第三章 高位の魔物と隊長危機一髪

第一節:悪魔の転移門

 雨が、降りそうな雲行きに、なっていたのである。


 乾季の雨は短時間に激しく降ることが知られており、足元が一瞬で泥沼になるのだ。


 転倒を避けるべく機体の足回り設定を、皆で再変更セッティングしていた時のことである。



 ゴロゴロと、いい音がして、避雷針に雷の落ちる音と、空雷が鳴り響いていたのである。



「あの雲、少し違う」最初に気づいたのはアスカ嬢だった。


 外に居て調整の続きをしていたということもあったが、雨が降りだしたのでゲートから中に入ろうとしている時であった。


 バックカメラに映った雲の色が、ただならぬ'赤紫色’なのと凄く嫌な予感を同時に感じ取りステップして振り返りながら周囲に機体の居ないのを確認して大太刀を横抜きしたのである。



 構えたのは外に向けたことから、外に何か居るというのが周囲には伝わった。


 私も嫌な感覚を読み取ったので、クララ嬢に即スクランブルを命じた。


 以前にもこの感覚は今まで五回度程あり、知っているのだ。


 悪い予感では、あるのだったが。


 体が震えだしていたが、心は冷静だった。


 そして傍に有った銘付きの刀を、手に取ると。


 機体を、前進させた。



“ヴゥゥゥゥゥゥー! ヴゥゥゥゥゥゥー! ヴゥゥゥゥゥゥー!”



 ギルドゲートにスクランブルコールが、鳴り響いたのである。


 ギルド特有のスクランブルでは有ったが、そのままシティーのほう(州知事府側)にも外の映像を拾って繋げてもらうことにしたのである。


 一番隊が即出撃の用意を始めたが、紫色の転移門トランスファーゲートのほうが早くギルドゲートを閉める前に取りつかれてしまった。


 異形の物に、である。


(ここでいう異形のものとは、ただの『大型の魔物』ではなく大型だがヒト型をしていて知能が高く狡猾な魔物。『悪魔』の事である)。


 さすがにパートナー無しでは厳しいと思ったのかアラワシⅡが三歩後ろに下がり、壁際かべぎわで守備の構えを取った。


 その間に私がミヒャイルで分身をかけじ開けようとしている悪魔に分身体Bで飛び蹴りをかまし、本体で蹴り払った。


「これでも喰らえっ」すでに通常のM・Mでの、芸当ではない。


 しかも分身を同時に四分身まで行っており、その分身体Bで上空から降って来た悪魔を真っ二つに一体切り上げ斬り裂いた。


 他にも悪魔が出すテレポートゲートが、低い位置に複数現れていたので脈動上昇点で分身をかけている。

 分身体CとDでそのまま紫色のゲートごと、出現しようとしていた二匹の悪魔を横凪に水平斬りして二つのゲートごと斬り封鎖する。


 最初に現れた紫色のトランスファーゲートから、十数体悪魔が現れていた。


 分身が邪魔しょうがいぶつになると踏んで、私が分身を閉じる。


 その間に一番隊がゲートから出て、悪魔どもに斬り込んでいく。


 ミヒャイル自機を壁まで後退させ、アラワシⅡアスカ嬢の隣に並ぶと垂直方向に現れているトランスファーゲートの個数をクララ嬢に数えさせた。


 それと同時に座標を、キープしてもらっていった。


 その間に私は背中の展開式高射砲を取外とりはずして、手持ちに切り替え展開状態にしていったのである。


 一番隊は現在六機で、まだ増援が来る時間では無い。


 そのため三機少なく悪魔に囲まれてしまっていて、輪形陣りんけいじんを取っていた。


 ブルーアジュール準騎士団に、応援要請が出る。


 スクランブル待機していた十機が、全速で南側ギルドゲートに突っ込んでくる。


 十機のMMが走る――


“ズゴゴゴゴ……”


 という地響きにも近い音が、近づいて来ていた。


 増援だった。


 ただしブルーアジュールは悪魔との戦いは、初めてのはずであった。


 場数を踏んでる私でも、五回しか戦ったことの無い相手だ。


 最初の紫色のトランスファーゲートは、固定されてしまっている様だ。


 次から次へと沸いてくる敵に囲まれ、一番隊はすでに見えなくなっていた。



 上空のまだ固定されていない紫色のトランスファーゲートをミヒャイルの持つ高射砲で、落としにかかる。


 トランスファーゲートというのはメイジから聞いたことがあるが、ここと違う場所を繋ぐ扉なのだと。


 そのため現れた瞬間はかなり不安定なモノである、といっていたのを思い出していたのであった。


 その言葉を信じて魔導光弾を高射砲に叩き込んで、上空のゲートを潰し始めたのである。


 一発目で固定されていないと思われるゲートを、撃ち抜く。


 すると悪魔の紫色のトランスファーゲートは、歪んで空間から消失した。


 これはいけると思い次々と紫色のトランスファーゲートを、撃ち落として行ったのである。


 ブルーアジュール側でも交戦が、始まった様だった地響きにも近い音が止まり金属音が響いていた。


 剣で何か異質な硬質のものを、叩く音が響い来ていたのであった。



“ゴン! ガン! ゲン!”



 二番隊も出る! といってジーンたちが出撃して行った。


 ギルドゲート側に、『悪魔』を寄せない為である。


 ギルドゲート内の戦力は現在高射砲展開中の私しかいないので、入られると橋頭保きょうとうほきずかれる恐れが十分にあった。



 私がギルドサインをかなり上空に打ち上げ展開てんかいし始めた。


我交戦中ワレコウセンチュウ! 近場に居る、ギルドナイツの部隊は、急がれたし。”のレッドシグナルである。


 紅ではなく、緊急時用の、赤一番レッドシグナルであった。


 高射砲の弾が切れた。


 流石十五発も打つと、弾薬が無くなる様であった。


 しかしシティー上空に展開されかけていた、悪魔側の紫色のトランスファーゲートはほぼ消失していた。


 がまだ地上では、数の上で不利だ。


 少しだけ思考する、何が原因だ!


 そして何が狙われた……と不意に隣にいるにアスカ嬢の顔がよぎったまさか! と思い「アスカ! 格納庫内へ入れ!」とアラワシⅡを格納庫内かくのうこないに、かくまいながらいった「なるべくなら私から離れるんじゃないぞ」と。



 スクランブルコールは、寝たばかりの三番隊にもかかっていた。


 即飛び起きスクランブルの状態を知り、三番隊も戦線に加わっていった。


 これでギルド機十八機+ブルーアジュール機十機+ミヒャイルである。


 しかし被害が、出始めていた。


 ギルド側ではなく、準騎士団ブルーアジュール側にである。


 戦いの経験則けいけんそくが効かない相手であるということが、ひびいていた様だった。


 ギルドの部隊は元々輪形陣に、慣れているので被害は無かった。


 一番隊はもう相当の数を斬り倒していた。


 屍は即ボロボロとチリになり、数を数えてられないかった。


 そのため、アイモードカメラ確認における斬り倒した機数判定に入っていた。


 ブルーアジュール側には、すでに四機被害が出ていた。


 半数がヤラレていたのだ。


 ギルド二番隊は遊撃部隊であり、ブルーアジュールを側面援護していたが「こちら二番隊、ブルーアジュールに四機目の被害が出た」と二番隊隊長ジーンの声が通信に響いた。



 すでに一番機から四番機までが、転がされ袋叩きの目に合っていた。



 ギルドゲート側は六機の第三番隊によってシッカリとガードされては居たが、逆に動けないでいた。


 そこから動くと突破されてしまうのである。


「こちら三番隊ここから動けない、早く応援を!!」とレオンが、叫んでいた。



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