第十節:節操な羊
アスカ嬢が本日三通目の書簡を取った、紋も印章も押しておらずどこから来たのかわからないそれはアスカ嬢も首をかしげていた。
しかし宛名がある以上、読まねばならないと思ったのか一気に開けると読み始めた達筆ではあるが私でも読めそうな書き方といい、どこから送られたのか私にはなんとなくわかるような気がした。
多分、アスカの父君だろうと踏むことはできたのである。
レスト・アラ・ニス公爵ではないかと思われたが、印章を付いて無いところを見ると、公爵として書いたわけではなく一人の父親として書いたのであろうと推測できた。
ハーフエルフは嫌われているわけではないこの世界だが、
多分そのことが、書かれているのであろうことは推測できた。私に来た二通もそのような内容であったからである。
魔導化学にはDNA因子をいじって新人族を産むことのできる妙薬があるのだ母体は必要で父親も必要だが、子供は必ず新人族となるのである。
片親が人族であれば確実にそうなるのである。
アスカ嬢は今度は倒れずに読み切ったが、少し涙目になっていた。
拭きたい気持ちでいっぱいではあるし、笑っていてもらえれば何よりもいいのだが、今日は難しかった。
人族の代表が世代交代を唱えている中、ギルドのよりによって皇位継承権を持つものが新人族以外の子を持つことは許されないといわれているのである。
私の継承権に巻き込んでしまったのであるからして中々動けなかったのである。しかし、二人の子として認めてもらえるのであれば自然出産ではなくなってしまうという所にアスカ嬢がこだわっているのではないかと思われた。
魔導出産になってしまう点に、慎重な姿勢で挑んでいたのではないかと思われたのである。
今度はなぜか、自然と勇気が出た。
まずは、席を立つとアスカ嬢に近寄って涙を拭いてやることにした。
そして、「どういう経緯で生まれるにせよ、私たちの子であることに変わりはないよ」といって静かにアスカ嬢を抱きしめた。
「取り上げられるわけではないんだ、気を落ち着けて聞いてほしい。私の皇位継承権に巻き込んでしまってすまない。しかし、アスカは泣かなくても良いよアスカの
ヒジリとサヨリ嬢が帰ってきていたが構わず、そっと抱きしめていた。
クララ嬢が静観している手前、ヒジリもサヨリ嬢も特に何も言わなかったのである。
自席について静観の構えとした様だった。
少し落ち着いたのかアスカが「そうですよね、どんな形であろうと二人の子なのですから、愛さないわけには行きません」と自分を少し納得させるようにいったのである。
「ここで泣いていたら、いつまでたっても子供のままでした。振り向かせていただきありがとうございます」と普段と同じような優しげな笑みに変えたのであった。
「良かった、泣き止んでくれたか。そのままだったら、どうしようかと思っていた。君の気持が変わらないうちに言っておくが、私の君に対する気持ちはいついかなる時をもってしても変わらないから安心しておくれ」といい切ったのである。
「夕食をまたここで食べますか」とクララ嬢が、一拍挟んだ。
「そうだないつも通りピザでも頼むか」と私がいった。
「ソースエビ青のりチラシで!」とアスカ嬢が復活した。
「皆それぞれ好きなものを頼んでくれ」といって基地内のウルフディッシュにピザをそれぞれ発注した、フィッシュフライとクラッシュドポテトも人数分追加する、そしてライトコークもLサイズを人数分追加した。
……
そして夕食後、「今日は早めに切り上げるか、皆の仕事を全部奪ってしまったしな」と私がいった。
「今日は追加分来ませんね」とクララ嬢がいった。
「たまにはそんな日もあるだろう」と私がいったので今日は十九時半に業務終了となったのである。
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