第四節:情報漏洩の線と転院許可

「つけられた口では、なさそうですね、かといって発信機の類も、なさそうですが」と私は断言した。


 魔導式の感知でそれらしいものが、見えなかったからではあるのだが。


「ではあとは、情報漏洩か、情報漏れの類。ですか……」と、こればかりは専門家でないととアスカ嬢を見る。



 アスカ嬢は、ミハエル卿の両肩にヒーリングをかけていた。


 1分くらいで、止めた様だった。


「これ以上かけても、結果はあまり変わりません、あとは生命力次第なので、何ともいえませんが」とミハエル卿にいった。


「まぁ直ぐには治らない、怪我なのはわかっているしな」と、ミハエル卿が言った。


「でも、体の傷跡は、癒えたようですね」と、アスカ嬢が確認しながら言った。


「あれだけの、数の傷が治せたんですから、それに骨も一部くっ付きかかってますよね?」と、聞いた。


「それだけ、動けているわけですから」と、アスカ嬢がいうと。


「流石にアルケミー・デザイナー様には勝てねえな。全部お見通しです、といわれた様なものだ」と、ミハエル卿が久方ぶりに笑った様であった。


「只のドクターには、嘘は付けるがな」と、ミハエル卿が言う。


「看護士の方が、目を覚ましそうですよ」と、ワルキューレ嬢が言った。


「確かに、覚醒しかかっているな」と、私が言って、しかし廊下の惨状は、どう報告したものかな。


 といって、スティック型通信機のほうを、取り出すが。


「逆か」と、言ってしまい込み、電話機のほうを取り出した。


「お聞きになられているかもしれませんが、FPTと機体フレームのほうは無事ですよ。ウチの整備班に詳しいものが、居りますのでフレームのほうは修理が着々と進んでいます」と、私が言うと「いつの間に、それをしてたんですか」とアスカ嬢が、突っ込んできた。


「ヒマな時に、進めてもらっていたんだ」と、タジタジしながらいうと。


「侯爵様も、形無しだな」と、ミハエル卿に突っ込まれてしまう。


「と、言うことは、ダブル・デザイナーなのか」と、ミハエル卿も驚きを隠せない様であった。


「MLLIを付けると、目立つので、今日は付けて来なかったんですが」とアスカ嬢が口を開いた「薬士と、基礎魔導工学も、持ってますよ」と。


「クワドロプル・デザイナーなのか」と、信じられない様なものを、見る目でアスカ嬢を、見ていた。


「それと一つ更新しないと、いけない事柄はあるんですが。それ以上に情報漏れの確認からしてみましょうか」といって州知事にコールし受付嬢に繋いでもらう。


「ミハエル卿の居場所が漏れている、可能性があるんですが」と私が聞く「今二〇二六号に、居るのですが、廊下にリザード・ナイツと思しき遺体が散乱しております。片付けたのは、私たちなのですが、合計で八匹はいました」と話している最中にアスカ嬢が、都市病院側に「二〇二六号前の血だまりと、二〇二四号前の血だまりに素手で触らない様に、あと緊急時のマニュアル対処の仕方を毒物として扱ってください」と伝えていた。


「光学迷彩を被せられた袋状の者も有りますが、それは敵性存在なのでその様に処理願います」とも伝えた。


「部屋に入った、看護士さんに傷はありませんので、怪我はしてないと思います。念のためフルチェックをお願いします」と病院側にスラスラと告げて行く。


 どこの誰という話になると「二〇二六号に今いる。アルケミー・デザイナーです」と告げた。


 州知事のところからの話では「ハッキングを受けた形跡があるんですか、はい、それならば転院も視野に入れたほうが良さそうですね」


「そうですか。監視体制に穴をあけた奴らがいるみたいですね」と私が追加する。


「これで終わりなのか、それともこれから、始まるのかまでは、判りませんが、注力する必要があると存じます」ということで電話を切った。


「どうします? ヤサを移しますか?」とミハエル卿に聞いて見た。


「ここが割れてるみたいですから、ここに居るとさらに追撃をもらう可能性が有ります。ウチの病室に来ますか?」と告げる。


「アルケミー・デザイナーは、三名常駐していますので、ここよりは環境は良くなるはずですが? ウチの環境のほうが、ここよりはよくなるとは思いますが治療面ではですけどね」と私が言った。


「師匠が、転院なさるならばFPTも移動させないとまずいですね、移送してもらう必要が出てきますので、そこは州知事にお願いするしか無い訳ですが」とも告げる。


「少し考えるなら、時間はそこそこありますので。今日は我々は、一日ヒマなのでお付き合いできますが」と、私が今日の状況を師匠に告げた。


「魔物対策が施されているのでリザード・ナイツくらいなら侵入警報と人員で殲滅できるとは思いますが。セキュリティーはさらに高くなっていますので」


「環境のみ、若干ここよりも質が落ちるくらいでしょうか。まあ、軍用の定めですね」とは告げた。


 ミハエル卿は何か考えている様だったので、先に目を覚ましそうになっている看護士さんたちのほうから状況を進めることにした。


 ギルド証を見せて「こういう者ですが、何が起きたか詳しく話していただけませんか?」と、聞くと一番先に起きた男性看護士さんが「何時もの脈拍のチェックと点滴の交換をしに入っていったら。いきなり後ろから突き飛ばされて、何か痺れる棒で何か見えないものに叩かれたのは覚えているんですが、そこから先は記憶が無くって」と、状況を話してくれた。


「突き飛ばされたタイミングは鍵を開けて、直ぐだったと思います」と話してくれた。


「つまり相手は鍵を持って無かったか、鍵開けができない者だった。という訳ですね」と私が情報を誘い出そうとする。


「特殊な、キーではありませんので、その可能性は高いと思われます」といった。


「もし転院なさるなら、カルテや必要な情報をお渡ししますので」と、いうと女性が目を覚ましたのと同じになった。


 先程と同じようにアスカ嬢が聞いた。


「内容は、同じですね」と、アスカ嬢が言う。


 そしてドクターがやって来てアスカ嬢を見て「ひえぇぇぇぇぇぇっおたっ、お助けぇえぇぇぇ!!!」と、いってずり下がっていく。


「転院しよう。少々厄介な客になるが頼むぜ」とミハエル卿がいった。


「承りました。移動手段を用意しますのでしばらくお待ちください」と私がいっているとドクターが、割り込んできたのでギルド証を見せる。


 そこに並んでいる、階位・職業・階級・爵位の四種類に目を奪われ何もできなくなって。



「転院を許可します」と、ドクターが茫然自失となった上で一番に目覚めた男性看護士に「必要な情報を、全て集めてこちらの御方に全て渡す様に。黒騎士様の、服や所持品も滞りなく全て渡す様に。以降は君が責任者となって、滞りなく遅滞なく」と指示をした。


 そういうと、フラフラしながら、ドクターは出て行った。


「あぁ、確かに印籠ですね」と楽しげにいうアスカ嬢の姿がそこにあった。



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