013//基盤の国で_4

ヴォン、と慣れた振動で穴が開く。同時に人間が二体転がり出てきた。

「―っ!」

「ふあーっ、しつこかった!」

肩をまわしながら溜め息を吐くa。

安心したと思い切ってるところ悪いんだけど…

「何があった」

Kの後ろからシールが尋ねる。

「え、ちょっともンッッ!」「大した事あらへん、はよ済まして次行こか!」

aの口を封じてグールが継ぐ。あからさまに怪しい。ふたりで何かひそひそと言い合った後、aはちらりと見張りに目を遣って口を閉ざした。そういうこと…なんだろうね、やっぱり……。

ちなみにグールがこっそりアゴで示した先、天井の隅には監視カメラが付いていた。抜かりないねぇ、この国はもう!

「K、とっとと済ませて行くぞ!」

バレない内にって聞こえるよ。


グールとaが急かすままに、サクっと手続きを済ませて出口に振り返った瞬間。

遮るように突き出された腕。

うまく隠してたと思ったけど、カメラに映ったふたりの姿が追っていた相手だと認識されたか、それとも転移を使ったK達が悪魔に認定されたか、はたまたただ単に、入場手続きもせず突然現れたふたりに対する警告か。

どうやらお姉さんは、K達を帰してくれる気がなくなったらしい。


ここで真偽を確かめとくのと突破するのと、どっちが面倒じゃなかったんだろう…。




「ホント、何したのさあんたら!」

気が進まないなぁ、とか言いながらaが心地良いほど鮮やかに見張りのお姉さんのミゾオチに一発決めて、部屋の前の見張りも素敵に手刀で昏倒させてセンタービルを脱出後、現在追っ手を振り切って逃走中である。

「何っつっても…、向こうが突っかかってきたんだよ!」

人ごみ溢れる街での逃亡はキツイ。特にKはちっちゃいし、何度か前が見えなくなってはぐれかける。思い通りに進めないストレスで目に涙を浮かべながら、誰かの裾を掴もうと手を伸ばし――適当に何かにしがみ付いた。

「ぐ! 何やお前か! 何すんねん具合悪い奴に向って!」

「んだぁグールかよ! グール背高いから見つけ易かったんだよ!」

「それでなんでタックルやねん!」

「うっさい! Kちっこいの! 黙って連れて行け!」

「…ち!」

「て、えッ! だからって小脇は嫌ァ~っ!」

Kは壁際までグールに運ばれる形になってしまった。




「あ~あ~、まだ観光してなかったのに~~!」

大きくうねる龍の上から、青い国を名残惜しく見つめる。

壁際まで逃げ切ったものの、そう簡単には壁を越えさせて貰えず結局実力行使で逃げ出したのだ。

街中では人とかビルとか、障害物がたくさんあったので青龍ちゃんもフェニックス君も招び出さなかったんだけど、あまりにウザいから招んじゃいました―――aがね。

招んだは良いけど召喚スペースが足りなくて…つまり、現れきれる程のスペースがなくて、それでも無理やり招んだ結果壁の一部が損壊、と言う事になってしまったけど知ったことか!!

「ね、また来ようね!」

「ごめん、K」

aの言葉に続かせて、

「「「もう二度と来たくない」」」

お疲れ顔の三人は、見事にハモった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る