第二節:部隊のイメージ印

『私がここに来てから十五日目の事であった』


 これが、五月半ばの話である。


 発表儀礼まで一ヵ月となっていた。


 虹がどうの幽霊がどうの、という話はどうやら噂だけだったらしかった。


 まだ本格的には、出て来ていない様ではあったのである。


 まあ、居たとしても尻尾は掴ませなかったであろうが。


 ここでは、むしろ対策会議に魔物対策会議が加わった位であったのだから。


 それ程、ブルーアジュール準騎士団側の精神的被害が大きかったといえるのであった。


 あれ以降、魔物は現れておらず、翼竜の被害もグランシスディア・エイト側に広がっておりこちらにはとんと飛んで来なくなってはいた。


 ただ、対策は講じるということで、ブルーアジュール側にも折り畳み式高射砲が武器として一部隊辺り五機と多くが配備されていたのである。


 後は地上の肉食系亜竜や時折飛んでくる遺物(遺跡からの落下物のことである、この世界にはまだ飛行している空中遺跡が数多く残っているのである)への対応が主になっていった。


 隊長には、州知事よりレーザー無効式:完全防御のサーコートが贈呈されるなど色々と箔が付き始めていたころの話である。


 か弱き女性を守って、被弾面積を自ら広げて被弾するとは、男の中の男とまで雑誌で騒がれ特集記事まで書かれてしまっていたからである。


 もう、グランシスディア・ゼロにおいてアスカ・ジークレフ侯爵を知らないやつはモグリだとまでいわれるようになってしまっていたのである。


 日頃の行動の賜物、というかそれの積み重ねであったのはいうまでもあるまい。


 紳士的行動と、いい。


 聡い所はあるが態度を変えないところなどが評価され、雑誌の一面まで飾る様になってしまっていたのである。


 実際に大手ファッション誌と大手で人物論などを書く雑誌社二社から、ぜひウチの表紙にと二度程表紙になりインタビューの掲載やファッション誌ファッションの掲載で特集を飾ったのである。


 人物論を文書にするところもインタビューや、様々な評論家の意見等も載せて一大特集を切っており、グランシスディア・ゼロ内部ではアスカ・ジークレフ侯爵を知らないナイツはモグリだといわれても仕方が無かったのである。


 何せ、一般市民、特に女性層からの指示がかなり厚かったのである。



『私がここに来てから十六日目のことであった』


「部隊のイメージ印は?」との記者の問いに、秘書官の私にいわせると。


「支部隊隊長です。完璧超人ですから、イメージ印に、なっていただくしかありませんね」


 他の者にいわせても似たような答えしか返ってこなかったのである。


 一番隊隊長は「一番に尊敬する人です」と言い、二番隊のジーンや三番隊のレオンまでもが、「尊敬に値し見習いたい面が多くある人物です」と評価しているからでもあった。


 支部員からは大体そんな感じで、慕われている人物という評価となった。


「自分に厳しく、ストイックに、攻め込める所がある人物」ともデザイナーやメカニックからはいわれているのであった。 


「確かに、レースである以上間違いもするが、それを認め、前に進んでいける、人物」と高評価していたのは、ディシマイカル・Fフリュー・グリッド侯爵や同じ階位の貴族の面々であったりしたのである。


 それに、各パートナーからの信頼も厚いといわれていたのである。


 そんなわけで、信頼厚い支部隊長が居る。


 ということでギルドの中でも噂になりつつあったのである。


おくすこと無く、ひるむことの無いめずらしい人物である」として、爵位以外にも勲章だったりの数がかなり多いという噂もギルド内では伝播でんぱしていたわけで。


 新聞記者さんは、それをメモすると、記事を書きに基地ゲートから出ていかれた様ではあった。


 グランシスディア連邦共和国の駐屯部隊の中では、トップではないかといううわさまでまことしやかにいわれていたりしたのである。


 まあギルディアスの本国でも、そういう感じで目立つ部隊が居るらしいよというところまでは噂になっていたのだが。


 ギルディアスは、グランシスディア連邦共和国のグランシスディア・セブンとエイト以外の州都しゅうとには駐屯展開部隊ちゅうとんてんかいぶたい支部隊しぶたい)を一応置いているが数は最小の十二機を筆頭に最大の六十機までであった。


 その中では三十機という中規模ながら精鋭部隊として人気をはくしていたのは事実であり、当然発行された雑誌類などもチェックされてはいたのである。



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