エルフの森!

ドワーフを完全に傘下に収めたシオンは次なる目標であるエルフの住む森の地帯へと向かう事にした。


「本当にこの子が居てくれて助かったわね」


ワイバーンのシルビアを撫でるシオンに気持ち良さそうに喉を鳴らすシルビアだった。


「ふふふっ、可愛いわ♪じゃっ、行きましょうか!」


シオンはシルビアに乗り、エルフの住まう森へと向かった。今回は特に考えがある訳でもなかったのだけれど、ドワーフからエルフの事を聞いて用意したものがあった。


「さて、これでエルフ達が話を聞いてくれるかしら?」


シオンはそう呟くとエルフの住む森区画へと近付くのだった。


ピキッーーーン!!!


「シルビア!避けなさい!!!」


身体を右側へずらしてシルビアを急旋回させた。すると先ほどまでいた場所に複数の矢が横切った!


「へぇ~やるじゃない?でも殺気で丸わかりよ?」


当然、攻撃を仕掛けて来たのはエルフであった。上空を飛んでいるワイバーンを狙えるのは、風魔法で飛距離を強化したエルフしか考えられないからだ。


シオンはシルビアを操り(誘導)、木々の開けた場所に急降下した。


バッ!?


シルビアから飛び降りたシオンはそれなりの高さから飛び降りたが、綺麗に着地した。そしてシルビアを上空へ飛び立たせて、1度離れさせた。


「いきなりの攻撃とはエルフは礼儀がなってないのね!!!」


大きな声でシオンは叫んだ。気配であちらこちらにエルフが潜んでいるのは分かっていたからだ。


ざわざわ

ざわざわ


「おい、この辺りを荒らしていたワイバーンに人が乗っていたぞ!?」

「ああ、どうなっているんだ?」


コソコソと辺りから囁き声が聞こえる。普通は聞こえない音(声)でも風魔法で聴覚を強化しているシオンには聞こえるのだ。


少しして、1人の女性エルフが姿を現した。


「突然の無礼、申し訳ありません。この辺りを荒らしていた特殊なワイバーンの報告があり、網を張っていました。まさか、狂暴なワイバーンに人が乗っているとは思いませんでした」


口では丁寧にお詫びの言葉を発しているが、目は油断なくシオンを捉えていた。狂暴なワイバーンに乗っていた時点で只者ではないのだから─


「初めまして、間違いは誰にでもあるもの………そのお詫びの言葉で十分ですわ。それよりもご挨拶を、この度国王陛下から大樹海の領主に任命されたシオン・クロスベルジュ【男爵】です!自分の治める領地を視察に来ました」


!?


「ほう………領主にですか?我々を奴隷にしようとして追い出した王国が?」


女エルフは静かに呟いたが、明らかに怒気を含んでいた。


「あら?貴女はどこかで………」

「ならば!その実力を持って証明してみせなさい!!!!」


シオンの言葉を遮り、エルフの女は弓矢を撃ってきた!


「こんなオモチャ………私には通用しないわよ?」


シオンは眉間に飛んできた矢を紙一重で避けた。それはギリギリで避けた訳ではなく、余裕で見切っていた故であった。


「弓使いが姿を現した時点で勝負は着いているわよ。まぁ、壁役の戦士が居れば別だけど……その弓矢が私の視界内にある限り、狙っている場所がわかるわよ」


「流石ですね。狙っている所がわかっても、これだけ近いと避ける事は出来ないのですよ?」


エルフの女性はシオンの強さを垣間見ても、慌てずに狙いを定めていた。


「他の者に手出しはさせません!私に勝てたら話ぐらいは聞いて上げます!」

「あら?エルフはいつから戦闘民族になったのかしら?でも、良いわね!それ♪」


二人にもう言葉は無かった。エルフの女性も先ほどとは違い、殺気と闘気を全開に動き出した!


「これはどうかしら!『彗星の矢』!」


矢に風の魔法を纏わせ、貫通力を高めた矢が放たれる!


「面白い!はあぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」


シオンは拳に闘気を込めて放たれた矢を殴った!


ガギィィィィン!!!!!


大きな岩をも貫通する彗星の矢を拳で粉砕した!?


「っ!?なんてデタラメな!」


適度に距離を取りつつ、牽制の矢を放つ。それを避けながら距離を詰めるシオン!


「さぁ!今度はこちらの番よ!」


脚に魔力を込めて瞬時にエルフに距離を詰め、パンチを放つ!

ほとんど条件反射でシオンの拳を避ける!シオンは止まらず、さらに廻し蹴りを放つ!

これにはエルフの女性も避けられず両手をクロスにしてガードした。


「ぐっ!?」


ザザザッーーーー!!!!!


「やるわね?決まったと思ったのだけど?でも勝負ありね。その壊れた弓では戦えないでしょう?」


エルフの女性も手に持った弓が壊されて居たことに気付いた。


「流石は虐殺姫ね!でも勝負はこれからよ!」


ざわざわ

ざわざわ


エルフの女性の言葉は大きく無かったが、聴覚の優れた森に潜むエルフ達に聞こえて動揺した。


『おい、あれが虐殺姫!?』

『本当なのか?』

『あの容姿だ。ワイバーンにも乗っていたぞ?』


「私の正体に気付いて勝負を挑むなんて面白いわ♪さぁ!とっておきを見せて?」


「言われなくてもっ!」


エルフの女性は壊れた弓を捨て、【何も持っていない両手】で、弓矢を射る構えを取った。



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