『HOMIE KEI~チカーノになった日本人~』 食堂でよく隣に座ってくるチンピラは、マフィアのボスでした

 アメリカの刑務所でメキシコ系マフィアの一員となった男性の話。


 少年ヤクザとして名を馳せていた男性は、ドラッグを海外から輸出する際に逮捕された。


 その方法がまたえげつない。

 なんと、身体障害者の車椅子に大量のコカインを積んでいたのである。

 ボランティアと称して障害者を車椅子ごとコロンビアへ連れて行って、車椅子のパイプ中に薬物を詰め、また連れて帰るという。

「当時は障害者の車椅子なんてチェックしなかったんですよ」

 とのこと。

 結局KEI氏は組織に売られ、羽田で捕まった。


 アメリカの刑務所へ入り、独房で過ごす日々。

 食事をしていると、チカーノのグループが「どけ」といってきた。

 KEI氏はなめられてはいけないと、会話をする。

 その相手こそ、チカーノのボスだったのである。

 誰もが殺されると思っていた。

 しかし、最後まで突っ張っていないと、刑務所では行きていけない。

 やがて、会話らしい会話ができるようになっていくと、チカーノと親しくなっていく。


 すげえ、軽い異世界転生か、異国風ラブコメのような世界だ。

 

 以前

「コミュ力のねえ奴が、異世界で生活できるわけがねえ」

 なんてツイートが流れた。


 KEI氏は日本語しか話せない中、三年を過ごしている。

 しかし、チカーノと親しくなって以降は海外映画でよく出る英語などをメモ書きして、チカーノに訳してもらうという行動を行った。

 それによって、言葉が通じるようになっていく。


 工夫次第で、人は変わるのだ。



 出所後、氏はネグレクトを受けている子どもたちに奉仕する活動をしているという。


 KEI氏は、子どもたちへの奉仕活動について

「どうして続けているんですか?」

 と、映画関係者に尋ねられた。

 氏は

「自分は罪を償うためにしているわけじゃない」

 と答える。


「ボクはヤクザになって、昔大きな事件を起こして、亡くなった方もいる。地獄に行くだろう。それは甘んじて受けますよ。善行を積んだから許してくれなんて、図々しいことは考えていません」

 と、語っている。

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