第3話
アルド「そろそろ夕方になるな…。」
シャル「もう!なんでいないの~!?」
グレン「皆さん…本当にありがとうございました。でも、もう大丈夫です。これ以上、皆さんに迷惑はかけられません。それに…サイラスさんもこんなですし…。」
サイラス「あら♪私は平気よ!それよりも~あなた良い体つきね♪うふっ♡」
グレン「ひっ……!」
アルド「わ、悪いな、グレン。…はぁ。サイラスはいつになったら正常になるんだ……。」
サイラス「あらぁ~、アルドちゃんったら嫉妬?大丈夫よ♪私はアルド一筋だから♡」
エイミ「見てられないわね…。」
エイミが一人ため息をつく。
リィカ「先程よりも女子力の値が爆発的に急上昇してるようデス。このままだと本当に女の子になってしまいマス!」
アルド「女の子っていう感じではないだろ!……あ。そういえば」
エイミ「アルド?どうかしたの?」
アルド「いや、ふと気になったんだけど、グレンがシャルを拐ったとき、時空の穴から出てきただろ?なんでだろうって思ってさ。」
グレン「あぁ…あれは時空の穴っていうのか…。俺がタオに似た女の人を探していたとき、急に青い光りに吸い込まれたんだ。それで気付いたら知らない光景が広がっていて、目の前にタオにそっくりなシャルを見つけて…また光を通じて古代に戻ったんだ。」
エイミ「なるほどね。」
アルド「時空の穴は突然現れたりするからな。」
シャル「それにしても、全然見つからないね…。」
???「おや、何か困り事かな?」
グレン「あ、あんたは?」
???「私はここらで旅をしている者だよ。ただ、君達が困っている様子だったからね。何か力になれないかと思って話しかけてみたんだよ。」
アルド「そっか、ありがとな。実は俺達、時を操ることの出来る魔術師を探してるんだ。」
旅人「ほう…。時を操ることの出来る魔術師か…。もしかしたら、その魔術師と会わせることができるかもしれないな。」
グレン「ほ、本当か!?ぜひ会わせてくれないか!実は俺には大事な兄と幼馴染みがいて、でもその2人は1年前に亡くなった…。だから2人が亡くなる前に時間を戻してほしいんだ。」
旅人「事情は分かった。その前に1つだけ質問をさせてほしいんだ。」
グレン「え、あぁ、もちろんかまわないよ。」
旅人「ありがとう。じゃあ聞かせてくれ………その願いは君の命に変えても叶えたい願いなのか?」
全員「っ……!」
その場にいる全員に衝撃が走った。
グレン「命に変えても…か。…あぁ…もちろんだ!俺一人のの命で2人が生き返るなら…かまわないっ!!」
旅人「そう…ですか。では約束通り会わせてあげましょう。」
グレン「誰もいない…いや…まさか、あんたが…時を操る魔術師なのか…?」
時を操る魔術師「…はい。その通り…私が時を操る魔術師…。話しは聞きました。では、グレン…あなたの命を対価にあなたのお兄さんと幼馴染みのお二人を亡くなる前の時間に戻します…。準備はいいですね?」
アルド「グレン!待ってくれ!きっとまだ何か良い方法があるっ!」
シャル「そうだよっ!グレンさんが居なくなったら2人も悲しむよ…!」
グレン「いいんだ…2人とも。俺はあいつらがいなくなってから、色々な過ちを犯してきたんだ…そんな俺の命で2人を救えるなら、俺はそれでかまわない……魔術師さん、やってくれ…。」
時を操る魔術師「その前に…伝えることが。今から時間を戻すのはお二人の肉体のみ…。また、戻せる時間は一時間です。戻せるのは肉体だけなので、お二人の記憶は亡くなる一時間前までしかありません。時を戻すのには多くの集中力と高い魔力が必要……。それ以上はさすがの私にも出来ません。それと…命を対価にと言いましたが、時を戻した後すぐには死にません。グレンの命が尽きるのは本来2人が亡くなった時間ということになります。」
グレン「もちろん…それでいい。最後にあいつらに会えるならこれ以上に無い幸せだ。」
アルド「グレン…。」
時を操る魔術師「では、いきます。……」
魔術師が手をかざすとグレンの身体から淡い光現れ、その光りは空に吸い寄せられるように消えていった。
時を操る魔術師「……時は戻りました。お二人の所にいってあげてください。」
グレン「魔術師さん、ありがとう!皆も一緒にラトルに来てくれないか…?見届けてほしいんだ。」
アルド「……あぁ、もちろんだよ。」
時を操る魔術師「……。」
アルド達がラトルに向かうのを魔術師は静かに見つめていた。
~火の村ラトル~
グレン「兄貴っ!」
ロフ「ゲホッ…どうした、グレン。そんなに慌てて。それに、この人達は…?」
グレン「あ、この人達は俺の恩人なんだ。それで、兄貴に1つだけお願いがあるんだ。」
ロフ「そうか、皆さん、こんな身体でもてなすことは出来ませんが、ケホッ…どうぞゆっくりしていってください。…それでお願いっていうのは?ゲホッ…ゲホッ…。」
グレン「兄貴……タオに本当のことを言いたい。やっぱり俺には兄貴の代わりなんて出来ない…。それにタオのことも…傷付けたくない!今からタオを呼んでくる。」
ロフ「…そうか…。わかった。」
ロフがそう言うと、グレンはタオを呼びに出ていった。
ロフ「ほんと、変わらないな。ああいう所は。あいつは一度言ったことは絶対に覆さないんだ。ゲホッ…頑固な奴だよ。」
アルド「確かに…俺達もグレンとは出会ったばかりだけど、分かる気がするよ。」
ロフ「ほんとかい…?君達とは話が合う気がするよ。だけど俺はもう長くない…だから君達と語り合うことが出来なくて…ゲホッ…残念だよ。あいつは君達のことを恩人って言ってたけど、弟が本当にお世話になったみたいで感謝するよ。」
サイラス「グレンは本当に素敵な人ね。それにグレンはあなたのことも大切な家族だって言ってたわ。」
ロフ「ふふっ…それは、初耳だな…。後で問い詰めないとな。……!君は…幼いときのタオにそっくりだな…。」
ロフがシャルに気付き目を丸くする。
シャル「それ、グレンさんにも言われました!」
ロフ「本当に似ているよ。」
雑談をしているとグレンがタオを連れて戻ってきた。
グレン「タオ、こっちだ。少し話があるんだ。」
グレンとタオが部屋に入ってくる。
タオ「おじゃまします…。あっ、はじめまして。私、タオといいます。皆さんのことはさっき…ロフから聞きました。恩人だそうですね。今度話を聞かせてください!ってあなた…私の幼いときの顔にそっくり!」
シャル「アハハっ…それ、ロフさんにも言われたんです!」
タオ「そうだったの!なんか不思議な感じね~!あっそうだ!みなさん、よろしくお願いします!」
アルド「あぁ、俺達も君のことを聞いてるよ。よろしくな。」
エイミ「よろしくね。」
タオ「はい!…それで…ロフ、どうかしたの?」
アルド「あ、じゃあ、俺たちは隣の部屋にいるよ。」
エイミ「そうね、行きましょ。」
アルド達が気を利かせて部屋を後にしようとしたとき、
グレン「いや、アルドさん達もここにいてくれ。」
アルド「……分かった。グレンがそう言うならここにいるよ。」
グレン「ありがとう…。」
さっきまでの雰囲気と違い、部屋に緊張感が漂う。
タオ「……それで、話って…?」
グレン「あのな、タオ…実はな…俺はロフじゃなくて…グレンなんだ…。兄貴は今隣の部屋にいる。もうあまり長くはない。本当にすまない!今まで騙していて…。でもどうか許してほしい。」
真面目な顔つきでグレンは深く頭を下げた。
タオ「…え…うそ…でしょ…。」
タオは目を丸くして動揺した。
ロフ「ごめんな……タオ…。」
グレン「兄貴は自分が亡くなった後、タオが一人になっても傷付かないようにって俺に相談してきたんだ。でも、結果タオを傷付けた…。許してくれ。」
タオ「………。なんで、そんな簡単なことに気付かなかったんだろ…。それじゃあ、私はずっとグレンをロフだと思ってたってこと…?バカだな…私。」
ロフ「俺は自分の大事な人を傷付けてしまった…。もう今までのように戻ることは出来ないよな…。」
タオ「……そんなことないっ!」
ロフ・グレン「えっ……」
タオ「確かにショックだったし、未だに思考が追い付いてない…ところはあるけど、気付けなかった私にも問題はあるし…それに、二人が入れ替わったのは私の心配をしてくれてたからでしょ?ありがとう。話してくれて。」
グレン「タオ……。でも、悪いのはタオじゃない!俺が…」
ロフ「俺が悪かった…全部俺が言い出したことなんだから。」
ロフがグレンの言葉を遮る。
グレン「兄貴…」
タオ「……ううん、誰も悪くなんてないよ…。私達…空回りしてたのかもね。」
グレン「そうだな……。それと…2人にはもう1つ伝えたいことがあるんだ。」
ロフ「どうしたんだ?」
グレン「驚くかもしれないけどちゃんと聞いてほしいんだ…。実は…2人は一度死んでいるんだ。」
タオ「…えっ…!?」
ロフ「…死んでいる…?ゲホッ…ゲホッ…どういうことだ?」
グレン「兄貴は病気が悪化して…それで…タオは魔物に襲われて…。俺は突然ひとりぼっちになった。その後…色々あって俺はアルド達に出会って、時を操る魔術師の元を訪れた。そして頼んだんだ。2人を死ぬ前に戻してくれって…。」
タオ「嘘…でしょ…?」
グレン「ほんと、嘘みたいな話だよな…。すぐには信じられないと思うけど…本当のことなんだ。」
ロフ「いや、信じるよ。お前が俺達にそんな嘘をつくはずもないし、ゲホッ…なにしろアルドさん達の顔を見ればそれが冗談じゃないことも分かる。」
アルド「…あぁ。全部本当のことだよ……。」
(やっぱりグレンは自分の命を対価にしたことは言わないんだな…。)
グレン「兄貴…。」
タオ「私も内心すごく驚いてるけど…信じるわ。」
グレン「ありがとう。それと、戻してもらった時間は一時間。一時間後…兄貴は病気が悪化して…死ぬ…。」
タオ「そんな……。せっかく時間を巻き戻したのに。」
ロフ「……そうか…そんな気がしてたよ。時が戻っても病気は治らないからな。ゲホッ…だけど、感謝してる。最後にグレン、タオ、それにアルドさん達と話せたからね。」
アルド「くそ…どうにか治すことは出来ないのか…っ!」
アルドは焦りと悲しみで顔を歪ませる。
エイミ「………。」
タオ「ロフ…いかないでっ!私…どうしたら…っ」
シャル「グスッ……どうして…」
リィカ「ロフさんのバイタル低下…熱、咳、動悸の症状も悪化…残り時間も45分に迫っていマス…。」
一気に部屋は悲しみと焦りに包まれる。
エイミ「…ねぇ、ロフさんの病気の事なんだけど…」
エイミが何かに気付いたように声を出した。
エイミ「症状を見る限りなんだけど、もしかして、ファリス症候群じゃないかしら?」
ロフ「…っ!ゲホッ…よく分かったね。だんだんと身体が動かなくなっていく不治の病だ…。ゲホッ…進行は遅いんだが、もう手足は動かないよ…」
エイミ「やっぱり…その病気、昔はワクチンも無くて不治の病とされていたけど…未来に行けば薬が簡単に手に入るわ!」
グレン「それは本当か!?」
アルド「そうか!未来は医学も進歩してるからな。待っててくれ!すぐに薬を調達してくる!」
タオ「っ…!本当ですか!?…ありがとうございます!皆さん、お願いしてもいいですか…?」
エイミ「もちろんよ。でも、私達には時間が無いわ。大体の薬はエアポートから輸入されているから…エアポートから直接薬をもらいましょ。」
アルド「あぁ…!」
シャル「うんっ!」
リィカ「了解しまシタ!」
サイラス「えぇ、OKよ♪」
アルド「はぁ…サイラスはまだ元に戻らないのか…。」
こうしてアルド達は薬を手に入れるために古代を後にした。
~エルジオン・エアポート~
アルド達がエアポートに向かうと数人の人が困った顔をして話し込んでいた。
アルド「ん…何かあったのか…?」
エイミ「あれは荷物の運搬をしている人達ね。とにかく薬があるか聞いてみましょう!」
アルド「なぁ。あんた達、ファリス症候群っていう病気に効く薬はあるか?俺達時間がなくて今ここで貰いたいんだ。お金なら払うよ。」
運搬作業員「あぁ、それが…困ったことにさっき合成人間に奪われちまったんだっ!他の荷物も全部だ…。」
シャル「そんなっ…!」
エイミ「次から次に…時間が無いのに!」
アルド「仕方ないな…。俺達が取り返してくるから、そしたら薬を分けてくれないか?」
運搬作業員「もちろんだ…!必要な分だけ持っていってくれてかまわないよ。」
アルド「ありがとな。」
リィカ「合成人間はどちらに向かいましたタカ?」
運搬作業員「あいつらはこの奥に向かっていったよ。」
アルド「よし!急ぐぞ!」
アルド達は合成人間が向かった先に走っていく。
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