第十節:経過観察と後日談

『データパッド』の、アドレス交換を主任看護士しゅにんかんごしさんと交換し隊長の経過観察けいかかんさつデータを受け取れるように設定した。


 ドアが、開いているので「ウルフ・ディッシュです」と配達屋さんがいうと、クララさんが、マネークレップを持って対応していた。


 応接セットのほうのテーブルの上に一旦置いて、

「アスカ・アルケミー・デザイナー、来ましたよ!」と対応を瞬時に変える。


 阿吽あうん呼吸こきゅうというヤツである。


 主任看護士さんに「侯爵様にも、栄養えいようの付くものを手配願います」とお願いすることにしたのである。


「承知いたしました」と快諾かいだくられたのであった。


「すぐに行きますのでフタはそのままで」と答えるとドクターに向かって、「お願いしましたよ」と、念を押すことにしたのである。


 ドクターはコクンコクンコクンコクンと四回うなずき、

みないったん外に出るぞ」と看護士部隊と共に一旦撤収いったんてっしゅうして行ったのである。



「隊長にも、朝食は手配しましたのですぐ来ると思います。お先にいただきます」と声をかけて、


“ちゅるちゅるちゅる”といい音を立てて食べ出すのであった。


……そして三日が経過けいかした……


 支部隊隊長が、正式に部隊に復帰する、隊長は休暇中の事故であったため有給で入院期間を過ごしていたのである。


 南無南無なむなむ


 復帰する際に、ディシマイカル・Fフリュー・グリッド侯爵から『快復祝い』と『詫び状わびじょう』が書簡と荷物で来たことで支部隊全体に判明したのである。


 それまでは、情報収集じょうほうしゅうしゅうをあまりしない組からは結構長い休暇だなあ「いいなー隊長は……」と言われていたのであった。


 ニュースを診たり、新聞を読んだり、しているヤツらからは、少しは情報収集じょうほうしゅうしゅうくらいはしろよといわれたりしていたのであった。


 そして、情報収集をすると“げ”とか“うわ”とかが飛び交ってはいたのであった、が問題は、どの情報も確定情報かくていじょうほうではないことであった。


 ただし、テレビ組は反応が唯一違い「こりゃ鏡面分身か鏡面二重分身かどちらかだな、てことは死んでる可能性かのうせいもあるのか」とか、「いいや俺たちの隊長だぞ死ぬわけないじゃないか必ず復帰かならずふっきしてくれるさ」という反応であった。


……


「そうしないと、情報管制しいた意味が無いでしょう?」というクララさんがいったのである。


「それに、皆で見舞いに来たら、居場所がバレちゃうじゃないですか」と私も突っ込むことにするのであった。


「すまんな。皆、ちょいとワケありでな話せなかったんだ」と隊長が後ろ頭をかきながら答えたのであった。


「まあ。最初の二日は完全に寝てましたからね」とついでとばかりに突っ込むのである。


「まあ、そういうことだすまなかった。これからはバリバリ邁進まいしんするのでよろしくたのむ」と隊長が皆にそのように答えていたのである。


……


 その頃、ディシマイカル侯爵は最後の調整の真っ最中であり色々と大変であった。


 調整中で、有ったため誰が敵で味方なのかと言う重要なところの調整中であり、私を味方、隊長も味方であると識別しきべつしてしまっていたのだが、本人がそのことをディシマイカル侯爵に一切話さなかったのでそのまま最終調整さいしゅうちょうせいあいなったわけでは有る。


 そのまま最終調整を受けたため、強く私を認識にんしきしてしまっていたのである母親かそれ以上の存在であり親友以上しんゆういじょうのものだと認識にんしきしていたようである。


 つまり、刷り込すりこみが行われてしまっていたということになろう、それもかなり、強い刷り込みであり、生死を共にした戦友せんゆうのような感覚も覚えて居たらしく、私をパートナーとして選ぶことは、ほぼ確定状態にあったといえるのであった。


 確かに、貴族としてナイツの資格は持ってはいたが、ことがことであり発覚したのが発表儀礼の会場であったことから。


 あとにも、先にも刷り込みって結構まずいんだなと、ディシマイカル・Fフリュー・グリッド侯爵が後悔したという一例になった。


 支部隊としては、良くも悪くも戦力が拡充かくじゅうされた瞬間であったが、元々口数の少ない子で調整中の子の中では次女に当たる子であったため、侯爵からは心配が一番ない子だろうとの確信が、拍車はくしゃをかけさらに発見が遅れてしまい発表儀礼へと時期は流れるわけでは有った。


……


 ジーン二番隊隊長は隊長である侯爵の状態じょうたい確認かくにんしており、この時はギルドナイツ本部とギルド上層部じょうそうぶにも連絡を入れている。(かなり危険な状態だと……)


 私の適切てきせつ応急処置おうきゅうしょちのおかげで死には直結ちょっけつしなかったものの、危なかったといわれたときにはジーンでさえこしけかけたところであったとのことである。


(ダイヤだったら絶対に泣いてただろうとあとから、ジーンがダイヤを突っついていたことは支部隊の中では比較的有名ひかくてきゆうめいである)



 ディシマイカル・Fフリュー・グリッド侯爵の子ら三人とその後三回程顔合ごさんかいほどかおあわせはったが特に問題ない様子だったので侯爵も問題にしなかったのではある。


 まさか自身じしん丹精たんせいめてつくり上げた子がノーマルを選ぶとは夢にも思ってなかったはずである。


 これがことのはじまりになる事件の零幕目ゼロまくめで合ったのである。



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