第二四節:東国流温泉

「さて、水着と何時もの用意をして出かけよう。流石に風呂の中にまで武器は持ち込めないから、車の中には積んでおくが」と私がいうとショートソードを左腰に吊る。


「そういえば熱いっていってたがどれくらいなんだ?」とヒジリが聞く。


「そうだな四十二度くらいが平均の筈だが」と私がいうと。


「そんなに熱いのか」とヒジリが驚く、まぁ確かに西方国家の温泉の温度は高くても、三十五度から三十六度位なので熱いといえばサウナ張りに熱いことに成る。


「まぁ行けばわかるさ、何事も体験だからな」と私がいって空のリュックに水着などと着替え(予備)を入れタオルなども一応入れた上で準備が完了する。


「大きな風呂だからな」と私が追加する。


「隣に本格的なプールもあるが」ともいった。


「でわ行ってくる」といってフロント・クラークに鍵を渡す。


「行ってらっしゃいませ本日は快晴でございます」とフロント・クラークがいった。


「さて乗った乗った」と私がいう、席順は昨日の帰りと同じになった。


「今日は少し遠いので少し飛ばすぞ」と私がいうと制限高度と速度をギリギリまで引き上げた。


 これをすることでだいぶ時間の短縮になるのだ。


「到着ー、出口で合流しよう」といって女性陣を先に降ろした。「アスカ任せる」といいながら。


「駐車場もガラガラなので一番近くに停め。さて行くぞといって武器類をトランクに入れて。さて行くか」と私がいいながらサクサク進んでいく。


 受付で「アスカ・ジークレフ侯爵です」というと。


「承っております。十五時まで自由ですので」と受付嬢が対応した。


 真正面に男(青)と女(赤)の暖簾がある、当然男の方へ入り即着替えると。


「行くぞといいながら出口へ向かった」まぁ女性陣を先に降ろしているのでタイムラグは無いはずだった、魔物の気配や悪魔の気配もない一応意識を広域まで拡大し何が居るのかだけは探っておく特に何もいない。


 まあアスカが護衛に付いているからと思いながら異界探知も展開する異界の反応もない、ということは単純に着替えが遅れているだけの様だった。


 それから直ぐ(一分も経たないうちに)アスカ嬢とサヨリ嬢がやって来た。

 二人ともスタイルが良いのが一撃で分かってしまうが「遅かったけど何かあったのか?」とだけは聞いておく。


「着替えに手間取っただけです」とはアスカ嬢だった珍しい。


「まあ行こうか」と私がいった。


 そうすると湯気が上がっているかなり広い風呂が見えてきた、西方の温泉には基本的に湯気は無い。


 アスカ嬢と私は平然とその中に入って行くサコッシュも当然持っているが魔導式の完全防水であるので気にする必要はない。


 我々が腰の線を超えた辺りで振り向くと、太ももまで使った二人が熱そうにしているので「一気に入った方が体には良いぞ」ということを告げさらに入って行く途中でアスカ嬢が私の肩に掴まっていたどうやらかなり深いらしい。

 座れるとこらが無いか周囲を異界探査でサーチする左右にそれぞれ二箇所はあったが少し遠かったので「水際を歩いてくれば膝位だ」といって左の方にある近い座れる場所へ向かった。


「こっちだ」といって腕を回す、気付いたようだがちょっと遠かったようでかなり迂回してやって来た「ここには段差が有るから座ると丁度良い位になるぞ」と私がいって見た。


 私の隣にアスカ嬢が座っているのだが見えて無いようであった。


 ヒジリとサヨリ嬢が到着して座る丁度胸位までが漬かる位であった。


「これが東国式温泉という奴だ」と私がいうと。


「これが東国式か熱いが慣れて来ると気持ち良いな」とヒジリがいった。


「通常はこのまま十数分から長いヒトなら三十分くらいは平気で浸かっているんだが、二人はまだ初めてだからな、丁度いいタイミングを見つけて上ったりは入ったりすると良い」と私がいった。


「昼はこの施設でファーストフードと行こうか、手早く食べられる料理の一種だ」と私が告げておく。


「味の方は落ちるが、簡易的にものを食べられると思えば。便利なもんだ」と私が貶したような褒めた様ないい方をした。


「昼より今日は夜が本番かシャブシャブを食べさせよう、いっておくが肉料理の一種で薬では無いからな」といっておく。


「くあぁぁぁぁ」とアスカ嬢がいった伸びと一緒に珍しく欠伸が出た様だ。


「寝不足か?アスカ」と聞くと「少しだけ夜に講義をしてしまったので」とのことであった、「何の講義をしてたんだ?」と興味が有ったので私が聞いて見ると。


「サヨリさんがアルケミー・ドクターを目指しているといったモノでつい応援したくなっただけですが」、「なるほどそういうことか、それは仕方が無いなぁ」と私がいった、「眠そうにするのも良いが沈むなよ」といっておく。


「明日は少し暇が有れば、書店に寄りたいんだが」と珍しくヒジリがいったので、


「どんな本を扱っているところだ? 専門書は大抵魔導士ギルドが管理してるから普通の書店に行っても無いぞ?」と私がいう昨日の今日なので大体見たい本が手に取るようにわかるのであった。


「魔導書は普通の本屋には無い。新聞雑誌小説漫画辞書ビジネス書や科学雑誌どれも一般的なものしか扱って無いからな?」と私がさらなる突っ込みを入れる。


「そうか」と少し肩を落としたようだった。そういういう私も魔導書を丸暗記しているタイプなので書き出すのは楽だが、オリジナルの呪文とかは創れるが魔導書を書き出すのはかなり時間がかかるのであまりやりたく無い作業であるのであった。


 ふと気が付くとアスカ嬢は私に体を預けて寝ている様であった、まぁ沈まなければいいんだがと思った。


 ここグランシスディア・ゼロには魔導士ギルドの支部すら無いので魔導書を入手するならギルドシティーが一番早いがアレは素人が見ても何が書いてあるか分からない書物だからなぁと思った訳で、やはりこれは魔法教室に参加してもらうのが一番早いかなと思っていたのであった。


 後は魔導が仮に使えたとしても、乗っているのが魔導機でなければ意味は無く魔動機だとただの宝の持ち腐れになる可能性が高かったのである。


 魔導や魔法は魔導機か魔法機に乗らないと意味をなさないモノであり、確かヒジリの機体は魔動機だった筈なので、あれから変えて無さそうだったので、さらなる役に立たないモノになりそうだったからではあるが。


「ヒジリ、魔動機マジック・モーティブに乗っているのか? それとも魔導機マジック・マシンに乗っているのかどっちだ?」と私は聞いて見ることにした。


「マジック・モーティブ(魔動機)だが何か関係があるのか?」とヒジリが聞いてきた。


「マジック・マシンでなければ魔導はあまり意味がないぞ?何せ魔動機の場合威力が四分の一以下になるからな。魔導機ならば百パーセント意味があるが」というと「何だって、そこまで威力が減衰するのか!」、「まぁ魔動機に乗って無ければ良いだけの話なんだが」と私が補正をかけた。


「サヨリ嬢は静かだがのぼせてないか?」と私が聞くと「この種の温泉に入るのは初めてですが、長湯は私の趣味みたいなものですので」と少しのぼせたかと思わせるあまり元気のない声が聞こえた。



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