世界から追放されて(唐突)異世界に転移したので(期待)チートスキルや魔法(最強)を使いました(ヤバスギw)がバトル要素ない(絶望)のでもう遅い(でしょ)イカン(でしょ)

@yamada030303

第1話

帰りの会が終わればすぐに、陰キャ帰宅部根暗奴こと私わたくしは、挨拶そこそこ、ダッシュで教室飛び出して、放課後部活のよそおいに、着換え始める校舎を尻目に、開いたばかりの校門めがけ、靴を履いたら即去りだ。当然歩道は早歩き。角度は15度、前かがみ。


「陰キャの即去り早歩き」なる諺が、世に広まるのはそろそろだろう。




効果音で言えばシュバシュバ。リュックサックのチェストの部分を、胸の辺りで両手で握り、やはり15度前かがみ。




なぜ急ぐのか?そこに電車があるからだ。今日はチャイムが鳴ってすぐ、即去りシュバシュバ前かがみ。このペースを保てたならば、一つ前のに乗れるのだ。




シュバ、シュバババッ。すると何やら円盤のパッケージが落ちている、のを私は目の端で捉えた。




おそらくそれはアダルトだろう。と推察できたのは私がエロ魔神だから、ではなく、パッケージに裸の女がドンと写っていたからだ。そんな一瞬で分かるものなの?と聞くやつは大抵女であるから言っておく。男って、そういうもんだ、バカ野郎。




でも、そこは陰キャの早歩き。急にブレーキかけられぬ。一歩、二歩、三歩……四歩五歩六本……七歩で止まる。根暗陰キャは七歩で止まる。




心中に、待人ありとわかっていたが、据え膳喰わぬは武士の恥、漢を見せます、いただきます。




では顧みる。円盤は道のど真ん中に落ちていた。よくまあこんな所で、潰れていないんだなぁと感心する。




七歩下がる。歩道橋、ドローン。上から見れば車線と垂直に、アダルトビデオ、そして歩道の私わたくしだ。




セーフティなところから、その遺物をとくと眺めた。パッケージの素材は、青。つまり、ブルーレイってやつだ。




同級生からジジイまで、エロ本拾った思い出は、いつでもいまでも耳にする。でも、まさかのブルーレイだったとは。時代の流れってやつだろうか。




断っておく。社会も知らないシャバ僧が、何が時代と訝るのは当然だろう。しかし、この高校二年生の時分ってやつを、受験の控えた三年時と対比するならば、その立場はモラトリアムに当て嵌まるだから、その社会を見る目と言うものは、劇を楽しむ観客の如く。即ち時代の流れも見えるのだ。    




「どれどれ」とタイトルを読んでみる。しかし遠くだからか、我が1.0の視力を持ってしても、大まかにしか読まれない。


というかタイトルが異常に長い。エリックサティじゃあるまいし。


私の見識が正しければ、このタイトルの長文化というものは、もともとはラノベに始まり、なろうでほとんどあらすじのような説明になって、最近は商品や店の看板にまでその傾向が見られたが、もはやavにまでその風潮が起ころうとは。そのせいで、最も重要な女優のグラビアが、ほとんど端にまで追いやられているこの現象を、いったい誰も不思議に思わないのだろう。


しかし、もはや昨今、あらゆるエロが跋扈する時代、つまり誰もがエロを創造する時代、各々が勝手な性癖を撒き散らす世界では、シチュエーション至上主義が蔓延し、結果、女体間の差は軽微なものと見なされるようになった為だろう、と思われる。






氾濫する文字の濁流から重要そうである単語を捉らまえた。


「幼馴染」「サークルの先輩」「寝取り」――私は舌打ちをした。




観るまでもなくクソである。特に寝取りがクソである。


寝取りというものはまず、主人公と女との関係が丁寧に描写されていなければならない。故に彼らの過去を明らかにしなければならない。しかしそこに問題がある。漫画やゲーム、あるいは小説であれば適当な絵と文を散らすだけで簡単にクリアできるだろう。しかし、AVの性質上、女優には女優の過去があるし、男優には男優の過去がある。しかも倫理的に子役を使えるわけがない。故に幼馴染というシチュエーションが、生きた人間を使うAVにとって、設定だけのものであるのは明らかだ。そのせいで間男がチンポを挿入して「どうだぁタクミ(しかし男と間男とは面識がない方がより好ましい)より気持ちいいだろぉ〜?」と台詞を吐いて優越感に浸る顔も、また女優がチンポ堕ちするシーンにも、白々しさしか感じない。それ単に仕事でセックスしてるだけじゃん。


私が提案する寝取りAVは、寝取られ役はいっさい出ない。女優が人妻を演じるならば、夫がいるのはあきらかである。これを人妻帰納法あるいはネトリのパラドックスと呼ぶ。


余計な柵や経費(男優はスタッフを使うことが多いからこの指摘は当たらないかもしれない)、男優の下手な演技による違和感も生まれない。シチュエーションごとに男の像も変えられる。




しかしネックな点として、視聴者がチンポ堕ちする人妻や腰を振る間男でなく、見えない夫に心境を重ねる恐れがある。そうなると鬱真っ逆さまだ。いや、鬱勃起なるか……?




ともかく、寝取りが流行っているとはいえ、安易に真似をするのはどうだろうか、と私は警鐘を鳴らしたい。




そんなことはさておき、私の右手はすでに、AVの方に伸びていた。「アレ、言ってることと違うじゃん」と貴様らは言うかもしれないが、性欲ってそういうもんだから。まぁ、拾えるものは拾っておこう、そういうことよ。




車道に乗り出してAVを拾った。中身は、ある。どれどれ裏も見てみよう。おや、女優が大股を開いて、汚いアクメを晒してる。




「ハァーッ……まぁ、ミュートにすれば使えるか……」落胆をため息に乗せて、言った。




その時だった。「ビーッビーッ」とクラクションを鳴らしながら、ダンプカーがこちらに突っ込んできた。大きく口を開けた運転手と目があった。クラクションは鳴らしたままだった。音は近づくにつれ高く感ぜられた。これがドップラー効果だ、と感心していると、そのうち、そのうち、それきりだった。

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