第2話

アルド達が襲ってきた魔物を一掃する。


双子の弟「く、くそ…!強い…!俺は、もう…終わりだ…こうなったら…俺もあの世に行って…」


すると負けを認めたのか、双子の弟は自らの命を絶とうと落ちていた刃物を手にする。


アルド「やめろっ……!!」


シャル「もうやめてっ!!!これ以上皆を…自分を…傷付けないでっ!!」


アルドの叫びと同時にシャルが叫んだ。

そして、双子の弟に駆け寄り、刃物を取り上げた。


アルド「シャル……!大丈夫か!」


アルドもシャルに駆け寄る。


双子の弟「君は…なぜそこまでするんだ…?俺は君を誘拐してひどいことをしたんだぞ…!なのに…なんで…」


シャル「あはは…確かに…なんでだろう。私にもよく分からないけど…お兄さんに拐われた時から感じてたんだ…。本当はお兄さんもこんなことしたくなかったんじゃないかって…。」


シャルがそっと語りかける。


双子の弟「っ……!」


シャル「ずっと悲しい顔をしていたでしょ?それに…私を拐ったとき小さい声で『ごめんな…』って言ってたの、気付いてない…?私、お兄さんの事情なんて知らないし、いきなり拐われて…正直すごく怖かった。でも、心のなかで後悔してるような…そんな気がしたから…。私でよかったら、話を聞かせてほしいな…?」


アルド「シャル……。」


アルド達はそのやりとりを見守りながら、シャルの優しさに胸を打たれる。

双子の弟もシャルの優しい笑顔に胸を打たれた。


双子の弟「お、俺は…本当はこんなこと…したくなかったんだ…っ!でも、俺の兄貴が病気で死んで…その上タオも事故に遭って死に…俺は一人になりたくなくて…っ!」


アルド「だからタオに顔が似てる女の人を拐ったのか…?」


双子の弟「あぁ…。俺はなんてひどいことを…。」


双子の弟はそう言いながらシャルと、同じく拉致した女の人達に向かって言った。


双子の弟「みなさん…本当に…申し訳ありませんでした…っ!許してくれとは言わないっ…だけどこの事を謝らせてください…!!」


それを見た女性達は顔を見合わせ、頷いた。


拐われた女性達「顔を上げてください…。」


双子の弟「でも俺はひどいことを…」


拐われた女性達「確かに…いきなり襲われて、すごく怖かったし…あなたのことを全部許すつもりはありません…。」


双子の弟「あぁ…。そうだよな…すまなかった…。本当に…」


拐われた女性達「……でも、その子の話を聞いて、本当に後悔をしてるんだなっていうことも伝わりました。あなたにも何か事情があるのなら…私達はまた、あなたに全てのことを責める資格はありません…。だから…自分の犯した過ちに向き合って、しっかり生きることを約束してください…っ!」


双子の弟「っ…!わかった…!本当に…ありがとう…っ!すまなかった…。」


シャル「よかったね…お兄さん!」


双子の弟「あぁ!ありがとう…自分の本心に気付けたのも…全部君のおかげだ。本当にありがとう…。」


シャル「わ、私は何も…!」


シャルは嬉しさを隠すように目を逸らす。


シャル「あと、アルド、エイミ、リィカ、サイラス!助けに来てくれてありがとう!すごく嬉しかったっ!」


アルド「当たり前だろ。無事でよかったな。」


周りの人も顔を綻ばせる。


双子の弟「あぁ…それと…君たちにも謝らなければいけないな…。本当にすまなかった…!」


双子の弟はアルド達に向き合って深々と頭を下げた。


アルド「ハハッ!気にすんなって。」


エイミ「そうね。あなたが自分の過ちに気付いたんならそれで十分でしょ。」


リィカ「ハイ…。私もそう思いマス!」


サイラス「罪を認めないのは簡単でござるが、おぬしはしっかりと認め、謝罪した…それはなかなか出来ないことでござるよ。」


双子の弟「みなさん……。なんとお礼を言ったらいいか…。」


アルド「お礼なんていいよ。それよりも、これ…あんたの日記だろ?塔の入り口付近に落ちてたんだ…返すよ。」


アルドは持っていた日記を双子の弟に返した。


双子の弟「ありがとうございます…。これは確かに…俺の日記…。落としてたのか…。」


サイラス「それで、おぬしの名前は何というでござるか?」


双子の弟「あ、そういえば、名乗っていませんでしたね。俺は…グレンといいます。」


シャル「私はシャル!よろしくね。」


アルド「俺はアルド。で、こっちはエイミでそのとなりがリィカ、そして、グレンの背後にいるのがサイラスだ。」


グレン「わっ!いつの間に後ろに…」


サイラス「よろしくでござる。」


ここでサイラスのドヤ顔。


アルド「なぁ、グレン。よかったら俺達にあんたの悩み、聞かせてくれないか?」


グレン「そんな…そこまでは…申し訳ないです。それに…もう、何もかも遅いんです。」


エイミ「あなたのお兄さんと幼馴染みのタオさんのこと…?」


アルド「あ、あぁ…ごめん。俺達、確認するために日記を見ちゃったんだ。悪いことしたな。」


グレン「いえ、気にしないでください…。それと、さっきのことですが…エイミさんの言う通りです。もう…兄貴とタオは帰って来ないんです。だから…何をしても無駄なんです…」


アルド「……。」


アルドは悲しい表情を浮かべる。


リィカ「……待ってくだサイ!」


リィカが何かに気付いたように声を上げた。


アルド「どうしたんだ?リィカ。」


リィカ「マクミナル博物館で見た″時を操る魔術師″の話が本当ナラ、お二人ガ亡くなる前に時間を巻き戻すことが可能ということになりマス!」


サイラス「なんとっ!その手があったでござるか!」


サイラス、口を大きく開けて驚く。


エイミ「確かに…その方法なら。でも本当にその魔術師がいるかどうか…。」


シャル「探してみようよ!少しでも可能性があるなら…私、グレンさんにも幸せになってほしいもん!」


エイミ「……そうね!」


エイミは一瞬驚いた顔をして、すぐに大きく頷いた。


アルド「あぁ!でもその前に拐われた人達を送り届けてから、未来に行こう!」


拐われた女性達「いえ、私達は大丈夫です!外で兵士さん達が捜索に来ているようなので。そっちに頼みたいと思います。皆さんはやるべきことをやってください!本当にありがとうございました!」


アルド「こちらこそありがとう!そう言ってくれて助かるよ。」


拐われた女性達「「「はい!」」」


アルド「それじゃあ皆!未来に行ってその魔術師を探してみよう!グレン、あんたも来てくれ!」


グレン「はいっ!分かりました…。」


アルド達は未来に向かった。


~曙光都市エルジオン~


アルド「勢いで来たはいいけど…何の手がかりも無いまま探すのは無理があるな。」


エイミ「もう一度博物館に行って、あの本を調べてみる?」


アルド「そうだな。よし、マクミナル博物館に……ってシャル!グレン!」


アルドが振り替えるとシャルとグレンがあちこち動き回っていた。


シャル「わぁ~!すごい!ここが未来なのね!?古代も神秘的で美しかったけど、やっぱり未来は技術が先に進んでるって感じ!?これはいいネタになりそう~!!」


シャルはあちこちを走り回りながら跳び跳ねる。そして、器用にノートにメモしている。


グレン「み、未来なんて初めて来た…。すごい…こ、これは!?この光っているモノはなんだ?古代の技術とは比べ物にならない…」


グレンもまたあちこち動き回っている。


アルド「2人とも…落ち着けって…。」


シャル「はっ!そうだった!てへへ…未来に来たらついテンション上がっちゃって」


グレン「お、俺もだ…。すまない。」


アルド「い、いや…まぁ確かにそれが普通の反応だよな。俺も初めて来たときはそうなったよ…。」


エイミ「もう!とにかく行くわよ!」


~マクミナル博物館~


アルド「確か……あの本はここら辺にあったよな。」


リィカ「見つけましタ!この本デス。」


エイミ「えぇっと…なになに…?」


~本の内容~


「昔、パルシファル王が統治していた時代…対価と引き換えに時を戻すことが出来る魔術師がいた……斯く言うこの私も奴に時を戻してもらった一人だ…。私は宮殿で使用人として働いていた。ある事情でその魔術師に頼ることになった。だが、私はもう長くないだろう…。だから、今分かることだけをここに記す。魔術師は確かにいた────」


アルド「うーん、確かに魔術師はいたみたいだけど…さすがに魔術師がどこにいるのかは書かれていないか…。」


シャル「でも、実際にいるってことは分かったんだし、目撃した人がいないか古代に戻って色々聞いてみようよ!(古代の文化や歴史について色々聞きたかったし♪)」


サイラス「シャル殿、ニヤニヤしてどうしたでござるか?」


シャル「う、ううん!なんでもないよ!さぁ!魔術師を探しにレッツゴー!」


アルド「あ、あぁ。そうだな!記録にあったパルシファル宮殿にいってみるか!」


~パルシファル宮殿~


アルド「よし!魔術師を目撃した人がいないか聞いてみよう!」


おやじ「時を操る魔術師か…それならさっき見たぜ!」


アルド「いきなり情報ゲットだな!」


リィカ「その話は本当デスカ?」


おやじ「あぁ。少し先に行ったところで『俺は時を操る魔術師だ!』とかなんとか叫んでたぞ。」


エイミ「ふーん…なんか胡散臭そうだけど行ってみましょ。」


アルド達が奥に進むとローブを被った魔術師らしき人をを見つける。


アルド「なぁ、あんたが時を操る魔術師なのか?」


時を操る魔術師?「間違いないっ!この俺が時を操る魔術師だっ!さぁ!この俺を必要としてるのは誰かな~!?」


グレン「俺だ…。俺には兄と幼馴染みがいるんだが…その2人はもういないんだ。だからその2人が亡くなる前に時間を戻してほしい。」


時を操る魔術師?「なるほどなっ!よし!じゃあ行くぞ!アブラカタブラアンニャラコンニャラ…」


アルド「って!どのくらい時間を戻すのか聞かなくていいのか!?」


シャル「それに変な呪文~!」



時を操る魔術師?「とりゃあぁあぁああぁあぁ!!!フッ…どうかな?時は戻ったかな?」


アルド「時が…戻って……ないな。」


エイミ「どうやら、時を操る魔術師だってことは嘘だったみたいね。」


時を操る魔術師?「はっ!?ち、違うっ!俺は間違いなく時を操れる!ただ~、まぁその~、まだ見習いで~失敗しただけだ!」


エイミ「だったら、今まで何回試したことがあるの?」


時を操る魔術師?「うーんとそれはだなぁ!…100回くらいかな~…」


エイミ「で、何回成功したの?」


時を操る魔術師?「ぜ、0回デス…。」


魔術師はガクッと肩を落としながら呟く。


リィカ「つまり魔法成功率は0%ということデス!」


エイミ「はぁ……。とんだポンコツ魔術師ね。」


エイミが呆れながら魔術師をにらみ向ける。


グレン「やっぱりそう簡単にはいかないか…。」


シャル「まだ諦めないで!もう少し探してみよ!」


アルド「あぁ!きっと見つかるよ。」


サイラス「そうよ♪次探しましょ♪」


全員「…………。」


アルド「え…?サ、サイラス?」


アルドが戸惑いながら聞き返す。


サイラス「なによ~?皆目を丸くしてぇ…そんなに見つめられると照れちゃう♪」


アルド「お、おいおい!あんたサイラスに何をしたんだ!?」


ポンコツ魔術師「お、俺は何もしてない!人格が変化する魔法にかかったんだよ!」


エイミ「どう考えてもあんたがその魔法をかけたんでしょ!」


ポンコツ魔術師「あぁ…俺はなんてダメな魔術師なんだ…いつも成功したと思ったら誰かの人格が変化する…。」


シャル「やっぱり原因はおじさんじゃないっ!」


エイミ「今から″時を操る魔術師″から、″人格を変えることが出来るかもしれないポンコツ魔術師″に改名しなさい!」


人格を変えることが出来るかもしれないポンコツ魔術師「は、ハイ…。そうします。」


エイミにこっぴどく叱られたポンコツ魔術師はそのままトボトボと帰っていった。


アルド「と、とにかく、サイラスは一旦このまま放置して、本物の魔術師を探そう!」


エイミ「そうね。」


サイラス「分かったわ♪」


エイミ「……あえてツッコまないことにするわ。」


しかし、アルド達が聞き込みをしたり外に探して回っても本物の時を操る魔術師を見つけることはできなかった…。
















































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