016//閑話3

神殿があるのが首都のランパス。

王城があるのがその隣のハニーで、ターミナルがあるのが少し離れたウィンルーパス。

今はターミナル参拝を終えて、ウィンルーパスからハニーへやってきた処だ。


「さ。目的は果たしたし、服見よ服!!」

「服ぅ~?」

aが不思議そうに聞き返す。

後ろにはスクラグスが浮いている。あの後からずっと付いてきているのだ。会話には参加してこないが、どうやら観察されている。

「うん。気候に合わせようよ」

開いた瞳孔でシールに訴えるおねだり

シールはいつの間にか着替えていらっしゃいますが、こちとらずっと初秋用の長袖なんですよ。マルクトは春って感じだったからそのままだったし、イェソドも全然イケたけど、この地では正直暑い。真夏は外れているんだろうけど、見るに地元民も皆肩出してるし、ここは着替えねばなるまい。



そんなこんなで着替えも終えて、観光を楽しんでいる。

因みに、一応勧めたけどグールは着替えなかった。二日前の傷が残っているからかもしれない。そう考えるとイェソドで具合悪そうにしてたのも、カラとの相性の所為ばかりではなかったのかも。知らんけど。


「ネツァクはなんかアレだね、南国情緒溢れてるね」

大きな河があって、商人が船で行きかっている。葉っぱのでっかい植物や、原色の花もよく目につく。オウムやインコのような鳥がその辺を飛んでいるのも見慣れない。

「すごい活気だよなー」

亜熱帯気候の土地にはaもKもあんまり行かないから、色んな物が珍しい。

「確かに活気はあるが、街の活気ならティフェレトの方が凄いぞ」

「へー」

「でも街はこんなに活気あるのに、ターミナルの位置は何とも言えず寂しいね」

イェソドのターミナルはあんなに保護されてたのに、ネツァクのターミナルは遺跡に塗れて野晒しになっていた。

「ネツァクは航海技術が発展してるからな。さっき見た限り転送機能は切られてるみたいだったし」

なるほど。そんなこと出来るのか。あんまり使うような物でもないし、遺物でしかないのか。

「転送装置なんて歪だと思わないか?」

突然背後から話しかけられて、Kは仰け反った。

「あっ、さっきの人!!」

「はは、先程は本当に済まなかったな」

「もうやらないだろうからまあいいです。なんかバラも貰ったし…?」

「ああ。あの薔薇は大切にしてくれよ」

「…はぁ」

他の3人は気付いていたのか、リアクションがない。

快活に笑っていたお姉さんは、スッとトーンを落として耳打ちするように言った。

「今日はあまり神殿の方面へは近付かない方が賢明だ」

「…はぁ…?」

「さって、私も働いて来ねばなぁ」

ひとつ大きく伸びをして踵を返す。

「じゃあな異邦人。機会があったらいつか話でもしたいものだ」

「…え…どうして…」

異邦人だと見抜いたのか。

「…あ…行っちゃった…」

「なんか、不思議な人だね」

近付かない方が賢明だと言われても。今からまさに向かうのですが…

「どうする…?」

取り敢えずaとシールに判断を仰ぐ。

「まぁ用件は済ませてる。行かなくても問題はないが」

「とはいえ、まだまだ陽もあるし…」

なにより、禁じられれば行きたくなる。


忠告を無碍にしたツケはしっかり返ってくることとなった。

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