第八節:幽霊の化けの皮はがしとギルド証渡し

 ノインはその後、八時間ほどかかって幽霊の化けの皮をはがしていったのである。


 整備第二班と一緒に。


 光学迷彩システムから、何から何まで調べられるだけ調べつくしていったのである。


 これが本当の化けの皮はがしであったと整備第二班のメンバーはのちになって語る。


 ノインはそれをデータパッドに綺麗にまとめると、動き出されても困るので現状雁字搦がんじがらめでホールドして置き、エンジンパーツは引っこ抜いてあった。


 そしてエンジンパーツも何がどうなってチューニングされているのかを事細かに書き出したのであった。


 片肺で動かし出力ピークやモード設定なども細かくチェックを行い両肺で動かしたときどんな性能に変化するかなどを細かく特性を調べ幽霊の基準となる数字を導き出したのであった。


 そしてエンジンもマップテックであることを確認し、ばらせるだけバラしてすべての構造やどこが耐久が弱めだとかいう所を調べて確認していったのである。


 なので八時間もかかったのであった。


 時刻は十時から始めて十八時までぶっ通しで作業が続けられたので、そこまで集中できたともいえる集大成であった。


 夕食を食べに上がります。


 というメールと共にノインが資料をデータパッドにまとめて執務室までやってきたのであった。


「夕食は今日もここで食べるか」といって冷専の白身魚盛り三セットと海老盛二セットを頼み飯を頼んだ人数が居ると判断できたので八合分の飯を先払いで頼んだともいう。


「まずは夕食にしよう、ノインはかなり疲れたろう。八時間ぶっ通しで、作業だったんだろう?」と聞くと「集中している間はいいんですが、集中が解けると地獄ですな」といった会話になった。


 そして夕食が済むと、紙器が下げられ、データパッドにオプションを付けて映写機的な扱いで幽霊のデータを約二時間にわたって聞くこととなった。


 要点はまとまっていたのだがデータが多くあったため二時間かかったのであり、終わると二十一時になっていた。


 その代わり、幽霊の基本スペックから何を基準にそれが選ばれているかなどの重要データが、たくさん聞けたため今後の対策に大きく役立つと思えたのである。


 これが、幽霊の化けの皮はがしになったのであった。


「今日はここまでとしよう、特にたまっている資料や判をつかなければならない要請書や請求書の類はないな? あれば即処理をするが?」といった。


「それは今日の昼間に片してしまいましたから残ってませんが、まだギルド証が届かないですね、白騎士様のところが大人数ですしまだかかっているのでしょうか?」といった話になった。


「確かにかかるかもな、大隊規模だし、専用の魔導郵便で届くんではないか? あれ意外だと魔導転送機だと詰まるだろう。多分明日にでも、届くんじゃないかな? 大隊長が中佐で以下五百名居るしな、それに二名分はオーロラビジョンステータスだから発行に手間食ってんじゃないか?」というにとどめた。


「魔導郵便を扱っている部署に連絡して届いていたら、明日にでも届けてもらうよう指示しておくか、通信連絡部門も人数が中隊規模まで増えたしな」とそこで言葉を切ったのであった。


 そして通信連絡部門に連絡を通達するべく通信機を取ったのである。


 数コールののち夜番の部隊が出た「こちら総長、明日か今晩かギルド証の束が届くと思うので朝になってからで構わないので執務室まで届けてくれないか」といった。「わかりました、届き次第お届けに上がります」と心地よい返答を得た所で明日に業務を引き継ぐこととして、本日の業務は二十一時三十分に終了となったのである。



 各自バラバラにといってもクララ嬢とアスカ嬢とワルキューレ嬢はわたしのFPTフローティング・パワー・トロリーに帰るわけだが。


 晴れて客室が出来たので、ヒジリとサヨリ嬢も客室のほうに移ってもらい、今は執務室の上は使われていないのである。


 ミハイル卿もエリー嬢と隣同士の部屋ではあるし、そこにセリア嬢とロシエ嬢が隣に入ったという所なのである。


 白騎士ガーシュタイン卿は部隊と一緒に上の階で大隊部屋が用意されているのでそちらに逗留しているといった状況なのである。


 白騎士とFPTだけ客専用の二番に止めてあるという状況だったのだ。


 客室も大隊専用部屋も専用FPTまで出撃時には二分とかからない仕組みは施されてはいるので特に問題は無かったのである。





 そして次の日、予想通りというかセリア嬢とロシエ嬢の分は専用便だといわんばかりに、魔導転送機のほうに飛んできていたのであった。


 他に、書簡二通と共に。


 最もその書簡の一通が問題だったわけではある。


「アスカ君宛だ、国元からだぞ」とニス家の金紋がデカデカと裏に入った巻物の芯を抜いたような書簡が届いていたのであり、一波乱あるかと思わせるものであった。


 それをまずアスカ嬢に渡した。


「受け取ります」といって受け取ったアスカ嬢もそれが何かよくわからないようであった。


 その間にもう一通の書簡もあったそれもアスカ嬢宛だった。


 そちらはギルドマスターの魔導印章が押されていたが。


「ヨナ様からか、これもアスカ宛だな」というとアスカ嬢に渡したのであった。


「何でしょうか?」とよくわからないふうだった。



「クララ、セリア嬢とロシエ嬢を呼び出してくれ、ギルド証を渡さねばならん」といって呼び出してもらった。


「何でしょうか、大切なものとお聞きしましたが」とセリア嬢がロシエ嬢を連れて上がってきた。


「カッパーで申し訳なかったね、これが新たなギルド証だよ」といってカッパーの簡易貸し出し用のギルド仮証とID票を引き換えにオーロラビジョンステータスのギルド証を二人に渡した。


「キラキラしてて綺麗ですね。こんな高価なもの受け取ってよかったのでしょうか?」と二人がいうので、「さすがに第一階級である君たちにオーロラビジョンステータス以外を渡すわけにはいかないよ、私がしかられてしまう」といってカッパーとID票を引き取った。


「常に携帯を心がけてくれ、ID票のほうは一時的にギルドマスターの元の秘書課で預かることになる、期間を延ばすのも短くするのも自由にできるから、期間を調整したければいつでも私に相談してくれ」といった。


 預かったID票をオーロラビジョンステータスが入ってきた特製のケースに一人づつ名前を確かめてから入れて、二人分を魔導転送機でヨナ様の手元の受信機に転送したのであった。




 その横でアスカ嬢がまた耳の先まで真っ赤になって倒れかけて、ワルキューレ嬢に解放されていたのは言うまでもない事実であった。


 まだヨナ様からのふみは開いて無いようであった。


 そしてなぜ倒れたのかは、私には予測がつかなかったのである。


 聞くという事をあえてしなかったからだともいうが、聞くと野暮やぼになりそうだったからでもある。




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