第四節:魔導受講と実践

「魔導は十四時十分から開始にするので各員休憩に入ってくれ」と私がいった。


 とそこへクララ嬢が来た。


「手頃な何かがありませんでしたので、シューティングレンジから的をコピーしてきましたとりあえず三百枚程刷ってありますのでこれで代用して下さい」といって吊るすためのフレーム機材とクリップも予備を十数個置いて行った。


 構文で噛まなきゃいいんだがと思いながら『データパッド』とホワイトボードをリンクさせたそこに、術式の構文と発動時の構文『キーワード』を表示させる。


『箒の発動体』を二十五本用意したのである。


 導師級に成ると発動体は容易に創れるので箒にしたわけだが、これの最終段階では浮遊の実践まで行うので箒にしたのである、座れるからという理由もあったが。


 アスカ嬢がやって来た


「箒ですか。ただの箒じゃないですよね?」といったのでそれに答えた。


「これが魔法の発動体だよ。古来から魔法の初心者には杖かこれが相場でね、杖の方が高かったので通販で箒にしたんだ」と私がいった。


「かなり現実味がありますが? 造りは古いものですね。丁度良いかもしれませんが。魔導の講義の方は最終段階はお空を飛ぶんですか?」とのことだったのでそれに答える。


「浮遊なら多分手が届くと思う、ぎりぎりの線だが」といった。


「成程それで箒なんですね」とアスカ嬢がいった。


 するとダイヤがやって来た。


「意外といけるモノですね最初。は半信半疑でしたが魔導も精霊魔法も今まで触ってきませんでしたから」といったので。


「皆似たようなものだと思うぞ? 七番隊とガーディアンズはそういう意味では別枠だが、コマチを除く全員が魔導戦士か魔剣士になる様に手配したからな。ガーディアンズは魔導剣士か守護騎士で無いと元々は入れないし」と私がいった。


「それとどちらの部隊の方でしょうか?」とヒジリの方を見ながらダイヤは聞いた。


「そういえばまだ実際には紹介して無いな。結構ドタバタしたからメールも飛んでないと思う。五年間ほど一緒にやることに成る、ヒジリ・ウィルザード男爵だよ今回は大尉で指令中隊指揮小隊の配属になる」すると。


「白い閃光の異名を持つ方ですね?」といった。


「そっちの方が早いのか」というと、


「異名は、よく独り歩きしますから」という答えが返って来た。


「あそうか、メールが飛んでない理由が分かった。精神力使い切って一日クルリクルリと回されて居たからとドタバタで期間延長になったからまだメールが飛んでないんだな。今送ろう。もうすでに遅いが……」というに留め。


『総長より今回コマチ少佐が新設される第七番隊の隊長に進位することが決まり、指令中隊指揮小隊が二機に成るがここに新たにヒジリ・ウィルザード男爵が五年の期間だけだが指令中隊指揮小隊に大尉として配属されることになった尚パートナーはサヨリ・シュタインバーグ中尉である。共に指令中隊指揮小隊に配属される、すでにギルド上層部ではこの決定を知っているので報告の必要はない。皆仲良くしてくれよろしく頼む、以上』という文面にしてメールを支部隊に一括送信した。


「取り合えずこれで誰かが新に指令中隊の指揮小隊に入ったことは伝わると思うが」というとアスカ嬢はいった。


「今回はやむを得ないですよね。一気に変わりましたから」と。


「さてそろそろか九分だからなあと一分だ」というと的を一枚とってハンガーのような細いフレームにクリップで二箇所を止め的を吊るした。


「魔導は的当てですか?」とダイヤが聞いて来た。


「実際に何かがあった方が集中しやすいだろう?それの為に的にしたんだが」と私が答えると、ダイヤがさらに興味深げに聞いた。


「この箒は何でしょうか?」と。


「古い型の箒にしたんだが不味かったか? 古来より魔導といえば箒か杖か指輪だろう相場には違いないんだが?」と私がそれらしく答えた。


 それで一応納得は出来たようだった。


「それとコレをかけておくか」と壁に手を突くと


「プロテクションコーティング!」と力ある言葉『キーワード』だけで発動させる。


 これで天井から床まで魔化されたとりあえず自爆級の何かが起こっても大丈夫な魔化強度値は三百五十になった。


「さて皆がそろったところでさっき紹介し忘れたんだが、新しく指令中隊の指揮小隊に入って貰うことに成った“ヒジリ・ウィルザード大尉だその隣はパートナーのサヨリ・シュタインバーグ中尉だ!”」と一気に紹介することにした。


 揃って立ちあがり「よろしくお願いします」と二人が一礼した、拍手が起こった。


「期待してますよ」という奴もいる。


「さて魔導講義を開始する、まず魔導は発動体が必要なんだ、これがなくては始まらないが、高度に修練を重ねると発動体無しでも行けるんだが、流石にそこまでは最初からは厳しいので、箒を用意した。まずは箒から配るか」といってデカいから前後に気を付けてなといいながらアスカ嬢にも箒を渡しておく。


「唱える目標はこの的だが皆が打つと事故に成るからな、一人一人じゃ遅いから」と台座を分割して六つに分離させ同じものを生成させる高等テクニックの披露だが手品か何かに見えているものが多かったらしいまあ仕方あるまい。


 六つにそれぞれクリップで的を挟んでいく。


「一列目からやるぞ、ホワイトボードに表示させてある一行目の構文を読んでから、二行目のキーワードを唱えるんだ、そのキーワードを唱える際に的をよく狙っておくんだじゃないと魔法が明後日の方向に飛んで危険だからな」と注意事項を告げた。


「あと長い構文だから途中で噛むと発動し無いからな」とも告げて置く。


「まず見本で俺が撃っても良いんだが俺が撃つと最小出力に絞っても壁に大穴が開くから出来ないんだが」とさらなる注意をした。


 まずダイヤが唱えだした。



「ラルカンシェルレオーネデサントギリューダフィー。ショックバレット!」


 直後、赤い光弾が飛んでいき的をかすめてその後ろのホワイトボードに着弾するがホワイトボードは疎か壁にも傷が入らなかった。



「上手い上手い、あとは命中だけだな」


「とりあえず皆で交代しながらこれを繰り返してくれ、今日のお題はこいつだけだ」


「最初の構文は詠唱だが心の中で唱えても構わんぞ。キーワードだけ唱えても良いんだ」と私がいったので半々くらいの比率に分かれた。


「とここに俺が居ると撃ちにくいか」といって教壇から離れ最後列から眺めることにした、序にアスカ嬢の傍に行っていった。


「試してみるか?」というと。


「やってもいいんでしょうか?」との返答だったので、


「良いと思うぞ、因みに壁や天井に命中しても俺のかけた術よりも上で無ければ効果は無いから気にせず撃ってくるといい」と私がいったのでアスカ嬢も参加することに成った。


 詠唱を噛んでいる奴が1人、コマチがよく噛むようではあった。


「早口言葉で無くても良いぞ」というと噛まなくなったが構文のイントネーションが違うのか今度は赤い光弾が出なくなった。


 なので構文の上に発音記号を書いてやる。


 すると皆安定して赤い光弾が出るようになった、問題なのは命中しないことくらいであるが命中補正は初心者にはしない方が良いのであえてその辺りさじ加減は身体で覚えて貰うことにした。


 ダイヤがようやく的に命中させだした、威力の問題か穴が開かない。


 念のため「一旦中断しよう少し連射すると疲れるだろう」といって的から皆を退避させた。



第十四章 第五節へ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る