第三節:見舞い

 そこで、唐突とうとつにコマチの名が出た。


「コマチ・アラ・ニスの居場所を、ご存じでしたらお教え願いたく」と、いったのであった。


「どうしてコマチの名を?」と、聞いたのだった。


 なぜ、コマチの名だけが出たのか、不信ふしんに思っていたからである。



 すると、「コマチ・アラ・ニスは我が従姉妹いとこ遠縁とおえんではありますが見舞いにまいった次第しだいです、そのついでにコンボイの護衛ごえいを……、名の乗り遅れました『アスカ・アラ・ニス』と申します」と、リンとしたはっきりとした声でいったのだった。



「わかった、付いて来てくれ。私はここの、ギルドナイツ支部隊隊長をしている。


「『アスカ・ジークレフ』と言う者だ」と自己紹介しながら、ヒト専用のエレベーターのほうに、歩いて行ったのであった。



 名前が、俺と同じ『アスカ』なんだな。


 と思った、重要なことではあったが、気にしないことにした。



 アスカ嬢が後ろを付いて来る。



 太刀袋と花束を持っていた。


 目聡めざとく、見つけてしまうのだが、えて対応は変えないことにした。


(公爵家か……と考えながら)



 ハイスピードサーフェーストランスポート[HSST]に、乗って都市病院前にたどり着く、彼女の分も一緒に払って置いた。


 六駅ほど、かかったがそんなに高くは無いのである。


 それを、さっとマネークレップで払ったのであった。


 その時、ダイヤから連絡が入った。


「残りの、レードランはレーダー圏外へ逃げ出しましたぜ!」と、いうことだった。


「わかった、連絡ありがとう。病院に入るので通信封鎖に入る」と、だけ伝えて無線を封鎖した。



「良いのですか?」と、後ろから声がした。


「まだ、交代の時間には、離れているので大丈夫だ」と、振り向かずに前を向きながら答えた。


 病院の、受付カウンターにギルド証プラチナIDと袖の隊長線の三本の赤ラインを提示した。


 そして、「見舞いに行っていいかな」と伝える。



 このグランシスディア世界は、ID完全管理の世界なのだ、例外もあるがそれは、そのうちに語らせていただくとする。


 そのID表というものは生まれたその時に、製作されてしまうカードであり。


 DNA情報や、他の個人管理や確認ができる、情報を持っているのである。


 そのため取り替え子などは発生せず、更新されていく情報などもあるが、個別管理できる。


 DNA情報等には更新できないものが多く、不正には使用できないことになっているのだ。


 そして、主に国の社会的な身分保障の制度に適応使用される。



 因みに先に『ギルド証プラチナID』というのを受付で見せたが、これはまた別物で国が作ったID表を、ギルドに所属する際に渡して管理してもらう。


 その代わりに、それを基に新たにギルド内及び国際的に使用できるギルドID証として再作成されるカードである。


 ID表よりもセキュリティーが高く、尚かつ複数のステータスランクが存在している。


 年会費を支払うことで、支払った年会費に応じてギルディアス本国内や駐屯地ギルド加盟店などで受けられるサービスが異なるものとなっている。


 一種のステータスID証に、なっているのだ。


 その代わりそのステータスに応じ色々な権限も発生するようになっている。


(ギルドに加盟している店では、マネークレップギルド銀行から引落しの代わりに、することもできる優れものなのである)



「分りましたご案内します」との回答を得た。


 受付のお嬢さんの後ろで待機していた、新人さんと思われる受付見習いさんに、「やってみてみてね」と伝える。その後、我々を病室前まで案内をしてくれたのである。


 そして、「どうぞごゆっくり」といって、受付に戻って行ったのであった。



 軽く、ドアをノックをする、


“コンコン”と。


「アスカだが、入ってもいいかな」と聞くと、


「大丈夫ですよ」と部屋の主、コマチ嬢から答えが返ってきた。


 ドアを開けながら「今日はお客さん付きだ」といって、入っていく。


 アスカ嬢も後ろに付き従うのであった。



 鞘袋には多分、太刀が入っているのであろう。


 そして鞘袋の紋章に見覚えがあったので、公爵家かと判断できたわけではあった。



「大丈夫でしたか? コマチ……」と、アスカ嬢が話始めた。


「アスカ! 何でここに、国元は良いの!?」と逆に、びっくりした様子で尋ねるコマチ嬢が居た。



 そんな、やり取りを見て。


「元気そうだな、うんうん」と、うなずいた。


「隊長が、呼んだんでは無いでしょうね?」とコマチ嬢にジト目で、にらまれた。


「そんなことは無い、むしろこちらがおどろいたくらいだ」と、答えを返した。


 そして、先の戦闘のことを話す。


 すると、余計に心配そうにコマチ嬢は、「大丈夫だった」と、急にお姉さんになった。


「確かに、見かけは私のほうが若いですが」といい出すアスカ嬢。


「ストーップ! 歳の話はそこまで」と、さえぎって、


「何はともあれ、無事でよかった」と、アスカ嬢を抱きしめようとしたが、


「抱きしめられない」と、つぶやいたのであった。


 コマチ嬢の怪我は、外傷性の骨折がおもで過負荷が体にかかったせいでも合った。今は、各関節を固定し療養中なのである。



 マジック・マシンからの、フィードバックを体が受けてしまい。


 関節を、骨折してしまったのである。


「無理はするなよ……?」


 とはいったが、それ以降は言葉をのんだ。


 それ以上、治療に長くかかってもらっても困るんだ。


 ここには、四人しか居ないんだから……と思ったのであった。



「枯れる前に、その花を活けて来るよ。」と、アスカ嬢の持っていた花束はなたばを受け取ると花瓶かびん片手に、いったん部屋の外へ出る。



 積もる話も、あることだからと思い、通信可能エリアに出て無線封鎖を解除した。


 無線ランプが、生き返ったのを確認したのか、ダイヤから声がかかる。


「隊長だけズリーですぜ」花瓶に、水を入れて、花束をそろえて入れながら綺麗に飾りながら答えを返した。


「コマチの、従姉妹らしいな」と、

「なんですって……、そんなに優秀な人材なら是非うちに欲しい所ですが?」とダイヤは愚痴っぽくなったのだった。



それに、きり返すように答えた。


「冒険者ギルド所属で、公爵家のご令嬢様をウチで預かるって? 勘弁かんべんしてくれ……」と、事実をいったのだった。


「公爵家……」と、愕然がくぜんとする。


 ダイヤの悲しみの混じった声が帰ってきたのであった。




第四節へ

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