第六節:転院完了と懐かしい記憶

「快適さはあまり、変わらないな」と、ミハエル卿がいった。


「侯爵ではなくて、公爵になっていたのか、相変わらず隠すのは、巧いヤツだ」と、いわれてしまった。


「強くもなったし、大分我流が増えたな。まぁ元気にやっている、証拠だから良いんだが」と、お言葉ももらってしまった。


「両肩が治るには、本来は例のベッドで寝るのが早いんだそうだがアレは好きになれなくてな、とこのままだと数か月は、この調子らしいが、足はもうくっ付いている、そうなので動くにはこと欠かない。肩は固定のままだが、手は動くようになったしな」と、手をワキワキさせて見せた。


「肘がもう少し、あと数週間で治るそうだが、そこまで治れば、指南の一つや二つは面倒を見れんこともない」と、ミハエル卿がいった。


「そう言って、下さるだけでも十分ですよ。師匠に、目の前で死なれるほど、辛いものはありませんから」と私がいう。


「でも本気だったろう」と、ミハエル卿がいった。


「あの時は、本気でしたから」と私が答えた「加減が下手ですみません」とも、いってお互いに笑った。


「では今日から、厄介になるよろしく頼む」と、ミハエル卿がいったので「分かりました。こちらこそ、よろしくお願いします」といって「何か、あれば固定の内線で〇〇-〇〇〇〇にかけてください、私に繋がりますので」と、いってその場をあとにした。


 そのあと自車でFPTまで戻り詰め所の二階に上がったのではあるが、そこにまだコマチ嬢が粘っていたのである。


 流石に、この時間だからとも思ったのだが、時計は午後八時を回っておりアスカ嬢が「おかえりなさいませ総長」といい「どちらまで行って来たんですか」とクララ嬢がいったので「自車の点検だよ」と答えておいた。


 間違ってはいないので、アレなのだが。


アスカ嬢が、こうもいった「コマチが、ここまで粘り気、強いとは知りませんでした」と私も知らなかったなと思った。


「で、精霊魔法は何か掴めた、のだろうか?」というと「何かが、つかめそうなんです」と、コマチ嬢が答えた。


 流石に、そのままの状態にしておく訳にもいかないので、「一旦、夕食を取って来てはどうだ?」と、いうことにした。


「そうすれば、何か掴めるかもしれんぞ」ともいう。


「ずっと、見続けていてはパートナーにも心配をかけるぞ?」と、いうことにした。


 するとコマチ嬢が「一旦、ご飯休憩にしますね」と、ようやく動いてくれた。


「データは、持って行って構わないのでな、分らないことが有ったら、アスカ大尉に聞くと良い」とも続けた。


「今のところは分らないところというのは無いのか?」と、私が不思議そうに聞く。


「読み込むのが遅いだけで、そこまで難解な解釈は今のところ出て来ておりません」と、コマチ嬢がいった。


 アスカ嬢のほうを、見たすると「これは意外と、いけるかも知れませんね」とうなづいていた。


 読み込みが遅いのは各個人差が激しく出るものなのだが。


 ここまで遅いと、授業には支障が有るかもなと私は思っていた。


 コマチ嬢が、退出したあとで、クララ嬢に聞いて見る。「どれくらい、読み込みが遅そうだった?」と。


 すると「データパッドをあちらこちら触って、見ていたようですから。正確な時間は分かりかねますが、一頁当たり大体一時間位では無いでしょうか?」という答えが出て来た。


 それを聞いた上で、アスカ嬢に尋ねる。


「特別授業は可能かな?」と、一応魔導のほうは可能である旨を伝えるために、私が先に答えを出しておく。


「魔導の側としては、難しい所も有るから。個人授業は可能な様に、カリキュラムを組んではあるが」と、いう。


 すると、アスカ嬢からは、「個別指導になりますが、可能では有ります」と、いう答えを、得られた。


「なら大丈夫か、あとは新型機のほうか」と、いってノインにコールした。


「はい、ノインです」と通信に出る。


「新型機のほうは、調子はどうだ何とかなりそうか?」と聞く。


「一応完成は、見たんですがパイロットに連絡が伝わって居なかったので、とりあえず。サリィ嬢にお願いしてエージェントのデータを、持って来てもらって、簡易調節にしてありますので制御系は終わっています。あとは本人との、フィッティングだけかと思われます」と、良い答えが得られたので。


「明日で構わないが、シルヴェントのほうも零号機を調整つけてしないといけないんだがどの機体にする? セイランのところの二号機のパイロット、副長は確か魔剣士だったよな。そこで調整が付けられれば良いんだがどうだろう?」と、私が小難しそうな話をすると。


 ノインが答えた「総長の意見で、問題ないと思います。そのための階級ですし。確かに、魔導剣士ですね。彼女なら、いい結果を出してくれるでしょう」


 ありゃ女性だったか、と思ったが、部隊全員の名前をすべて把握するのは骨が折れるがそれが、私の仕事でもあるのだからと思い、部隊の全員のリストと配属先を全て叩き出し、四番隊セイラン・マデュークの副長の名前を見る。するとこれまた懐かしい名前が乗っていたのである。


 『アインセリオ・ストライク中尉』となっていた。


「思わず、はふう」と、私がため息をついてしまう。


 敏感に、反応する二人が居た、アスカ嬢とクララ嬢である。


 二人して「どうかなされましたか、何かまた悪い案件でも?」と、二人同時に聞いて来た。


「まぁ、否な予感といえばそうなんだが、昔の知人がいてな四番隊の副長に配置されているんだよ」とだけいった。


「懐かしいな」だが、これで部隊全体にまたあれが広がるのかと思うと頭を抱えながら天井をあおぎ見ることとなった……。



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