第46話 ドキ!転生者だらけの解体作業☆ポロリもあるよ♪
私は今、鉱山へと向かう馬車の中にいる。目の前にはお付きのアメシャがいるが、先程から、うつらうつらとしていたが、とうとう眠ってしまっている。別に寝てしまったから、どうこう言うつもりは無いので、そのままにしているが、話し相手がいないのは暇なので、窓の外を眺める。
窓の外は、先程までの草原の風景とは異なり、小高い禿岩山の様なものが数多く見受けられる。馬車の向かう道筋も、平坦な道から谷間に向かうもに変わってきている。
このまま、谷間の奥に進んでいくのかと思えば、その入口あたりの大きな屋敷があり、馬車はそこへ進んでいく。
私は馬車を降りて、改めて辺りを見渡すと、谷間の奥の方からは、もくもくと立ち上がる黒煙が見える。おそらく製錬の煙だろう。なるほど、あの悪環境から逃れるために、経営者の舘はここにあるのだ。
「これはこれは、よくおいで下さいました」
眺めている私の後ろから、声が掛かる。振り返ると初老を迎えた鉱山の経営者がいた。
「お出迎え有難うございます。サルモンさん」
私は鉱山経営者のサルモンさんに一礼する。子供時代に何度か会合でお会いしたことがあるが、昔から変わらない姿である。
「マールお嬢様が新しい当主になられたと聞いていましたが、お美しくなられましたな。今日は鉱石がお入り用と伺っておりますが」
「はい、当家の者が新しく鍛冶仕事をしたいと申しておりまして、製錬から始めてみたいと」
「それはそれは熱心でございますな。それでどの様な鉱石がご入り用ですかな?」
「新しい挑戦ですので、練習も兼ねてクズ鉱石あたりから始めようかと」
「なるほどなるほど、まだ成功するか採算が採れるか分かりませんからな、そのような心がけでよろしいでしょう」
そういうと、サルモンさんは敷地の外へと進んでいく。
「あの辺りに禿山がみえますかね?」
サルモンさんが禿山を指差す。
「はい、いくつもございますね」
「全部、クズ鉱石です」
「えっ!? あんなにあるんですか!?」
先程まで、道を挟むようにあった小高い禿山が、全てクズ鉱石の山だというのだ。
「ここの鉱山を開山した時には、クズ鉱石も製錬しておりましたが、あまりにも燃料効率が悪いもので、今ではあの様に捨てておりますな」
私はごくりと唾を飲み込む。これだけゴミの様に打ち捨てられているのなら、有利な交渉が出来るかもしれない。
その後、サルモンさんにそれぞれの鉱石の禿山の説明を受けた後、舘の中で取引の交渉を始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
帰りの馬車の中、私は複雑な思いをしていた。それと言うのは、サルモンさんのご好意もあって、クズ鉱石自体は代金不要と言ってもらえらのであるが、残渣については、こちらで処理してくれと言われたのである。
製錬についての知識が殆どない私にとって、残渣が大量に出るなんて思いもよらなかった。なんでもクズ鉱石から金属が採れるのは一割二割あれば良い方で、残りは全部残渣になるというのだ。舘で使う分の金属を賄うだけなら問題は無いが、商品として扱う場合には、その処理方法を検討しなければならない。
「なんでもかんでも、上手くはいかないか…」
私はそう口から漏らすのであるが、アメシャは再び眠っている様で話し相手にはなってくれなかった。
私がサルモンさんと交渉中、付き添いで来ていた転生者達が、禿山からクズ鉱石の試料を馬車に一山積み込んでいたが、それがどれぐらいの価値になるか分からない。もしかしたら、手間がかかるだけかもしれない。馬も人もタダではないのだ。
「とりあえず、帰って実験してみないと、何とも言えないか…」
私はふぅっと溜息をついた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
私ははぁっと溜息をつく。
「何を溜め息ついているの! なんなのよ! あれは!」
舘の執務室で、私の目の前にトーカが青筋を立てて、私に喚き散らす。
「あの~ 私、帰ってきたばかりで事情が分からないんですが… 説明して頂けますか?」
私はトーカの怒りを悪化させないように、下手に尋ねる。
「わ、わ、私にあれを説明しろと言うの!!!」
何故かトーカは怒りを悪化させて怒鳴る。
えぇ~なんでぇ~更に怒るんだろう?
怒り狂うトーカの後ろでは、トーヤがコロコロと笑いながらその様子を窺っている。
笑っていないで、この状況をどうにかして欲しい。
「えぇっと、何があったのか説明してもらえますか?」
トーカでは取り付く島もなさそうなので、トーヤに声を掛ける。
「いやぁ~ 色々、面白い物を見せてもらったよ…」
「はぁ…」
怒るトーカと笑うトーヤから、なんとかして事情を尋ねていくと、段々、話の全貌が見えてきた。
最初の鍛冶場の下見については、特に何事もなく査察ができたようであるが、問題は採掘場の査察である。
採掘場は温水が吹き出した為、その上に浴場を作った。なので、先ずは浴場の解体となる。浴場での作業は、熱気と水蒸気の満たされた中で行わなくてはならない。その様な環境の中でも作業はかなり過酷なものになる。
転生者達は最初は手拭いで汗を拭っていたが、それでは追いつかない程の汗が出てくるため、段々、服を脱ぎ始め、最終的にはトーカがいる前で、全裸になって作業を始めたらしい…
しかも、わざわざ、トーカに見せつけるように作業を行うので達が悪い。
「はぁ… また、あの人達は…」
私は頭を抱える。
「帝都でトーカがされた事を聞いていたが… 容赦がないな、彼らは」
自分の妹が、おちょくられていると言うのに、トーヤはコロコロと笑う。
「信じられませんよ!! あの様な所業!! お兄様も笑ってないで何か言って下さい!!」
トーカが帝都での事も言われて、顔を真っ赤にする。
「何か言えと言っても、今回、彼らは直接、トーカに何かした訳でもなく、ただ作業をしていただけだからね。 それに我々は状況を見守るというだけの立場だから、何も言えないよ」
トーヤの正論に、トーカは何も言えず、ぐぬぬとなる。
「しかし、カオリさんが自分の目の黒いうちは、変な事をさせないって言っていたのに…彼女は何をしていたんですか?」
私はカオリに対しての恨み節を漏らす。
「あぁ、彼女なら、あの環境下で袋なんか被っているから、のぼせて倒れているよ」
トーヤはさらに笑って答える。
「えぇ!?」
「大丈夫、ちゃんと医務室で寝かせているから」
「はぁ… 確かに目の黒いうちは大丈夫だけど、のぼせて目が白くなれば、後は大丈夫じゃないと言う事ですか…」
ネズミの事といい、カオリは時々、信頼できない事になるなと思いながら、私は溜息をついた。
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