第11話
「村人のままにして14歳で邪龍討伐……そしてそれを、さも当たり前のように言う……か」
クハハっと龍王は腹を抱えた。
「だからこそ、僕は君を気に入っているのかもしれないね」
そして、俺は続く言葉で断言した。
「14歳で邪龍討伐? んな事は本当に当たり前だ。俺がそれくらいできなくちゃあ……アイツが困る」
「クハッ……クハハッ……なるほど。君はあくまでも勇者の……保護者であると?」
「ああ、だからちゃっちゃと龍王の加護をよこせ」
ふむ、と龍王様は俺の頭に掌を差し置いた。
彼が少し力を入れるだけで、俺の頭蓋は破裂するだろう。
「龍王に向かって……加護をよこせか? 少し、お調子に乗り過ぎじゃないのかな? この……人間風情が」
俺はしばし押し黙る。
そして臆さずに龍王に向けて力のこもった眼差しを向ける。
「一番効率的なのは龍族だった。でも……魔人族や……あるいは最悪の場合、悪魔に魂を売る事すらも……俺の選択肢にはある」
驚いたような表情を龍王は浮かべる。
「悪魔に……か? しかし、その方法を選べば……恐らくは死後の世界に輪廻することも許されず、地獄の責め苦を受け続ける……」
「無論、できればノーサンキューだ。だから俺はお前に頭を下げている」
クックックと、再度龍王は嬉しそうに笑った。
「そのタメ口で頭を下げていると言われてもね?」
「でも……お前さ、こういうノリが……お好きだろう?」
うんと頷き龍王は笑った。
「ああ、お好きだねえ……君みたいなのは大好物だ」
俺は右手を龍王に差し出した。
龍王も満面の笑みで俺に掌を差し出した。
二人がガッチリと握手を交わしたその時――俺の心臓に熱い何かが流れ込んだ。
「これって……龍王の加護?」
「ああ、そうだよ?」
「それってつまり……?」
「ああ、その通りだ――レベルアップに関する君の成長補正……職業適性:村人としての、君のマイナス要因が概ね消去される」
「それって……俺はようやく……何の気兼ねも無くレベルアップが出来ると? あるいは、魔物を狩ったのに経験値を拒絶しなくても良いと?」
「敢えて……君に、僕からの説明が必要なのかい?」
「念の為……頼む」
しばし龍王は何かを考えて、そして説明を始めた。
「経験値とレベルの概念は分かるよね?」
「相手の生命エネルギーを自分に取り込んで身体能力や魔力を強化させる方法……だよね?」
うんと頷き龍王は言った。
「その前提で問うけど……職業とは?」
「要は、神の祝福」
「おっしゃる通りだ……で……具体的に言うと?」
「成長率が……全く違う。例えば……レベルが1上がれば勇者ならステータスの攻撃力の項目が20上がるところが……村人なら3とか……そういうレベルで」
実際の数値の差異とは違うけれど、まあそういった感じなのは間違いない。
「そこで登場するのが龍王の加護だ。村人としての君の成長率が……龍人としての補正にある程度、書き換えられる。龍人……それは勇者には適わないにしろ、賢者や聖騎士なんかの上級職と似たような成長率だよね」
そう、と俺は頷いた。
「だからこそ俺は今までレベル1のままで貫き通してきたんだ……俺はMP鍛錬以外の全てを基礎筋力やスキルの鍛錬のみに全てを捧げて来た」
「だろうね」
と、そこで竜王は腕時計に視線を落とす。
「高そうな時計だな?」
「カブキチョウという所での正装ではないのか?」
オメガの時計か……。
ビックリするくらいファンタジー世界に似合ってねえなと苦笑する。
「と、いうことでそろそろ時間だ。ほかに何か?」
「ああ、俺の要件も現段階ではこれだけだ」
「それで、これから君はどうするんだい?」
「そうだな……」
ニヤリと笑って俺はこう続けた。
「とりあえずは……ボチボチとレベルアップにいそしむことにするよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます