第五節:新型レーダー
「エンジンは変えるんですか?」とサクラ嬢。
「そうしたいところなんですが。今、交渉してきます」とAFPVから降りた私めがけてノインが走ってきた。
「どうした?何か問題でも起きたか?」と私。
「エンジンA級のままで行きますか?」とノインがいった。
「S級に上げなかったわけか」と私がいう。
「ギルデュースパッケージのままでしたからA級のエンジンなんです」とノインが残念そうに言った。
「胸部フレームにはかなり余裕のある設計だったよなスミロクロスは」と私がいう。
「ギルディュースのエンジン二個くらいなら入りそうなんだが」と追加でいった。
「ギルデュースのエンジンダブルにして積み込んでツインコンタクトにすれば問題ないんじゃないか?」とさらに続けた。
「整備に若干支障は出るかも知れないが、皆の腕が上がるなら大歓迎だが」とも続けたため。
「分かりました予備パーツを追加しますのでサインいただけますでしょうか」とノインがいった予備パーツは『ギルデュースのエンジン二十個』であった。
スラスラとサインをしながら、
「これでまとまるか?」と私がいうと。
「充分ですこれ以上無い出来になるでしょう。でもまだ一抹の不安はあるんですが」
「おや、金の提督ではなくNS-FPTと資材と一緒に届くようですね」とノイン。
「まぁ時間的に見ればそんなもんだろう? 二日だよな」と私。
「えぇ一番艦と一緒に来るようで」とノインがいった。
と私はそこに追い打ちをした、
「東側倉庫の区切り線は終わってるのか?」と。
「目打ち線自体はもう引けてますよ」とノインがサラリと答えた。
「仕事が速いな」と私がいうに留め鎧武者型も欲しいなと思って見た。
とそこへアスカ嬢……
「ギルデュース改ですが“シルヴェント”でいかがでしょう、風の精霊からイメージをいただきました」とアスカ嬢が続ける。
「いかにも魔法が使えそうな名前ですね」とノインはいった。
「よし、決まったな。それでいこう!」と私が締めた。
支部隊隊長部屋の二階に戻ると、いきなり切り出した。
「とりあえずロングレンジのレーダーが欲しいな幽霊対策に質量の図れる奴を二台程」と私が呟く。
「魔導レーダーですか?」とクララ嬢。
「その一種なんだが、ギルドの開発室で試作品ができてはいる筈なんだ」と私。
「ここが虹にも、幽霊にも、狙われていると分かったから何だが。実戦テストということで回してもらえるか、聞いてもらえるかなクララ」と私がいった。
「直接お話になったほうが良いのでは侯爵、直々にといわれたほうがいいと思いますが、確かアラハス・ナカニシ技術研究所所長までなら、ヨナ様に確認を取れば一撃だった筈ですが」この話は間違いなさそうだった。
まずはと時間を確認する評議会は終っていて、休憩時間に差し掛かった処だった。
支部隊隊長室の固定電話からヨナ様の番号をコールする。
「ジークレフ侯爵かえ? さらに何かあったのかの?」とヨナ様が反応された。
「ヨナ様には度々、直に電話で申し訳ないのですが少しお願いしたい件がございまして」と私は切り出した。
「評議会の連中と話しているよりは、よほど良い時間になるわ」といって下さった。
「幽霊と虹にグランディア・ゼロが狙われているという話は以前に少しお話したとは思いますが、その件で繋ぎを取りたい方が居りまして」といった。
「感覚的な問題で申し訳ないのですが、私の感覚より優れているレーダーが開発されたという話を聞いたものですから。そのレーダーに興味がありまして」と私はとても興味があるというふうにいうと。
「良い耳も持って居る様じゃのぅ」といたく感激されている様だった。
「アラハス・ナカニシ所長からは一度紹介してほしいともいわれたこともあるんじゃが頃合いかも知れんな、良かろう今回の件を持ってお互いに話し合うと良い」
「直通電話は今送ったぞい」とヨナ様。
「ワシも暇なのでなちょくちょくかけて来てくれることに感謝しておる次第じゃ。又話せる日を、楽しみにして居る。でわの」と電話を切られた。
確かに直通電話の番号が送られてきていた。
そして直通電話に掛ける数コールの後、
「どちら様でしょうかこちらは技術研究所のアラハス・ナカニシと申します」と所長。
「これは申し遅れました、グランシスディア・ゼロ支部隊隊長のアスカ・ジークレフと申します」と私がいうと。
「侯爵閣下であらせられますか。これは失礼を致しました。如何なされましたでしょうか? もしや送った資材に不備でも……」と所長。
「あぁ、資材は無事に届きましたありがとう御座います」と私が返答する。
「とんでもございません、ではないとするとひょっとして新型レーダーのお話では無いでしょうか」と所長。
「はいそうです、私の感覚よりも鋭いとお聞きしたものですから一度設置してみたくなった次第なのですが、実戦テストがわりに二台程送ってはいただけないでしょうか、現在グランシスディア・ゼロは幽霊と虹に狙われている最中ですので、いついかなる状態でも気を張って居なければならない。そんな状況なのです」と疲れているような口ぶりで話す。
「実戦テストにご協力いただけるのでしたら、いつでもご協力致します」と所長が二つ返事で答えた。
「二番艦と一緒にお送りするのが良いかと存じますがそれで如何でしょうか」と所長が続けた。
「それでお願い致します」と私が言った。
「それとものは次いでなのですがミヒャイルⅡにいただいたエンジンと同型のものを三十三基ほど調達できないでしょうか、それと新型の標準級試作外装もあればそれも三十四機分その内六機分はガーディアン用の重装カスタムでお願いしたく」と私が言う。
「スミロクロスのエンジンですね判ります。ギルディュースのエンジンでは二機並列にしてもかなり出力が低いとは思っていますので」
「分かりました二番艦の設備の中に一緒に入れておきますのでそれでどうかよろしくお願いします。二番艦はあと三日もあれば組みあがると思いますので現在最終偽装中ですのでもう三日ほどお待ちいただければそれから一日程見ていただけますでしょうか」と所長がスケジュールを見ながらいった。
「部隊のほうは一ヵ月ほど待てばいいのでしょうか」と私は待ち遠しそうにいった。
「全装備が揃うのを待っていただくにはやはり二ヵ月ほどお待ちいただく必要が出てきます」と所長が牽制の手を打つ。
「それとですが資材と部隊運搬用に、一番艦から三番艦までを輸送用に運用させていただきたいのですが」と所長が続ける、こちらは多分金の提督には頼みにくい要件ができたのだろうなと勘繰るしかなかったが。
NS-FPTの乗員の完熟訓練になってちょうど良いのではないかなとも思った。
「分かりました、こちらでも手配しておきましょう。乗員の完熟訓練にちょうど良いのではないですかな」と私がお茶を手配しながらいった。
「四番艦は最終の部隊と一緒に届けますのでフル装備でお届けします」と所長が万冠御礼の意思を表明した。
「また何かありましたらこちらから、コール差し上げますので。よろしくお願いします」と私がいってから電話を終えた。
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