第六節:魔法の授業

 受話器を置いて。


「みんなして聞いていたのか、最近の盗聴器は優秀だな」と私が突っ込んだ。


「その盗聴器の件だが部隊領域が広くなったのでメカニックに頼んでミクロチップが落ちてないか又掃除して置いてもらえないか? 無ければ問題は無いが、あるとどこのものか調べてから回収廃棄しておいてほしい」とクララ嬢に伝えた。



 とりあえずは機動部隊が先か、んと電話機のほうを取るスティックバー型のほうだノインにコールする。


「……はい隊長ですか七割は組み上がりましたこれからエンジンですが予想出力に若干足りませんな」とノインが困ったなーという感じに伝えてきた。


「一応形だけでいいよ」といった。


「ミヒャイルⅡと同型のシュレィディア用のエンジンは三十三機発注したし、後外装も三十四機分内六機はガーディアン専用だと」と続けた。


「一応組みつけと組み外しが出来るように仕組んで置いてくれ。零号機に付いては、ツインクロスさせてその上からエンジンチューンで高出力化させてくれ。あくまでも中身も試作機扱いで構わない。コクピットをコマチ嬢にフィットだけ、させて置いてくれれば問題はないはずだ」と私がいうと。


「了承しました。そのつもりでいきます。多少はピーキーになりますが。サリィ嬢にお任せしましょう」といって電話を切った。


 切れた電話を懐にしまい込み、今度は、

「改良機のシルヴェントの発表はいつにするんだい?」といってアスカ嬢に聞いて見た。


「組付け作業はノインさんにお任せするしかないので、シュレイディア零号機が完了した後になりますね」との話であった。


 詰まりいきなり魔動機を魔導機にしますといっても状態が整わないだろうし、何より魔法が使えるようになることへの配慮が充分では無いからとの回答を得た。


 確かに、いきなり魔法が使えるようになりますとはいっても、元々使える者はともかく使えないものにとっては無用の長物になる可能性があるのだからということなのだろう。


 私ももし魔法が使えなければどこで習うのかという話が出て来るのではないかというう不安は持っていたのである。


 魔導機に乗るということは魔法を使わなくてはならないということになるのだから。


 そこで、魔法を教える授業を開かないかという考えが持ち上がった『フィッティングマジックリング』を全課程修了者へプレゼントということにしておいて。


 である、今日び『フィッティングマジックリング』が安くなっているとはいったもののそれでも、ギルド価格ですら二ゴルト(単位二G:[金貨、日本円換算で二百万円])とまだ高く職人が一つ一つ手彫りで作成しているものなのである。


 魔法を教えてもらった上にそれを終了過程の最終目標に出来るのであれば彼らにとっては高いモノではあるので、上等なプレゼントになるのではないかと思った訳である幸いながら資金は潤沢じゅんたくにあったので魔法騎士団誕生の夢を考えながらアスカ嬢に聞いて見た。


「魔法授業を開いてみてはどうだろう? 金額は一人頭十シルズ(単位十S:[銀貨、日本円換算で十万円])で、魔導の基礎と簡易応用と精霊魔法の基礎を教えるということと、魔法を教えるというものではどうだろう? 勿論受講完全修了者にはプレゼントを細やかながら『フィッティングマジックリング』を贈ってみては、どうだろう。プレゼントは私から過程修了者への完全なプレゼントということにする」といって見た訳である。



「精霊魔法は得意分野ですがから教えられないことは無いですが、魔導のほうは誰が担当するのですか?」とアスカ嬢から質問が返ってきた。


「魔導のほうは私から教えることにするよ」とお茶をすすりながらいうと。


「授業料は半々ですよね。だから私で五S、総隊長で五Sということですよね」という質問が飛んできた。


「五十四名居るってこと覚えていますか?」という追加の質問も込みで。


「一受講が九人パートナー込みで十八人になるだろう」ということは伝えた。


 教えることは悪くありませんが、魔導士ギルドに頼むほうがいいのでは?


 ということだったのである。


 一応ギルドの組織ですしちゃんとした体系的に教えられる先生も居ますし。


 それにはこう答えた。


「予算が幾らかかるか分からないだろう? 魔導士ギルドは金儲けで教えている訳だから十Sなんかで教えてくれることは絶対にないわけだ、最低でも一つ二百Sは飛ばされてしまうし。要らんことまで勉強させられてしまう。事実私がそうだったからな。導師資格と教師資格を取るために十プラナ(単位十P:[白金貨、日本円換算で十億円])も取られたんだ」といった。


「支部隊専用に支部隊長自らが教える授業のほうが効率が良いんではないかな? 一応確認は取るが」と答えたわけだが一抹の不安が無かったわけでは無い。


「それならばいいんですけれども」と答えとなったわけである。


 後は、魔導騎士育成のデータ作成と過程修了時のプレゼントの調達であった。


 都合五十四+一で五十五個分約百十ゴルト分をまとめて発注することにする。


 今ではメールで発注すれば身分や証明書がしっかりとして居れば、支払いさえきっちりして居れば発注したものが自然と届く仕組みになっている。


 そして『今回だけの限定講習』だという文面を添えて魔導士ギルドの理事にメールを作成していく、『支部隊の機体を魔導機に切り替えるのでそれに依る魔導の簡易講習を行う』旨のメールを作成していく、導師資格・教師資格所持とも書き加えておく。


 それをヨナ様にも見える様に経由させて置いて、メールを発送した。(何処を経由して来るか分かるようにしてあるのである、今ふうにいえばCCにヨナ様のアドレスを追加した。ということにはなるのだが。)


 魔導だからこれだけのヤヤコシイ手順を踏まねばならないのだが、精霊魔法は教えてはならないなんて解釈は無いのでそもそもが連絡の必要性が無いのであった。


 エルフィニアでも教えることのほうが推奨されているくらいであるのだ。


 難しいものは教えないから簡単な魔法しか教えない代わりに難しい精霊魔法が教わりたくなったら自らエルフィニアの門を叩けという様な感じなのである。


 ヨナ様からのメールはこれを即、支持する旨のメールが送られてきていた。


 どうやら経由先を見ると、魔導士ギルドの理事のところにも送られているらしく。


 三日経ってから『今回限り』という名目が付いた上で許可します。


 というメールがヨナ様当てで経由で私のところにも届いたのであった。


 流石にこれには苦笑いするしかなかったが、よっぽど嫌なんだろうなぁと思いながら。


 理事とヨナ様に対しての返礼のメールを書き始めたのであった。


 その苦笑いを見ていた皆のうち、

「何かあったのですか?」とアスカ嬢から聞かれたので、

「この前の魔導を簡易的に教える件『今回限り』で通った様だよ」と伝えて置いた。


 後は支部隊のナイツの皆に簡易的に魔法を教える理由として全機が魔導機に格上げされる旨のメールを書き始めたのであった、いわば部隊内メールの一括送信である。

 教師は支部隊隊長が魔導を、精霊魔法を簡易に教えてくれるのがアスカ秘書官である旨を明示して、皆に一括送信したのであった。



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