第二節:紫色の悪魔

 そしてようやく援軍が到着した、短距離テレポートである。


 マップモードの表示に、ギルドナイツのギルドマーカーが輝いて見えた。


 次々と飛んで来て、総計九機が戦線に加わっていった。


 袋叩きの目に合っている、ブルーアジュールと交代して行った。


 入れ代わり立ち代わりで交代し、袋叩ふくろだたきの目に合っている。


 機体を助けに、行っていたのであった。


 これによりブルーアジュールは、一旦離いったんはなれたところまで後退できた。


 半壊はんかいした味方機を引きずって、戦線離脱していったのである。


 私はというと高射砲を下ろし刀を抜いて、突如目の前に現れた紫色の一機の『悪魔』と熾烈シレツな白兵戦を行っていた。


 雑魚では無くて大物が居るはずだ、というのと狙われたのは誰だという二点から考え導き出した答えがこれである。



 ミヒャイルもそこそこ装甲上面に傷は出来上がっていたが、致命傷では無かった。



 狙われたのは、アスカ嬢だ! 直感を覚え、ガードに入っていたのである。


 有象無象の敵の塊の中から、瞬間転移した奴を二番隊隊長のジーンが発見し「色違いが居る! 紫色の奴が……」といった時にはすでに瞬間転移していた。


 という訳で私とその紫色の間で、壮絶な白兵戦となった訳である。


 三番隊は真後ろではあったが、そこを守備しなければいけないという思いと前に居るヤツらを一匹でも入れたら終る。


 それくらいは、分かっていた。


 なので、私任せになっていたのである。


 これはそしられようとも、仕方が無かった。



 私が、残像を仕かけるが、相手はそれに乗ってこない、


 かと言うと分身の応酬おうしゅうで、ミヒャイルに傷がついて行くのである。


 ミヒャイルは標準級標準型装甲機なのと内装装甲がチューンナップしてあり、内装装甲の耐久力が元々高いのがあってこれにらいついていた。


 とはいってもほぼ、剣の剣線は五分五分ごぶごぶであり、戦術の違いで、わずかに私が優位に立っている。


 それだけのことである。



 地の利で勝っているだけ、ではあったのだ。



 分身ついでに大型の高射砲を身代りに、四分身しVC(真空切り)ヴァキュームカットを放った。


 それには紫色の悪魔もおどろいたようで、後退せざるを得なかった。


 そのスキを、私は見逃みのがさなかった。


 貫通技かんつうわざは、放てない。


 かといって紫色のアレは、ほって置くワケには行かない。


 地の利を、利用することにした。


 烈破波レッパハを使用したのであった。


 ほぼ体当たりに近いこの技は受けづらいこと、でも有名であった。


 といってもこの烈破波は、踏台ふみだいにするつもりだった。


 紫色にとっては避けようにも左側は壁、右側にも高射砲が飛んで来ている。


 そして前方には飛び込んでくる敵機、それに背面には六機の重MM(敵機)と成れば悪魔大将の答えは上に逃げるしか選択肢せんたくしがなかったのである。


 つまり一瞬飛行してしまえば問題ないと言うことで、瞬間に翼を広げ、跳躍したのである。


 私はコレを狙っていたのである。


 上向きならばコレを、放っても大丈夫だ。


 私の中に確信がある技が、あったのである。


 その技は相手に気付かれることが無い、であろうことも……計算の上である。


 そして気配の無いこの技には、相手は避けられないということも確信していたのであった。


 それにカケタともいう。



 飛び込んでいった先で、機体をひねり真上に方向転換する。


 真上を、向きながら、相手の背後を、捉えることに成功する。


 足にある可動式アイゼン四本と、地面を使って無理やり急制動きゅうせいどうさせながらコレを上向きで放つことにしたのである。


 ミヒャイルが、魔導機だからできた技である。


『次元斬』を放つコレには、敵大将もスパッと次元ごと縦に斬れた。


 この技の唯一の欠点は手ごたえがないこと、では有ったが。


 敵大将が崩壊ほうかいしていくのが見えたため、技が決まったということが分かったのである。


 流石に大将首を取られてしまったという、大将の反応消失したのに気付いた奴らが急ぎ逃げを打とうとする。


 がしかし、九機の援軍に回り込まれてしまう。


 当然一番隊が、固定されている紫色のゲートを粉砕しているところである。


 その背後には、二番隊六機が構えている。



 対象は十機居たが優劣ゆうれつはついた。


 が、悪魔である。


 捕らえてもどうしようもないので、その場でケリをつけるしか無く十五対十の最終戦闘ファイナルコンバットが開始された。



 ゲート側は固定されてしまうと、思った以上に硬いらしい。


 中々崩壊しないのに苛立ちを覚えた、ダイヤが高射砲を展開して魔導光弾を全弾十五発をゲートにぶっ放すことで崩壊に追い込んだのである。




 十五対十の戦闘のほうもケリがついたようで敵対象エネミーがぼろぼろと崩れて行った。


「ありゃぁいったい、何だったんだ?」とダイヤが、よく分らないなといったふうに呟いたのであった。


「隊長御無事ですか」とレオン機が振りむいて、隊長機ミヒャイルの惨状を見ながらいった。


 全身傷だらけで仰向けになっている上に、地面に半分ほどめり込んでいるのだ。


 そういわれても、仕方が無かったのである。



「大丈夫だ……」と私は現状をチェックしてから、答えたのである。


「手を、貸してもらえないか……半分以上、地面にめり込んでてな、起き上がれないんだ」とレオンに声をかけた。


「お助けできなくて、申し訳ありません」とレオン機が、ミヒャイルを起こしていく。


「そりゃ抜かれたら、もっとひどいことになっとるはずだからの。久しぶりに見たな……のう隊長」と、ジーンは呟いたのである。


「久しぶりに、見ましたね『悪魔』を」とジーンに切り返したのであった。


 九機の援軍側エングンガワに向かって、起き上がったミヒャイルで一礼する。


「遠いところすまなかったよくけつけて来てくれた」と私が援軍にありがとうといった言葉をかけた。


 九機の援軍はかしこまっていた。


「救援が遅れて申し訳ありません」と代表で、オライオン・セグダが謝った。


「アスカ嬢ちゃんは無事か……」とジーンが呟いた。


「アスカ大丈夫か……」と、固有通信で声をかけた。


「はい、無事です」と支部隊通信に、返答を載せて答えたのである。


 まだM・Mの中に、居る様であった。


 アラワシⅡの大太刀を、戻して固定する。


 そして五番のポートに、機体を預けた。


「はふう」と大きくため息というか、なんともいえない。


 大きく息をついた。



 支部隊隊長機ミヒャイルが戻ってきた。


 全身傷だらけで、背面もかなり損傷そんしょうが激しい上、足もかかと付近に甚大じんだいな被害を出していた。


「クララ、オートで一番ポートに機体を預けられるか?」と私はクララに聞いた。


「マニュアルで、どうぞ」とコンソールで被害状況ひがいじょうきょうを調べながらクララが言った。


「分かった、そこまで被害が大きいか。マニュアルで収めよう」


 マニュアルで静かに一番ポートに、戻して行くことにした。


「これで、少し治まってくれればな……と出現法則が、よく分らないんだ」という。


 法則性さえつかめれば、対処は楽になるのになと思っていたのである。


「コクピットフルオープン」と私はクララに指示した。


 クララ嬢がコクピットハッチをフルオープンにしていくのである。


 次に二番隊、三番隊、一番隊の順で戻って行くのであった。


 最後に、九機の援軍が入ってきた。


 FPTフローティング・パワー・トロリー連れで入って来ていた。


 各部隊の中隊長の、指示通りに分散して各ポート着いていったのである。



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