第二節:修業期間延長

「本当は、彼女にも発表儀礼は受けさせたかったんだがね。ウチの部隊でパートナーを連れていないのは、コマチだけなんだよ」


「あとはアスカ、君くらいだ。君の腕について来れるパートナーが、何人いるか見ものだね」



「今年はグランシスディア・ゼロで発表儀礼だろう、ディシマイカル侯爵の最新EvNRも発表されると聞く。コマチと一緒に発表儀礼に出て見ないかアスカ?

他国での開催だからといって、控えているわけでは有るまい」と『データパッド』を見ながら、日取りを確認した。


 公爵御令嬢だから、何かあるのかと思い。


「それか何か出られない訳でも、あるのかい?」と私は、注意深く聞いた。



「本当は、自分で創る気でした」とアスカ嬢が下を向いていった。


(自分で創ったとしても、自分になびくわけでは無いのだが……)


「でも、気持ちなのかもしれませんね。今年の開催は六月でしたよね、あと二ヵ月半修行期間を延長させてもらって、いいですか?」とアスカ嬢が聞いてきた。


 それに対し、

「分かった、承ろう」と承諾の言葉を唱える。


『データパッド』を開き、アスカ・アラ・ニス嬢の修業期間延長えんちょうとする指示書を、展開した。


 そして、その下に二ヵ月半追加と書き、自らまずサインを書く。


 作業用ガイドに上り帰ってきたアスカ嬢に『データパッド』を渡し、期間延長のサインを頼んだ。


「分かりました、よろしくお願いします」と答えてサインが記入された。



 そして、ギルドへの超光速転送網に乗せた、当然ギルドに直ぐ届く。



 ギルドでは、少々困惑の意もあったが、

「おおむね、好調の様ではないかぇ」とヨナ様(ギルドの最高権力者:つまり現在のギルディアスの長)、が話に割り込んできた。


 これに、ビビったのが担当技官たちである。



「ヨナ様自ら、いらっしゃられた」とビビる担当技官。


「メカニックの数を、動員する件も併せて了承しますか?」と聞く技官。


「しておやり、なるべく腕の立つものを送っておやり」としゃべるヨナ様がいた。



「ヨナ様、直々のお達しだー、直ぐに連絡に回わせ、我こそはと思うモノは集えと五十人単位で集め、送るのだ」


「そして、後続の九機も忘れるでないぞ!」という会話がなされていたのであった。


 最高権力者という肩書かたがきがそれをなしたのである。


 ということはギルド内でしか知られてはいなかったが。


「これは、勅使ちょくしである」という案件に、発達して行ったのであった。



「人数は、集まりそうだな。それに君の期間延長の話の承認も、通った様だよ」


 そういって『データパッド』に表示させてアスカ嬢に見せた。


「意外と、早いものなんですね」


「これは、多分だが、上層部の誰かの承認があったんだと思う。で無ければ、お蔵入り案件だったろうに」事実今まで、黙殺されてきたのだからとも思った。


「大方、ヨナ様、じゃないかな。今回は、こちらの動向は気にされていた様だし。三機まで、減少し、一人当たりの負荷フカが増大しているのは、目に見えていたからね」と付け加える。


 ヨナ様に、取り入ることができた、ということかとも思った。


 がえて平静へいせいを、たもつことにする。


 そう言って、『データパッド』に集って、振り分けられている、人材の名前を見ることにした。


 『データパッド』をじっくり見ていると。


「何を真剣に見られているのですか隊長は」とアスカ嬢がこちらの手元の『データパッド』をじーっと見つめて来た。


「人材の中に気になる名前が居てね」、と答え人物データを再度確認するメカニックではなく、デザイナーの名前が散見さんけんされたからである。


「八名も来るのか……」と私がつぶやいた。


 デザイナーが、戦闘状態の様だ、と思ったくらいである。


 アスカ嬢のほうからの質問ではあった、「どなたが要注意人物なのですか」と「要注意ではあるが、デザイナーがメカニックに混じって入っていてね、それも八名」と答えるにとどめた。


「ヨナ様は、ここが戦場せんじょうになることを想定そうていされているらしい」とそこまでする、ということは何かあるのか? と私は思った。


 それを、表情にはなるべく出さない様にいった。


 心配させてしまっては、元も子もないからである。


「一チームは七名で、八チームになるなメインメカニック一名とサブメカニックが四名、チーフデザイナー一名それと主計官一名ずつってところか」と私はすごいチームだ今までの塩対応しおたいおうに比べれば、天と地の差だとも思った。


 さすが、ヨナ様である。


「すでに、五十六人でチームが、組まれてしまったらしい。そして機材も一緒に来るらしい。SL-FPTでの、ご到着になるらしいな」とつぶやいた。


「提督はと、『金の提督』か」と続ける。


「私も、もう有名人の仲間入りか、ぞっとしないね」といって、下を確認し誰も来てないのも確認してから、地上へとするするM・Mを伝って降りて行った。


 降りていくと「部隊分け完了いたしました、ご確認を」と三交代制のチーム分けが確立したらしかった、『データパッド』にデータをもらって確認していく、副長ダイヤと元支部隊隊長ジーンも、含まれていた。


 コマチは療養中りょうようちゅうのサインが付けられている、ので予備兵よびへいと、登録されているのを確認した。


 指令小隊枠は、隊長機一機とアラワシ一機になっている、追加で来る補充兵にも割り当てが決まっていた、割り当てが決まっていないのは療養中りょうようちゅうのコマチ嬢くらいであった。


 全機数二十一機で、一応部隊分けは、指令小隊の二機を除けば、一番隊から三番隊までで六機三交代制という形を取っていた。


 アスカ嬢の配置を確認する、支部隊隊長付き秘書(仮)ひしょ(カリ)という古い肩書になっていた。


 まぁソレで納得がいかなければ私のところに直接来るだろうと思いえてそのままにする。


 全部確認してサインを付け、副長ダイヤと元支部隊隊長ジーンに送る。


 あと秘書の、アスカ嬢にも送っておいた。


 新人だが、腕のあるパイロットが三番隊の隊長に推薦決定すいせんけっていされていたので、会うことにする。


 直接話さなければ、分からないことも多いからである。



 一番隊は副長のダイヤだし、二番隊は古参のジーンが指揮をとることになっているから話さなくても分かるからである。


 大体部隊の組み方も、分かってはいるからである。


 アスカ嬢が、私のほうへ走ってくる。抗議では無く、質問だった。


「秘書とは何ですか?」というものだった。


「秘書とは、それは今も、使われているんだが、秘書の仕事の一つは、上司が効率よく仕事を進められるように、部隊内外の会議や会合のスケジュール管理を行うことや、予定が変更になったときは、重要度と緊急度を考慮してスケジュールを組み直したり。また、出張時に利用する公共交通機関や宿泊施設の予約も秘書の業務かな。他にもあるが」という。


 すると「まぁ良いですけどもね」との答えだった。


「今から三番隊の隊長に会いに行くんだが、来るかい?」といって誘う。


是非ぜひに」といって付いて来た。


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