第2話

「どこもだめだな。まったく所在がわからん」


 雲をつかむような依頼になってきた。


 殺すにしても、そもそもどこにいるか分からないものは殺せない。


「二手に分かれようか」


「俺は、大臣に直接訊いてみる。依頼主の情報が得られるかもしれん」


「俺は、もう少し聞き込みをして帰るよ。たぶん無駄足だろうけど」


「大臣との会話は繋ぐから、インカムは入れといてくれ」


「わかった」


 その後も。

 聞き込みをするにはしたが、収穫はなかった。本当に存在するのか。疑問にさえ思えてくる。ただの、いたずらなのだろうか。


 違う。


 ただのいたずら程度で、彼は人をころしたりしない。電話先に、殺されるべき何かがいた。そう考えたほうが、妥当だった。恋人の感性は信頼できる。


 インカム。


 まだ、通信は繋がらない。


 道端。


 水に濡れた煙草が、捨てられている。


「おかしいな」


 晴れているのに。


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