第三節:魔物侵入

「それに割込みは出来ない、仕組みですし」とも続けた。


 とこう話しているとまたもやノック音がした。


「誰かな」といい私は声をかけながら時計を確認する(深夜2時であった)。


「ノインです」とノインであった。


「M・Mの機体組付け終了いたしました。チェックはいつされますか?」


「魔導剣、サライの方は?」と私がいうと、「まだもう少し調整に掛るようです。」とノインが駆動部くどうぶに時間を取られているようですという意味合いを返した。


「できれば一度にチェックしたいな」と私が希望をいった、バランス調整は武器と一緒にが望ましいのであった。


「了承しました二番隊も三番隊の支援に回ります」とノインがいって通信機に通達した。


「終わり次第、明日で構わないので各自休息かくじきゅうそくをしっかりとる様に」と私は整備員の体調にも気を配りながら答えた。


「は? 了承しました」とノインこちらの意図いとを読みかねている様ではあった。


「朝も早くなくていいぞ」と私、朝一でやってもみな調子が乗らないだろうしなと思えたからではあった。


「我々もいったん休憩に入ろう」と私も少しは休憩しないとなとは思っていた。


「了承です」とアスカ嬢とクララ嬢が答えた。


 アスカ嬢は自身のパワートレーラー【以下:Pt】へ戻って行った。


「隊長はどうされます? またここで寝るんですか」と半分ほどクララ嬢の目がジト目になっている。


「取り合えず毛布はお持ちしましたが、中原ちゅうげんの夜はかなり冷え込みますのでご自愛じあいくださいませ」といってドンを回収しフローティングパワートロリー(Floating Power Trolley)【以下:FPT】に戻って行くクララ嬢。


「まぁ気になる名前と人物は十二名か」とチェックを付けた人物と写真とプロフィールを確認して居る内に睡魔すいまおそわれ私の意識は暗転あんてんした、毛布は掛けてあったので風邪は引かなかったのは幸いではあったが。


 私の朝は早い、起床時間を午前五時半と決めてあるせいでもあり、体内時計によってほぼ外したことは無かったからである。


 よって、いつもどおり午前五時半に起床してしまっていた。


 決まり事というのは、怖い物である。


 体調は管理もしっかりとしているため、ここに来てからは特に不調をうったえたことは無い。


 朝は、することも決まっている。


 洗顔を終えるとヒゲをソリ、歯を磨きひととおり身支度を整えてから。


 一周そこそこの距離を四百メートルトラックとほぼ同程度の長さが確保されている、シティー側ゲートと南ギルドゲートの間にあるスペースをストイックに朝食前に四キロメートル走る日課にしているのである。


(決まったペースでウェイト各五十キログラムを四箇所に付けてハイスピードで走り込むのである)


 オーバルなコースでは無いがある一定のコースを走ると丁度四百メートルになる様になっており、一応白線も目印に塗装されていたりする。


 いたれりくせりなコースなのである。


 それが終わってもまだする事はある、ベンチプレスで三百キログラムを基準きじゅんげストイックといっていいほどに調整するのであった。


 これが全て終わる時間がちょうど午前六時になる頃ではあるので。


 FPTまで行き、朝シャンしてから朝食にするのである。


 クララ嬢の側ではそこまでストイックには管理されていないが、私が午前六時十五分には出て来るのでそれまでに朝食を作って。


 用意するくらいであった(クララ嬢もテキパキとこなすほうであり、スキが無いとよくいわれることではあった)。


 なので支部隊隊長には穴が無いのかといわれるほどストイックに自分を攻め込んで、普段の私ができあがる訳ではあった。


 アスカ嬢はどうかというと、標準起床時間が午前七時半。


 朝シャン+身だしなみを整えて、朝食に入るのが午前八時くらいであり仕事場が近いせいもあって午前八時半頃には隊長室詰め所かM・Mコクピットにて管制を開始するのである。


 書類整理などは支部隊隊長詰め所に居る事が多く、『データパッド』片手に仕事を行うのである。


 自身のところで管理できる書類はさばき、隊長におうかがいを立てないといけないものだけにするのが主なお仕事といえた。


 よって他の部隊に比べ、効率よく仕事がまわっていたとも言える。


 今回はM・Mの確認調整と、調整評価等を行わなくてはならないため少々ウキウキしているのが傍目はためでも確認できるほどであった。


 この件については、誰も突っ込まなかったのである。


 一番ポートに上がると、死屍累々ししるいるいに思い思いの格好で寝ている。

 デザイナー込みメカニックが確認できたのでひとまず別作業をするとして。


 一旦いったん詰め所に戻ったのであった。


 これがさいわいにして、アスカ嬢の危機を救ったというものでもあった。



 アスカ嬢が午前八時半に詰め所に入ると詰め所そのものはカギがかかっておらず、少々不用心ぶようじんかなと思い、隊長の姿を確認したのであった。


 まずアスカ嬢は違和感いわかんを感じていた。


 鍵がかけられてないことはたまにあるのではあったが、隊長がデスクあさっているのを確認したからであった。


 即座そくざ魔導光剣まどうこうけんを抜き、「隊長ですか、それ以外ならばてます」と容赦ようしゃのない勧告かんこくおこなっていた。


 隊長と思しきものが顔を上げる、そこには顔が無かった、目も鼻も口も何も無い、精霊視せいれいしを発動させる。


 精霊ではない事が、瞬間に分かる。


 答えは「ドッペルゲンガー!?」と叫んだ。


 射撃モードに切り替え牽制けんせい連弾れんだんを放つ、流石高位さすがこういの悪魔である。


 六連放ったが全てけられてしまった。


 後退するが、壁際かべぎわまでまれてしまった。


 魔導光剣がヤツの左手でにぎられてしまった。


 “シュウシュウ”と音が出ているためいてはいるのだが、火力不足かりょくぶそくではあった。


 そのままヤツの右手がアスカ嬢の顔にびる寸前すんぜん私のハイキックがモロに顔無しドッペルゲンガー顔面がんめんとらえ、そのままり上げられ天井に叩きつけられた。


 ちなみに各隊部隊の隊長室はぜん特殊鋼製とくしゅこうせいであり、フレームには特に頑丈がんじょう特殊鋼とくしゅこうが使われているのである。


 何か「○×▽!!」と言葉にならないのか悪魔語あくまごらしき呪文じゅもんなのか誰かを呼んだのか分らないが、ドッペルゲンガーがさけぶ。


 そのまま落下らっかし、今度はおおいかぶさろうとしてきた。


 足先で私が“連続衝撃波レンゾクショウゲキハ”をハイキックのまま、半分位はんぶんくらいの回数でそのまま技を叩き込んだ。


 おおいかぶさろうとひろがったのが、運のきであった。


 真面まともに“連続衝撃波レンゾクショウゲキハ”をもらい、今度は壁にぬい付けられてしまう。


 そのまま続けて三セットの“プラズマ電撃”を、私がそいつに向かって叩き込んだ。


 流石にこれは効いたらしい、というのが目に見えてわかる。


プラズマ電撃”が当たったトコロが、消滅しょうめつし穴だらけになっているのである。


 これでもとどめをしきれないとんだ私が、「アスカ走れ」といってそいつに、両手を突き出し“念動力ネンドウリキ”を発動後。


 深奥奥義“アタック”を、ぶっ放した。


 アスカ嬢がとびらから飛び出た直後。




“ズドーン!!”




 といい音がして、支部隊隊長室の壁側角カベガワカドに大穴が開いたのである。


 これは外側から丸見えであったと同時に、思い思いに寝ていたデザイナーとメカニックさんを起こす号砲ゴウホウとなったのであった。


 さすがに魔族まぞくドッペルゲンガーは消滅ショウメツしていたが、支部隊隊長室の損壊ソンカイとは別の話であった。


 その日は隊長室の固定電話は、鳴りやまなかった。


 主にギルド関係からの電話が七割、州知事関連からの電話が二割、残りは爆音バクオンに対する苦情といったものが一割だったのである。


爆音バクオンは、二ブロック先までひびいたらしかった。ギルド関係はアスカ嬢の安否アンピ最優先さいゆうせんであった)



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