暗黒滅殺術ですわ♪

エルフの女性が構えると、光の弓矢が顕現した!


「へぇ?魔力で作った弓矢って所かしら?」

「ええ、この技はエルフでも限られた者しか使えない秘技よ!この技のメリット………お分かり?」


不敵な笑みで挑発してくる。シオンも相手に敬意を払い、【少し】本気を出そうと思った。


「いくわよ!」


光の矢が飛んできた!そのスピードは木の矢とは比べ物にならない!

しかしシオンは手刃で払い退ける。だが、次々と光の矢が絶え間なく飛んできたのだ。


「やっぱり矢の弾数を気にせず撃てるのは大きなアドバンテージね!」


流石のシオンも捌き切れず、身体を使って避けるようになった!


「そこっ!!!!!」


シオンの足元に連続して矢を放った!


!?


シオンはとっさに飛び上がり避けるが─


「空中では身動き取れないでしょう!『流星の矢』!!!」


1つ放たれた光の矢が何十の矢に増え、シオンに襲い掛かった!


ドスッ!ドスッ!

ドスッ!ドスッ!


幾つもの光の矢がシオンを貫き、後ろへ吹き飛ばした!


地面をバウンドしながら転がるシオン!


「はぁはぁ………やったわ!ってか、殺っちゃった!?」


エルフの女性も殺す気は無かったのだ。慌てて駆け寄ろうとしたが、すぐに足を止めた。


ゴゴゴゴッ!!!!!


倒れたシオンを中心に膨大な魔力の高まりが発生したからだ。


「ふふふっ、久し振りね。この技を使うのは………」


エルフの女性も圧倒的な魔力の高鳴りを、ビリビリと肌で感じて、冷や汗を流した。


「それが貴女の本気なの?虐殺姫………」


ゆっくりと立ち上がったシオンは埃を払うと、魔の大樹海に来て【初めて】武道の構えを取った。


「少しだけ本気で遊んであげる。楽しませてね?この私がせっかく【暗黒滅殺術】を使うのですから」


シオンは格闘術を扱う服装ではない。漆黒の丈の短いドレスを着ている。動きが阻害されると思われる服装だ。シオンは上半身は正拳付きの構えだが、下半身は膝を曲げ低い体勢を取っていた。


エルフの女性は全ての力を出さないと殺されると直感で感じ、魔力を全開にし身体強化を最大限に上げた。無論、どんどん魔力が減っていく。


「いくわよ!」


シュッン!!!


シオンが消えた!?


それはもう条件反射であった。エルフの女性はその場から飛び退くと、その場の地面が大きく抉れた!


「くっ!?『流星の矢』!!!」


シオンに数多の光の矢を浴びせるが……


「魅せてあげる♪暗黒滅殺術【壱の型】『滅殺魔弾』!!!」


数多の光の矢に合わせて、シオンの放った漆黒の魔弾がぶるかると光の矢は消滅した。


「なっ!あれだけの矢を全て………!?」


驚くエルフの女性をよそに、シオンは拳を脇に構えて力を溜めた。


「驚くのはまだ早いわよ!暗黒滅殺術【弐の型】『虚無の一閃』!!!」


!?


「す、『彗星の矢』!!!」


慌てて迎撃するが、シオンの放った一撃は、エルフの矢を飲み込み、僅かに右に反れて貫通した。


ドドドドドッーーーーーーン!!!!!


後ろを振り替えると、後ろには大砲が通ったように巨大な木々が吹き飛んで【道】が出来ていた。


「は、はははっ…………わかってはいたけれど、次元が違うわね」


エルフの女性は両腕を挙げて降参といった。


「あら?まだ戦えるでしょう?もっと楽しみましょうよ?」

「冗談は止めて下さい。死んでしまいますわ!」


シオンはやっと気が乗って来たところだったので不完全燃焼で少し機嫌が悪かった。


「はぁ~仕方ないですね。それでは話を聞いてくれるのですね?」


「ええ、御無礼致しました。貴女が本当に虐殺姫なのか確認したかったので。私はエルフを束ねる次期女王リーファと申します。お久しぶりですね?」


シオンはようやくあっ!とした顔で手をポンッと叩いた。


「ああっ!やっぱり、昔うちの領地にいたわよね!?」


にっこり微笑むとリーファはシオンに言った。


「あの時は10年前でまだ5歳でしたね。スタンピード(魔物の氾濫)の時にはお世話になりました」

「でも、その後すぐに領内から居なくなったわよね?どうして?」


リーファはうつむきながら話しだした。


「クロスベルジュ領内はまだ亜人達に寛容でとても良い所でした。しかしスタンピードの後、亜人達がスタンピードを引き起こしたという噂が流れ、他の領地の同胞が奴隷にされたりする事例が起こったの。クロスベルジュ領内に呼び寄せようとしたけれど、公爵も他の貴族に妬まれ全ての同胞を助けるのは無理だったのよ」


シオンはワナワナと怒りで震えた。


「だからクロスベルジュ公爵の支援を受けて、同胞達と共にこの大樹海へと移り住んだのよ」


「お父様が………ごめんなさい」

「いいえ、シオンが謝る事はないわ。公爵様には感謝こそすれ、怒ってはいないわ」


リーファはエルフの集落へ案内すると言って他のエルフ達と共に村へと向かった。





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