方達……」
そこでエルフの受付嬢は意地悪く頬を緩めた。
「まあ良いわ。本来のお客様……冒険者がいれば貴方達みたいな雑魚は相手にしないのだけれど、今は誰もいなくて暇だからね。とことんまで相手にしてあげるわ。貴方達みたいな雑魚の心を折るまで……とことんまでデータを出して上がるわね」
さすがの俺もこの言いぐさには思う所はある。
ってか、俺達のステータスのデータを出せばこの受付嬢は間違いないクビだ。
俺に至ってはAランクを優に超えているし、リリスにしてAランク級で、恐らくはここのギルドマスターよりも強い。
「で、ステータス測定って事で良いのかな?」
ギルド受付の片隅置かれている測定器という名の水晶玉二つ、顎で差し、プレートを取り出しながら受付嬢は言った。
「ええ。測定値はこのプレートに伝わるから。ははっ……本当に笑っちゃうわね? 貴方達にお似合いなのは労働者ギルドであって冒険者ギルドではない。学生レベルの雑魚が本当にそれでどれだけ死んでいったか……」
そうして、まずはリリスが部屋の片隅の水晶玉に歩み寄った。
「……」
無言で受付嬢を睨み付けるリリス。
そして受付嬢は優雅な仕草でコーヒーカップを手に取り、口につける。
更に、余裕な笑みで持っているプレートに視線を落とす。
「……これで良い?」
リリスは、やはり受付嬢を睨み付けながらそう言った。
そして、受付嬢の手に持つプレートにリリスのステータス情報が流れ込んできた。
結果、受付嬢はプルプルと震え、そして――
――飲んでたコーヒーを盛大に噴きだした。
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