第14話
うっし。
レベルは大分上がったな。
攻撃力で150のアップか……元々のスキルでの底上げ分が400あるから、そこまで劇的な改善と言う訳でもねえな。
というか、それだけ鋼体術と鬼門法の底上げがマジキチな感じってだけの話なんだけどな……。
レベル1の村人でもゴブリンみたいな雑魚相手だったら無双できるスキルか……改めて考えればとんでもないスキルだよな。
まあ、ステータスの上昇分が強さとして実感できるようになるには、更なる大幅なレベルアップが必要な感じだな、うん。
ともあれ、HPが上昇したのは素直に嬉しい。
サックリ一撃死の可能性は大分下がっただろう。
とりあえず、俺の師匠である元騎士団長(村人)であるバーナードさんがレベル50程度だ。
ちなみに、50っていうのは一般的なベテラン冒険者程度の数字となる。
騎士団長まで行った彼がそんな数字ってのはちょっと変に見えるかもしれない。いや、実際に大分変ではある。
そもそもの話をすると、弱い敵を倒し続けてもレベル差が開きすぎている事から経験値が得られなくなり、どこかでレベルは頭打ちとなる訳だ。
で……彼は復讐の為に執念でオークを狩り続けていた。
それはもう、オークだけを狩り続けていた。
むしろ、オーク狩りに精を出し過ぎたせいで、あの人はロクに強い魔物を狩っちゃあいない。
というか、レベルを頑張って上げても成長率が村人……ってなもんで、レベルアップについては一定の所で諦めたんだろうな。
遭遇する事自体が難しい高ランクの魔物を追いかけまわすよりも鋼体術やら鬼門法やらの禁術系スキルの習得に努めた……と。
で、その選択は概ね正しいと俺も思う。
そもそも、オークを狩るのに個人の力はあまり要らないからな。ゴキブリレベルの繁殖力の豚の化け物……根絶するのに必要なのは狩人の頭数だ。
彼の場合はオーク狩りを指揮できる立場に至った時点で個人としての力を磨く必要はなくなった訳だ。
そんなこんなの事情があって、彼のレベルは50程度となっていた。
が……俺の場合は事情が違う。
強くなるための方法は色々あるが、やっぱりレベルは可能な限りアップさせておきたい。
そして、ここは人外の住まう場所である、龍の里の地下大迷宮だ。
潜れば潜る程に魔物は強力となっていく訳で、経験値稼ぎを行う場所としては最適だ。
ぶっちゃけた話、龍の里で育った人間が外の世界に出て英雄となる理由はここの要因が大きいと俺は睨んでいる。
一人で外に出る事が許されると言う事は、巣立ちが許されたと言う事。
それはつまり、成龍の儀式を終えていることを意味している。
そんでもって、今俺とリリスがいる階層は長い――長い大通路だ。
土床に土の天井に、そして壁もまた土。
長い通路を歩き、ようやく突きあたりの曲がり角まで差し掛かった。
俺は顔だけを出して角の先――次の階層へと至る扉の前に鎮座する青銅像を確認した。
――武装ゴーレム
体長は2メートルちょっと。
鎧と剣で武装していて、体の全てが金属で構成されている。
俺の腕力では文字通りに刃が立たない。
そういう訳で、真正面からでの突破はまず不可能だ。
そもそも、今現在の俺の武器はナマクラのナイフ一本だしな。
ほとんど着のみ着のまま赤龍のオッチャンに連れてこられた訳だけれども……コーデリアから借りた剣をそのまま借りパクしてた方が良かったか。
……いや、あれも刃こぼれでボロボロだったな。まあそれは良い。
で、ここにいるのはミノタウロスと同じく門番で中ボスだ。
そう、門番に次に門番……中ボスの後に中ボスだ。
それにもきちんと理由があって……まあ、この理由についてはこの階層を突破した時点でリリスには説明しておくか。
俺が妙にこの迷宮に詳しいのもすぐに気づかれるだろうし……。
というかまあ、大絶賛で叡智のスキルの恩恵に与かっているって話だな。
ゲームで言うなら既にこのダンジョンの攻略本は読んでいる状態ってワケ。
と、まあ、俺は曲がり角の直前に陣取り、リュックサックを地面におろした。
そうしてスコップを取り出し、一心不乱にスコップを振り始めた。
「……貴方は何をしている?」
「穴を掘ってんだよ」
「……見れば分かる。だから、何をしている?」
「だから、穴掘ってんだよ」
「……だからどうして?」
「強くなるために決まってんだろうが」
そこで呆れたようにリリスは笑った。
「……日本語でおk」
リアルで初めて言われたぞこのセリフ。
まあ無理もないか。確かに説明不足過ぎたな。
なんだかんだで……今、この状態で迷宮攻略は俺の予定には無かった訳だ。
しかも初っ端からミノタウロスにサックリと額を割られた訳だし、俺も相当焦ってるんだろうな。
平たく言えば、リリスを気遣う余裕がない。
ここは素直に反省しておこう。
手招きでリリスを呼ぶ。
顔だけを出して曲がり角の先を確認するように促す。
「あのゴーレムがあそこにいるから先には進めない訳だ」
「……なるほど。確かに強そうに見える。とても貴方ではかないそうにない」
「ああ、その通りだ。で、ここは角だよな?」
「……そう」
「向こうから、角の先は見えないよな?」
「……そう」
リリスは神妙な顔つきで頷いた。
そして俺はニッコリと頷き、そして言った。
「だったら、この位置のここに穴がいるよな?」
リリスもまた満面の笑みを作りこう言った。
「……日本語でおk」
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