水に濡れた煙草

春嵐

第1話

「仕事だ」


 電話を切った彼が、メモを渡してきた。


「俺の管轄じゃなさそうだなあ。君がやれよ」


「いやだよ。正体不明の奴なんか相手にしたくもない」


「じゃあ、なんで受けたのさ」


「しかたねえだろ」


 大臣の差し金だろうか。


「電話してた相手は?」


「しんだよ」


 彼は、声だけで人をころすことができた。殺すのではなく、ころす。ころされると、ただ働いて飯を食って眠るだけの機械ができあがる。


「まずは情報集めからだ。足でいくつか回るぞ」


「ああ」


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