第四節:高位の悪魔対策

 高位の悪魔が出たことから態勢強化タイセイキョウカという訳でアスカ嬢にはコマチ嬢という護衛が一瞬いっしゅん付いたが、流石さすがに頼りなかったためこの案は流れた。


 高位の悪魔に対応できるのは誰だという条件から、隊長以外らんという事で私が直接アスカ嬢の護衛ごえいをする事になったのである。


 これ以上にない護衛ごえいではあったが、問題は山ほどあった。


 そして、グランシスディア・ゼロの魔法武具屋に通うアスカ嬢と私の姿が見られるめずらしい時期じきともなったのである。


 すでに二人とも歩く看板状態あるくカンバンじょうたいであり、公爵御令嬢こうしゃくごれいじょうとその支部隊隊長しぶたいたいちょうが歩く姿はサマにはなっていたが。


 アスカ嬢が前を歩き、その左後方二メートル以内を歩く支部隊隊長がガード役としてもかなりサマになったことから。


 写メこそは取られはしなかったが、通話アプリケーションでの位置補足には事欠ことかかなかったという。


 バックアップしていたクララ嬢の話でもその様子がうかがい知れた。


 何故に魔法武具屋だったのかと言うと、魔法・魔導武具屋について早々そうそうにアスカ嬢をともなった私が来て「高位の悪魔に対応できる武器は無いか」との話を店長に直接話していたからでもあった。


 武具屋側としては願ったりかなったりであったが、どれくらいの悪魔でしょうとの対応に、『魔族ドッペルゲンガー』と二人そろって答えたため、在庫を探す要員よういんで店の中は一気にごった返したらしかった。


 グランシスディア・ゼロの近くには古代の遺跡いせき散見さんけんされ、冒険者もご用達の店ではあったのだが。


 そこまで高位の悪魔に対応する武器となると。


 小さくてナイフ(大型のダガー位)十P:[プラナ 白金貨]からグレートソード(百P)まではそろっていたのではあったが、私とアスカ嬢のお眼鏡メガネにかなうものは無かった。


発注はっちゅうしますか」とアスカ嬢がいって、「そうするか」と私がそれに答えたため。


 その二言ふたことで「ひえぇぇぇっ!」と武器屋店主の声が上がった位であった。


 私の理由は小さくて取り回しが良く、尚且なおかつ高威力こういりょくなモノが二本欲にほんほしいからということではあった。


「魔導光剣では?」との武器屋の店主がいったが「すでに役に立たないことが分かっています」とアスカ嬢の一言でかなりのイメージダウンになったとの風評被害フウヒョウヒガイ(「ある意味事実なんだが」と私)、かといってオレワザではPtが穴だらけになるとの一言ひとことであり、二人から同時に却下キャッカされたことが冒険者の間でも有名になって一時期魔導光剣まどうこうけん類はあまり売れなくなったらしい。


 で、私が選んだ武器はカタログよりミスリル魔化硬銀材まかこうぎんざいで打ちでき上がっている小太刀こだち二本にほん、とアスカ嬢もそれにならって同系どうけい材質ザイシツでできた小太刀を一本お買い上げとなったのである。


 モノが届くまではこちらのミスリル銀の武器をお貸出かしだしいたしますとサービス精神旺盛せいしんおうせいに付けたのだ。


 武器屋としては赤字にはなったのであった。


 しかしID証ギルドショウを使用して買い物をする豪儀ゴウギな姿を目の前で見られたといって武器屋店主は御上おのぼりさん状態であったことが知られている。


 しかもID証を使ったのが私で、アスカ嬢の分もカバーリングしたところから店に居た冒険者諸氏ボウケンシャショシからはスゲーなー、俺にはあんなマネは出来ないぜといった好意コウイの目が寄せられたのも確かであり。


 より男を上げてしまった事に気付くようでもなく。


 店を後にする際に、「速めを期待きたいする」と追加注文ツイカチュウモンまでして帰ったためさらにオトコが上がったのであった。


 ブンヤさんも集中しそうになってはいたが、私の視線の動きがせわしないのとガードの邪魔ジャマになってはいけないという広義こうぎの意味から誰もアタックはしなかったのである。


 その意味でも街で衆人環視しゅうじんかんしの中ガードを生真面目きまじめにする支部隊隊長に女子・女性からは好意こういあつまったのはいうまでもなかった。


 グレムリンなどに対抗するために歩いて行ったんだとのことで。


 あとから話を聞いた記者ブンヤが書きしるしている。


 まりそこまでアスカ嬢のためを思って真摯しんしにガードしていたのだという書き残しが残っている。


 そのころはちょうどミヒャイルⅡの試験と魔導剣の試験があったため取材に行っても駆動音クドウオンこそしたが入れなかったとの書き残しがある位であった。


(駆動音から判断できるのは高出力になったのではないかという、記者ブンヤ推論すいろんだけであった)


 ガードの観点かんてんから一緒いっしょに行動をせざるをなくなり私が試験シケンをしているときはそのサポートにアスカ嬢がまわり、データ取りや雑務ざつむを行って居た。


 その後の汗を流すという行為には私よりも先にアスカ嬢がPtに入りその間はクララ嬢がアスカ嬢の直接護衛ちょくせつごえいをし、そのPtに誰も近づけることが無い様に外で護衛に当たる私の姿が見られたのである。


 そこまでしなかったらどうなっていたかは分からないとは私のゲンであり、そこまで魔物に対策たいさくこうじていたということではあった。


 食事も二人か三人で取ることが多くなりこのころにおいては外のほうがガードはしやすいなという観点かんてんから、外のオープンカフェで人払ひとばらいを行い食事をする三人(アスカ嬢、クララ嬢、私)の姿が見られた貴重きちょう機会きかいでもあった。


 ブンヤさんはナガタマでも気づかれるという観点かんてんから取材しゅざいをすることは無かったため、取材しない期間として発表儀礼はっぴょうぎれいまで涙をのんで我慢がまんするようであった。


 この様なほかかかわる人からの配慮はいりょもあってか行きつけの店が定まって行き支部隊隊長御用達ごようたしとかアスカ嬢御用達とかクララ嬢御用達の店というまくかかげる店が増えたのは事実であった。


 それによる集客効果しゅうきゃくこうかもあったため、私やアスカ嬢やクララ嬢にいたってもとくにその垂れ幕にかんしては何もいわなかった。


 詰まりそこまで気にかけてはいなかったらしかった。


 結局武器は入手でき無事に魔法武具屋に借りていた武器を返す事が出来たため、このけんはそれで終わりに見えた。


 発表儀礼はっぴょうぎれいさいの武器の携行けいこうについて、私とアスカ嬢にいて例外的にその魔法剣をさらに認められる案が上がり議会を通過つうかしたと州知事しゅうちじからじかに電話がアスカ嬢に入り、アスカ嬢がそのことを私に伝えると。


 なかなかやるねあの州知事さんも、と私からは高評価を得たところであった。


 武器は手になじむようにできており、流石はエルフの刀匠とうしょうだと私にいわしめるつくりであった。


 問題は魔力化されている武器ではなく、どうやって見つけるかということであったがそちらはクララ嬢の方で対策済みであった。


 ユンデル公爵からの贈答品ぞうとうひんという形で届いたのである。


 見た目は普通の度無どなしメガネに見えるのだが、魔力数値まりょくすうちがゲージとして表示されるという物と、装着者そうちゃくしゃ敵意てきいを持っているかいなかというのが同時どうじに分かるすぐれモノだったのである。


 そして周囲の風景やヒトの外観上がいかんじょうの表示は現実げんじつのままに見えるというものであった。


 これは私のほうからユンデル公爵に贈答品ぞうとうひん御礼申おれいもうし上げますという書状しょじょうでことなきを得たが。


 これくらいは造作ぞうさもないわというむね返事へんじとどき、しばし文通状態ぶんつうじょうたいになっていたことを明記しておかなくてはならない。



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