第五節:白い閃光と黒騎士

「こちらの建屋は整備員宿舎(四階建て)です、その奥に見えますのが救急病院(七階建て)、その左手に見えますのが独房(地下一階+地上五階建て)、さらにその脇にある独房より一回り大きな建屋が、捕虜収容所(地下二階+地上六階建て)にございます」といってクララ嬢が病院前に停車させた。


 時計を見る武骨な魔導式完全防水防泥対候式アナログ時計である時刻は十四時五十分になっていた。


「流石だな時間通りだ」と私がいった。


 クララ嬢がいう「私はここでお待ちしていますので閣下とお三方でどうぞ」と。

 といって客室のドアを全てオープンにした。


 四人で降りた、まず私が入り次にアスカ嬢、さらにヒジリとサヨリ嬢が続く。

 病院内はソコソコ明るかった、受付に師匠に面会に来たという旨を告げる荷物のことを聞かれるが土産物だというに留める。


 それ以上は何もいわれなかった十五時までお待ちくださいといわれたので。

 椅子で八分ほど待つ、皆静かだった。


 特に問題なく診察が終わった様であり受付嬢から「閣下、面会が可能に成りました。どうぞ病室へお上がりください二階の九号室です」といわれるので。

「では行ってくる」と私がいって二階に階段で上がることにした、アルケミーデザイナーキザキが階段を下りて来たので敬礼する。


「面会ですか?」といわれたので、「友人を紹介しに」と伝えた。


「肘までは治ってますがまだ肩はかかりますね」と現状を告げると、ビシッと敬礼し降りて行った。


 二階の二〇九まで来ると扉をノックする。


「入っても良いぞ!」と師匠の声がしたので、扉を開けた私から中に入って行く三人中に入ったのを確認すると最後にアスカ嬢が扉を閉めて入って来た。


「師匠連れてきました、ヒジリのほうに右手を出しながらこちらが白い閃光殿です」


「それといわれていたものを持ってきました」といって風呂敷ごと差し出した。


 師匠がいった「匂いがしないが?」と私が返した「厳重に包んでありますので匂いはしませんよ、匂いなんかさせてたら受付で取り上げの目にあってしまいますよ」といいつつ開けに入った。


「この店のものはそれだけきついんです、そして味も濃い」というと包みを開け中を開封したその瞬間病室に香草やスパイスのキツメの匂いがしだした。


「これでいかがですかといって添えてある箸とフォークをどちらにしますか?」といって差し出した「塊三つと摘まみ様スライスしてあるものが一つです」というと。


「塊を開けてくれ、フォークのほうが良い」というので塊を箱から選び「塊が赤い輪でスライスが緑の輪です」といいながら師匠の直ぐ横のテーブルに包みと袋を置いて箱を開けて肉にフォークを突き刺しでおいた。


「デザイナーキザキから肩はまだだといわれましたが。実際どうですか?」と私が聞いた。


「肩はまだ動かねえが肘から先は動くようになったぞ」というと早速器用に突き刺してあるフォークを持ちあげると美味そうに食べ始めた。


「美味いな、久しぶりの良い味付けだ」と師匠がいった。


 そして半分ほど一気に食べる。一旦フォーク部分を迂回させて反対側からまた一気に食べて一キログラムを一気に食べつくした。


「流石師匠だ」と私がいった。


 師匠のほうは一旦落ち着くとこれまた器用に次の塊を取り出しその上に一旦フォークを置いた。


「白い閃光」と師匠がヒジリのほうを見た。


 対するヒジリは誰か判断がついて無いようであった。


 私が紹介しようとすると師匠が止めた。


「始めて見るとはいえまだ観察が追っつかねぇか?」とヒジリに聞いた。


「最近活躍らしい活躍はして無かったからなぁ……」と師匠が黒のジャケットを無理に羽織って見せた「これでも分からねぇか?」と再度ヒジリに聞いた。


 ヒジリが目を見開いた、「黒騎士……、十四代目黒騎士」と思わず抜こうとするが剣を帯びて無いことに気付くのと相手が病人であるということにも気づき直し。


「申し訳ありませんでした」とヒジリが謝罪した


「この方が俺の師匠にして剣のイロハと数々の技を教えていただいた方だ」


「俺の強さの秘密の一番目だよ」といったそして続ける「この方無くしては今の私はここに居なかったろう」と私が続けた。


「期間にすると一カ月弱じゃねぇか」と師匠が私にいったが。


「剣の基礎と心得を守り続けましたから、ここまで強くなれたんです」と私が深くうなずきながらいった。


「剣の基礎だけだったら途中で命を落としていたでしょう」と私が語ると。


「無謀な挑戦の積み重ねの歴史もあるがな」と師匠がニヤ付きながらいった。


「そいつは黒歴史ですよ、でもその度に助けられましたからね。そういう意味ではツイテいました」と私がいった。


「確かに助けたが、一度だけだったなステイニアスだったか」と師匠がいう。


「今回は助けられなかったが、いい加減自分の力のコントロール位しろ」と師匠が突っ込んだ、「じゃねぇと終いにゃパートナーが泣くぞ」ともいう。


「コイツはある意味特別製なのかもしれないが」と師匠がいった、「俺の繰り出す技をほぼすべて見切るからな、目が良いだけじゃないと思うんだが天性の才能を持ってやがる」といってくれる。


「んで白い閃光に問おう何が欲しいんだ? 目が語っているぞ」と師匠がいった。


「お怪我しているところに申し訳ありませんが、私に修行を付けてもらえないでしょうか!」とヒジリがいった、「私からもお願いします、どうかこの人に修行を付けてやってください」とサヨリ嬢からもお願いが入る。



 黒騎士ミハエル卿は少し迷っていた様であった、が不意に口を開いた。


「俺から、黒騎士から修行を教わったと誰にもいわないこと! 例え国王がお前の心を読んだとしても、お前の口からは一言も出してはならない」


「それと修業期間は合計一ヵ月だけだ、さらに俺の両肩が完治してからという条件でいいなら修行を見てやる。五体不満足で、教えたとあれば何かあって見抜かれたときに俺に不利な条件が重なるからな、それにこの肩はまだ数ヵ月はかかるとアルケミー・デザイナーからはいわれている。直ぐにでは無いがそれでもいいんだよな?」ともいったのである。


「それに修行を、なんていい出すからにはそこそこの時間は、もらってきているんだろう?」とほぼヒジリの状態を見抜いていたのである。


「修業期間は五年間与えられて来て居ります、時間には充分間がありますので、ゆっくりと静養なさってください、修行はそれからでも構いません」といった。


「修行中は白い閃光の名で呼ぶわけにはいかん、名はなんというんだ?」と聞いた。


「ヒジリ・ウィルザードと申します」と答えると。


「分かった、修行中はヒジリと呼ぶことにする」とそれに答えた。


「基本的な修行の方法は、俺が技を出しそれを見切ってそれを修めていけ」といいながら、「白い閃光の異名を持つ奴に、俺が手取り足取り教えてやるわけにはいかん。からな、初心者じゃねえーんだから」と師匠が事情を酌んでいった様だった。



「分かりました、その条件でお願いします」とヒジリがすべての条件をのんだ。



第十二章 第六節へ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る