第4話

アルド達が急いで奥に向かうと3体の合成人間を見つけた。


アルド「おい!奪った荷物を返せ!」


合成人間「なんだ?お前らは。この荷物は実験に必要な材料なんだよ。これはもう俺達のもんだ。とっとと失せな!」


エイミ「それはあなた達が無理矢理奪ったものでしょ!早く返しなさい!」


合成人間「チッ…うるせぇ奴らだな。おい!お前ら、こいつらをぶちのめすぞ!だが殺すなよ…半殺しにしてその後で散々いたぶってやるからよぉ!」


アルド「来るぞ!みんな!倒して荷物を取り返そう!シャルは後ろに下がっててくれ!」


シャル「分かった!」


~戦闘に入る~


合成人間「くそっ!なんだこいつら…強すぎる…っ!」


バタッ…


合成人間は倒れ、そばには奪った荷物が落ちていた。


アルド「よし!中身も無事みたいだな。後はこの荷物をあの人達に返して薬を貰うだけだな!」


シャル「やったね!アルド!」


エイミ「早く行きましょ!」


アルド達は無事に荷物を作業員の人に返した。


運搬作業員「君達、ありがとう!本当に助かったよ!約束通り薬は君達にあげるよ。ほら、これだ。」


作業員がアルドに薬を渡す。


アルド「困ったときはお互い様だろ。薬ありがとうな。」


エイミ「リィカ、時間は後どれくらい?」


エイミが振り返ってリィカに質問をする。


リィカ「あと25分デス!!」


アルド「よし!…とにかく急ごう!」


アルド達は急いでラトルに向かった。


~火の村ラトル~


アルド達が家に着いた時には残り時間が20分と迫っていた。


タオ「皆さん!薬は手に入りましたか!?」


アルド「もちろんだ!すぐに飲ませよう!」


リィカ「皆さん!あと20分デス!」


部屋に入ると、ロフはほぼ意識が無くなっていた。側ではグレンが水を準備している。


グレン「皆さん…無事でしたか!薬はありますか?」


アルド「これだよ。早く飲ませてやってくれ。」


グレン「はいっ!ありがとうございます。」


グレンが薬を受けとるとロフの身体をそっと起こして薬を飲ませた。


グレン「…兄貴、薬だよ。」


ロフ「……ゲホッ…!うっ…」


タオ「ロフ…!しっかり…!」


アルド「どうだ…?」


緊張状態が続くなか、皆が息を呑んで見つめる。


ロフ「…っ!か、身体が…軽くなっていく…。手足も動く…!」


さっきまで寝たきりの状態で意識も朦朧としていたロフだったが、薬を飲むと顔色も良くなり、薬がちゃんと効いたのが分かる。


グレン「よかった…っ!!兄貴っ!治ったんだよ!」


タオ「ロフ…!これで、私達…幸せに暮らせるのねっ…!」


するとロフがゆっくりと身体を起こす。


ロフ「あぁ…。そうだな。2人とも心配をかけてすまない。……それと、アルドさん達、皆さんがいてくれなかったら、俺はきっと死んでいただろう…グレンもタオも悲しまないで済んだのは君達のおかげだよ。本当にありがとう。」


アルド「よかったな。治って…。」

(でも、時間が来たらグレンが死ぬんだよな…)


グレンの未来をしっているアルドは悲しげな表情を浮かべる。


エイミ「……アルド……。」


エイミもアルドの思いに気付く。


リィカ「ロフさんのバイタル…良好デス。病は完治していマス。」


グレン「じゃあ、俺、ちょっと外の空気吸ってくるわ。」


ロフ「あぁ…。」


グレンが笑顔で部屋を後にする。


アルド(グレン……。)


バタン…。ドアの閉まる音が響く…




グレン「よかった…兄貴もタオも元気になって…。これなら俺も安心していけるな。」

(もうあまり身体も動かない…。)


家から少し離れた場所でグレンは呟いた。


グレンは自分の身体に限界が来ていることに気づく。


???「何が安心していけるって?」


グレン「…っ!!あ、兄貴!?なんでここに…」


ロフ「やっぱり、こんなことだろうと思ったよ。お前、何か隠してるだろ。」


グレン「……はぁ。…兄貴には隠せないな…。…本当は俺の命を代償に時間を巻き戻したんだ。」


ロフ「……なんでだ?」


ロフは落ち着いた様子で静かに聞き返した。


グレン「この事を2人に言ったら、悲しませると思ったんだ…。せっかくタオも兄貴の病気も治ったのに…っ!心配かけると思って…」


ロフに気持ちを打ち明けるとグレンの目から涙がこぼれ落ちた。


ロフ「バカだな…お前は本当に…。何でいつも自分を犠牲にするんだ…っ!お前は昔から自分より人の為に行動するよな…。もっと自分を大切にしてくれよ…」


グレン「兄貴……ごめん…。」

(普段落ち着いてる兄貴がこんなに怒るなんてな…。)


タオ「本当だよっ…!私達が助かってもグレンがいなくなったら意味が無いんだから!」


グレン「…っ!タオ……っ」


振り替えるとタオ、アルド、エイミ、リィカ、サイラス、シャルの全員がグレンの様子を見に来ていた。


アルド「グレン…みんな気付いてたみたいだよ。」


グレン「そうか……。タオも…ごめん。でも俺は後悔なんてしてないよ。俺は2人を亡くしてから色々な罪を犯したんだ。でもアルド達が俺を正しい方向に導いてくれた…。だから、こんな俺の命で大切な2人を救えたならよかった…。」



タオ「待ってよ…グレン!それじゃあ同じじゃない!私達が助かっても、グレンがいなくなっちゃうんじゃ意味がないっ!……」


ロフ「グレン!…」


グレン「だからっ!…2人とも幸せになってくれよ!」


ロフ「……っ!」


ロフの言葉を遮ってグレンは笑顔をみせた。

そして……


カチッ………


時間を巻き戻してから1時間が経過した………。


そして、そのままグレンは静かに倒れた。



~グレンの家~


グレンは安らかな顔でベッドに寝かされている。


リィカ「やっぱり息が……ありまセン。」


ロフ「……。」


アルド「グレン……!」


アルドがグレンを見ながら悲痛の声を出す。


タオ「グレンっ!…返事してよっ!グスッ……お願いっ…」


グレンの眠る横ではタオが泣きながら声をかけ続ける。


エイミ「……。」


エイミもそれを見ながら目を伏せる。


シャル「グレンさん……分かってた…はずなのに。こんなの…悲しすぎるよっ!」


そしてずっと黙っていたロフが口を開いた。


ロフ「…なんでだろうな…悲しいはずなのに涙が出てこない…。きっと…俺がまだ受け入れられないんだな…。俺はどうすればいいんだ…っ」


アルド「ロフ…」


ガチャ


全員「……?」


家のドアが開き、誰かが入ってくる。


???「無事にお二人は助かったようですね。」


アルド「あんたは…!」


シャル「あっ!魔術師さん!」


時を操る魔術師「念のため、私の発動した魔法がしっかり効いたかどうか確かめに来たんですよ。」


ロフ「あなたが…私達の時間を巻き戻したっていう…。」


時を操る魔術師「えぇ。グレンの命を代償に、ね。」


そう言いながら、魔術師はグレンのそばに歩いていき、腰を降ろす。


時を操る魔術師「本来、時を戻す魔法は、人の生命力を魔力に変換して発動するものです。そこまでしないと時を戻すことはできない…。それだけ高度な魔法なんですよ。」


アルド「そうだったんだな…。」


時を操る魔術師「はい。でも…気付いたんです。私は今までたくさん人を救ってきた…つもりだった…。でも、誰かの犠牲の上で人を救っても本当の幸せは掴めないっていうことに、今回のケースを見て確信しました。」


時を操る魔術師はそういうとおもむろに立ち上がりグレンに手をかざす。


ロフ「グレンに…何をするんだ……?」


時を操る魔術師「私は感動したんですよ。あなた達を見て。人を大切に想う…その純粋な心にね。だから、今回は特別です…。」


タオ「グレンを…助けてくれるの?」


タオが涙を流したまま聞く。


時を操る魔術師「はい。うまくいくかどうかは分かりませんが。」


手をかざしたまま魔術師は魔力を込める。

すると、ゆっくりと淡い光がグレンを包み込む…。その光はだんだんと強くなっていく。


時を操る魔術師「……。」


そして光が限界まで明るくなると、その後ゆっくりと消えていった。


時を操る魔術師「……終わりました。」


魔術師はゆっくりとグレンから離れる。


ロフ・タオ「グレンっ!!」


アルド「グレン!起きてくれ!」


皆が必死にグレンに声を掛ける。

すると………


グレン「……うっ……何が…起こったんだ…?俺は…確か、死んだはず……わっ!!」


グレンが目を覚ました瞬間、ロフとタオが勢いよくグレンに近寄る。


タオ「よかったっ!グレン!本当によかった…!グスッ…」


ロフ「本当…心配かけるなよ…」


グレン「え……何で…俺…」


時を操る魔術師「……どうやらうまくいったようですね。」


ロフ「あぁ!本当にありがとう!何てお礼を言っていいか…。」


ロフが笑顔で振り返り魔術師にお礼を言う。


アルド「なぁ、どうやって時間を巻き戻したんだ…?誰かの命を代償にしないと発動出来ないのに。」


アルドが不思議な顔をして魔術師に聞く。


時を操る魔術師「…それはですね、代償を別のもので補ったからです…。」


アルド「別のもの…?」


時を操る魔術師「はい…。ここにいる皆さんの″グレンを救いたい″という気持ちを魔力に変換しました。…強い想いは魔力を発動する原動力になります。」


エイミ「でも、生命力じゃないと魔法を発動できないんじゃなかったの?」


時を操る魔術師「…そうですね。私も内心驚いてますよ。ですから今回は異例のケースだということです。本来、誰かを救いたいという気持ちだけでは到底魔法を発動することは出来ません。ですが、こうして実際に時を戻すことが出来た。それだけ…みなさんの気持ちが強かったということ…。それでは私はこれで失礼しますよ。貴重な経験ができてこちらとしても嬉しかったです。では…またどこかで。」


そう言い残し、魔術師は姿を消した。




ここで場面が変わる。


~火の村ラトル~


アルド「3人とも無事で良かったな!」


グレン「はい!おかげさまで。アルドさん達のおかげです!」


家の前ではグレン、ロフ、タオの3人がアルド達を見送ろうとしていた。


ロフ「また家に遊びに来てください!3人でおもてなししますから。」


タオ「私がとっておきの料理を振る舞いますね!本当にありがとうございました!」


エイミ「ふふっ…それは楽しみね。」


リィカ「お二人の結婚式にも呼んでくだサイ!」


タオ「は、恥ずかしいっ!……でも、絶対来てくださいね!」


タオは恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに微笑む。


ロフ「そういえば結婚式…してなかったな。」


グレン「俺が何か面白い出し物をするよ!」


ロフ「無茶はするなよ?」


そのやり取りを見ながら全員が笑う。


するとシャルが口を開く。


シャル「私、将来の夢は小説家になることなんだ…。いつか私の書いた小説を読んでほしいな!」


グレン「あぁ、もちろんだよ!楽しみにしてるな!」


シャル「うんっ!」


みんなも笑顔で頷く。


サイラス「皆が笑顔になって良かったでござるな!」


アルド「おっ!サイラスやっと元に戻ったのか!」


サイラス「うむ。実はグレンが生き返ったあたりから元に戻っていたでござるが、中々言い出せなかったでござる。」


エイミ「そういえば、後半やけに静かだったものね。」


アルド「じゃあ、またな!」


3人「「「はいっ!」」」


こうしてアルド達はラトルを後にした。


アルド「それじゃあ、シャルを送りにユニガンに向かうか!」


みんなが頷く。




~王都 ユニガン~


シャル「みんな!本当にありがとう!色々あったけど、すごく楽しい冒険だったよ!それでね、今回起きたことを小説に書こうと思うの!」


アルド「それはいい考えだな!もし書けたら俺にも読ませてくれ。」


エイミ「私も楽しみにしてるわ。」


リィカ「サイラスさんのギャグ要素多めでお願いしマス!」


サイラス「なんとっ!拙者はギャグ担当でござったか!」


シャル「あははっ!わかったよ!絶対約束だからね!………それじゃあね~!!」


シャルは笑顔で手を振りながら家に帰っていく。


アルド「あぁ!またな!」


アルド達も笑顔で手を振る。


そしてシャルを笑顔で見届けた後、アルドが口を開く。


アルド「シャルのこともグレン達のことも良かったな!色々と。」


エイミ「そうね。本当に色々あったけど。」


エイミはふぅと息を吐きながら微笑む。


エイミ「それにしても……」


リィカ「どうかしたんデスカ?」


エイミ「なんだかお腹空いたみたい。」


サイラス「確かに言われてみれば……グウギュルル!」


アルド「ハハッすごい音だな!じゃあせっかくユニガンに来たし、何か美味しいものでも食べよう!」


エイミ「それはアルドの奢りなのかしら?」


アルド「えっ…!そうなのか!」


アルドが面を食らった表情で聞き返す。


サイラス「アルドの奢りとあらばたくさん食べられるでござるな!」


アルド「サイラス、高いものはあまりたべるなよ!」


リィカ「では、前にアルドさんが美味しいといっていたお肉料理を食べに行きまショウ!」


アルド「じゃあ、食べに行くか!」



こうしてアルド達はお腹を満たしに酒場に向かって歩きだした。




同時刻……

~未来 マクミナル博物館~


陳列された棚の中にあった一冊の本が光る。


本のタイトル「命を懸ける理由」

作者:シャル

「兄弟の絆と愛、そして仲間との愉快な冒険談が書かれたギャグあり感動ありの大ベストセラー。ぜひあなたも読んでみませんか?」





~終わり~



























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