第一二節:ホテルと部屋割り
「ここで、苗字を名乗ると大変なことになるので」と小声のアスカ嬢。
「サヨリさん五日間程度ですが、よろしくお願いします」とアスカ嬢が笑顔でいった。
「さて荷物を、載せてしまいましょう」といってつんつんと突いて「鍵を頂けますか」というと「そうだった紹介しよう、まずはこちらがアスカ嬢だ!」というと流石にここで苗字を名乗る訳にもいかず、社交辞令の簡易挨拶に留め「アスカと申します」というと向こうも気づいたのか「ヒジリと申します」正確なご挨拶は後程ということでと訳は気づいてくれた。
「まずは荷物をトランクに」と言ってキーを持って近付いて、“オープン”と言うとオートでトランクが開いた。荷物をこちらにと言うと、私が積みましょうと、言ってサクッと二つ直ぐ積み終わる。長物も一旦置かせてもらうかと、言って太刀袋らしきものを大小二つ皮袋の上に積むと。
「閉じます」と言って閉じてくれた。座りやすいほうへどうぞといって前席を譲ると後席のドアを開けて「サヨリさんお先にどうぞ」というと申し訳なさそうに「では失礼いたします」といって乗ると、アスカ嬢もリュックを外しながら滑り込む様に、乗り込みドアを閉めた。
「注目を浴びてますよ」と追加するのも忘れない。
先に荷物から降ろしに行くか、といって「ホテルに、荷を下ろしに行こう。それから、のほうがいいだろう」と、言うと蒼のFPVを加速させた。
制限速度で留めながら走る。
「しかし懐かしいな。クララ嬢もいっていたが隅に置けねえなぁ」とヒジリが言う。
「まあ今はな」と私が言った。
そしてグランシスディアのセンター街の一等地にある、グランシスディア・ゼロホテルまでヒトッ飛びした。
今日は豪勢なのか、いつもがそうなのかが分からない様であった。
そしてグランシスディア・ゼロホテルに着いた、車寄せに付けようかとも思ったが。
流石にそれをやると速攻で、バレるのであえて、表のドアに一番近い場所の、駐車スペースに一旦着けた。
まあアレは目立ちますものねとアスカ嬢は思ったが、口には出さなかった様だ。
私が、率先して車から降り、「貴重品は忘れない様にな」というと「オウ!」と頼もしい声がする、トランク側に降りる際に一旦開けて「荷物はそれぞれ持ちで、応接で
バックパックも見つけると、ケースの取っ手を伸ばしそこに固定した。
そして、トランクルームに何も残ってないことを確認して、閉じてロックする。
フルロック、である。
「先に行ってても良かったんだが」と、言いながら先導し歩いて行く。ボーイが来そうだったので、軽く制止のサインを送ると、ボーイは来なくなった。
そうして豪奢ではあるが、オールドタイプの応接に案内した。
「とりあえず座って居てくれ、鍵取ってくるわ」と伝え、速攻で荷物をアスカ嬢の隣に置いて。
フロントまで進入する。
手早く動いたため、他のボーイたちも、動けなかったようであった。
フロント・クラークに、手早く確認を取る。
ID証を見せながら、制止を要求し。
「スイートツインダブルを、四泊五日で抑えている筈だ。鍵をくれないか、ポーターは、無しでいい」ともいう。
「部屋番号は五〇〇一だったと思うが」とサコッシュの中の、メモを見る。
「クララ様の分かりました。先払いされて、おりますので」といって鍵をもらう。
「ちょっと、オーバーリアクションを、するかもしれないから。見逃していて、もらえないかな」とも告げた。
「分かりました、閣下」といわれてしまうが「できれば。様か、卿のみで」といいつけてみる。
「判りました。徹底させます」と小声で、話し。
今度は、少し大きめの普通の声で、「どうぞ、こちらが鍵でございます」と「魔導認証キー、になっておりますので、四本お渡しいたします。ホテルを、出る時だけ、お預けください」と小声に戻った。
大きくうなずくように、サインをしているかのように装うと。
「ありがとう!」といって、応接のほうに素早く戻り始めた。
「五〇〇一のお客様からのご要望で閣下、と呼ばないで、様か卿で、呼んで欲しいとおっしゃられた。各員、肝に命じよ」と小声で、専用通信に、語る。
フロント・クラークが居た。
そして直ぐに戻ってくるように、見せかけた。
「待たせたな。行こうか、とりあえずホテルから出る時だけ、鍵をフロントに預けて欲しい。といわれている」といつも通りの注意事項だが、念のためにいった。
「さて部屋に行こうか、今日の部屋は広いぞー」と、いいながら。
又もや、先導して歩いて行く。
荷物をカラコロ、いわせながらその行く先々でポーターに制止のサインを送り続けなければいけなかったが。
超高層階用のエレベーター前まで行き。
上シグナル(いわゆる△である)を付ける。
すると用意されて、いたように即開いたので。
先導して乗り込んで五十を押し開を押していると、皆四人とも乗った様であった。
他には居なさそうだったので、即閉じを実行した。
そして、そこそこの加速をつけて。
一気に上階まで上がっていく途中から景色が見えだすが、特に誰も怖がらなかった。
まあそりゃそうか、と思い。
「久しぶりに、この高さまで上るな」と、呟くだけ呟いた。
「最上階近くとは、恐れ入ったぜ」とヒジリがいった。
その答えに「まあ、そこそこの大枚は、叩いたからな」という答えで、留めておく。
降りて直ぐに、EVに近い、五〇〇一のキーを回し、開けて。
さて部屋はというと、あえてロイヤルスイーツは取っていない。
取るとバレる。
というのと、気疲れさせてもなあという条件からであった。
しかし、実際はこの部屋もロイヤルスイーツお二人様より高いのは事実だった。
しかも、四泊五日であるからして。
「まあ部屋に入って、部屋割りだ」と私が言うと、「決めて、無かったのか」とヒジリが驚いた、ような声を出した。
「まあ、入った入った」といいながら。
LDKに該当する、部屋に入って行く。
「アスカ様は、大分大雑把に、なられた様に、お見受けしますが」とはサヨリ嬢であった。
アスカ嬢が、フォローを入れる「いつも、こんな感じですが?」と。
サヨリ嬢が入って、アスカ嬢が最後に入って、扉を閉めたところで。
応接セットに座った私が「まあ、そっちが、どーなっているか、分からなかったからな、敢えて部屋割りは、決めなかったんだが」と言うと追加で「ここの、部屋はツインルームが、二つ付いているんだ、だから偶に考えるんだが」とは、言っておく。
というと、ヒジリが「ツインダブルか、考えたな」と言ったので「全く、考えなかったわけでは、無いさ」ともいう。
「女性同士・男性同士でもいいし、まぁ結婚しているか、どうかが分からなかったからな」と、私が言うとサヨリ嬢が真っ赤に
その点、アスカ嬢は平然としている。
この辺りが、違いが分かれるかと思った。
第十一章 第一三節へ
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