第八節:精霊力

「ギルドへの報告は……」といいかけたのを、ジーンさんがさえぎって「ギルドへの報告はワシから行うことにする」と強くいい切った。


元支部隊隊長もとしぶたいたいちょう伊達ダテでは無いのでな。アスカじょうちゃん、は支部隊隊長のことをよろしくたのむ。こまかい報告ほうこくもくれたことだしの」とジーンさんがいったのであった。


「では皆様みなさま、私はこのまま休暇きゅうか延長えんちょうさせていただきますのでよろしくお願いします」といったのである。


うけたまわった」とジーンさんが、『データパッド』を展開てんかい休暇延長書キュウカエンチョウショ書類ショルイを展開するそして。


「サインだけでいいからの」と、一週間休暇延長の書類を展開していたのである。 


「ありがとうございます」と、いいながらサインをしたのである。


「あと、受け付けにパートナーのクララさんが来ることを伝えておいてください。この病室二〇〇一までフリーパスで来れる様に……」と私が伝える。


「分った、伝えておく」とジーンがデータパッドをしまいながらいったのであった。


「ワルキューレちゃん、またね」、「ディシマイカル侯爵、ありがとうございました」と一礼した。


「心よりの快復かいふくいのもうし上げます。では今晩こんばんはこれにて失礼いたします」


「アスカじょうちゃんは、あまり無理せずにの」とジーンさんがいったのであった。


「分りました、気を付けます」と私も答えたのである。


……


 そして今「隊長早く帰ってきてください」隊長のとなりつぶやく。


 隊長の手をにぎり、こちらの精霊力を活性化かっせいかさせるべく集中する、精霊力がちあふれていく。


 精霊視せいれいし(精霊が実風景に映り込む)を発動させ生命の精霊の活動と精神の精霊の活動をる。


 生命の精霊はあと一息ひといきといったところまでに回復していた、精神の精霊はかなり弱ってはいたが活動しているのを見つけたのであとは時間かと思い、ヒーリングをとなえておいた。


 生命の精霊が完全復活かんぜんふっかつする、精神の精霊も少し楽になった様ではあったがどうしたらいいのか直ぐには思いつかなかった。


……


 それから一時間あまりして


“コンコン”


 ノック音が、する「どちら様ですか」と私が聞いた。


「クララです」と、クララさんであった。


 扉を開ける前に一応確認し鍵を解除しクララさんを迎え入れる。


 クララさんは手に大きなバスケットを二つ持っていた。


休暇中きゅうかちゅうなのに……、ごめんなさい」、すでに私の声がふるえていた。


 隊長の所まで案内する。


「また無理をなさって……仕方しかたのないヒトですこと」


 そして大きなバスケットの内一つを手渡された。


「これがいわれていた分の着替えです、タオルや洗面用具類化粧品もMLLIも入れてきましたので少し重くなりましたが…。必要なものがそろっているか確認してくださいね」といわれた。


 もう一つのバスケットを開けると「デリバリーものではあるんですが、『ウルフ・ディッシュ』さんのところの弁当です。まだお夕食、食べていらっしゃらないですよね」


「すみません、何から何まで……」と泣きそうになる。


「泣かないでくださいな……、無理をするのがこの人のいつものこと。私はもうれました」


「冷えない内にし上がりましょう」とさらに続けてくれたのである。


「はい」と答えるのが精いっぱいであった。


……食事シーン……


 食事が終わり、クララ嬢がベッドの下のベッドを引き出すと私を呼んだ。


「今日は、こちらでてください、その服着けおき洗いしましょう。血痕けっこん抜きも持って来てありますので一日漬けるとどんな血痕けっこんも落ちる超強力なモノですので大丈夫です」といって風呂場に有った比較的大きなタライを持って来て血痕落とし適量とそれに相性のいい洗剤せんざいを一緒に入れて用意した。


 そして「どうぞ」といわれた、ので寝間着ねまき着替きがえるついでに漬け込む。


 タライ自体は、メインテーブルの丸テーブルの上にちょうど乗るサイズだったのでテーブルの上に乗っけて置いた。


「こうすればタライに足を突っ込んでこけることは無いはずです。この部屋結構設備けっこうせつびととのってますね」、「階下のコマチじょう、のところとはかなり違いますね」と続けたのである。


「クララさんは、どこで寝るのですかと言うと、ロングソファーがちょうど良い長さなんです」と三人かけのロングソファーを指さした。


「タオルケットは、持って来ていますしこの部屋据え付そなえつけの毛布があるでしょうし」


公爵御令嬢こうしゃくごれいじょうに、風邪かぜでも引かれてはたまったものではありません」と力説されてしまった。


「それに私のほうが、環境かんきょうに対しては丈夫じょうぶにできていますから」と追加もされたのであった。


まいりました。こちらで寝ます、おやすみなさい」と言うしか無かったのである。


「おやすみなさい」、クララさんのほうも準備は整った様で寝るところであった。


……


 朝は、クララさんのほうが早かった、いつもの起きる時間が違うのである。

 なので、朝シャンが被らなくて済んだともいう。


 私が、目を覚まし上体じょうたいを起こすいつもと部屋の感覚が違う、昨日きのう騒動そうどうを思い出し病院で寝ていることを再確認した。


 ベッドの上に、すわると目線がちょうど隊長の腕に行き着いた、手首を取り隊長の脈をチェックする。


 私は、アルケミー・デザイナーでもあるのだ医者の端くれどころか、立派りっぱ最上位さいじょうい医者ドクターである。


 でも、私はまだまだ半人前と思っているのであるので、よく端くれだの半人前だのというができることは通常の医者よりもはるかに多い。


 さらに精霊視せいれいしに切り替える、生命の精霊が脈々と活動している姿が見える。


 残念ながら他の精霊は精神の精霊と光の精霊くらいしか居なかった。


 それもその筈、窓は防弾防ぼうだんぼうレーザーの超強化ガラスで開くことは無いめ切った部屋ではあったからであったが。


 精神の精霊が、少し弱ってはいるが活動している姿をとらえられた。


 怒りの精霊や、勇者に付くと呼ばれるバルキリーの姿は見えなかった。


 私は、純粋じゅんすいなエルフ種なのでそれができるのであった。


 もうヒーリングの必要はない程、生命の精霊は元気であった。


 精霊語を、使い精神の精霊と会話することにした。


 といっても相手はいくばくか年をてはいるがまだ若い精霊である。


 知能指数はいかほどのものかとも思ったが、試さずに精神の精霊に語りかけた。


 『精神の回復に全力を注いであげて』とまだ若い精霊が『貴方あなたの精神力を少し分けてくれ』と対価たいか要求ようきゅうした。


 珍しく弱っているということもあるのだろう、精神の精霊はヒトにもよるが大体は堅物かたぶつなはずなのだが。


『どうすればいい?』と精霊語で聞き直すことにしたのである。


『私は神官ではないから精神力自体を移す魔法を使えない』ともいったのである。


 すると、精霊の方から『ひたいの上に両手をかさねて置いてくれ』と言われたのであった。


 そのとおりに、実行する。


 すると、私の中の精霊力が何かの要因よういんね上がったが私自体がつかれたとかそういう事態じたいではない、クララさんが朝シャンをえて着替えた上でこちらにやって来てこの様子をながめてはいたがえて手は出さなかった。


 精霊が、さらに言った『俺と呼吸こきゅうを合わせてくれと』これは『同調シンクロ』という呪文では無いのだが精霊力を活性化させるときに使用される呼吸法と似ていた。


同調シンクロ』と精霊語で魔法発動のイメージを取る。

 私の周囲と隊長の周囲に、銀色のキラキラした光が同調運動どうちょううんどうしている状態じょうたいになった。


 まり精神の精霊が、ほかのこの部屋にいる精神の精霊に語りかけ力を、少しづつ分けてもらっていることにほかならなかった。


 精霊がおど連動れんどうして隊長の精神も活性化させているのである。



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