『ガタカ』 世界一泣ける検尿シーン

 遺伝子だけが、人間の可能性ではないと証明した男の生涯。


 人間の可能背がすべて遺伝子で決まっている、ディストピアっぽい世界。


 イーサン・ホーク演じる主人公は、生まれてからずっと「三〇で死にます」と運命づけられていた。

 主人公の夢は、宇宙飛行士になること。


 たゆまぬ努力を重ね、優秀な弟にも勝ち、自分の目標へ向けて邁進していたが、現実は厳しかった。

 彼は宇宙局に近づくことは出来たが、与えられた仕事は清掃員だった。


 そこに、うまい話が舞い込んでくる。

 

 主人公はDNAブローカーと接触し、


「優秀な人材になりすまして、宇宙局に勤めろ」

 

 という。


 ジュード・ロウ演じる遺伝子提供者は、適正こそあるものの、事故で車椅子生活を強いられていた。


 顔は主人公と瓜二つで、主人公は見事彼になりすます。


 近眼はコンタクトで矯正し、血液を溜め込んだ人工指紋と尿を提供される。


 晴れて彼は、宇宙飛行士になることが決まった。


 しかし、彼を疑っていた上司が殺害されてしまう。


 証拠品から、元清掃員の主人公に容疑がかかる。

 実際、彼は殺していないのに。


 主人公は、宇宙へ飛びだつまで正体を隠し通せるか。


 

 SF世界が舞台なのに、まったくSF的な知識は不要である。

「殺人事件を通じて、自分の正体がバレるかも知れない」

 という、サスペンス要素で話を引っ張っている。

 SFなのに、純然たるミステリなのだ。

 犯人の特定がポイントではないので、どっちかというとサスペンスかな?


「とりあえず、身分証明のために細胞が必要という舞台」

「人間の将来は、DNAによってすべて決まっている世界」

「『しかし、努力次第で覆せるんだ!』というテーマ」


 これだけわかっていれば、十分楽しめる。


 たしかに現在は

「人間の持つポテンシャルの50%は遺伝子で決まっている」

 という、遺伝子優位論が有力となっている。


 しかし、この映画を見ていると、そういったものは行動次第で乗り越えられるかも知れない、と思わせてくれる。


「アンチ血筋もの」としては、最高の作品ではないだろうか?


 特にラストで、主人公が検尿する場面は、

「世界一泣ける検尿シーン」

 といっても過言ではない。

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