『血と骨』 個人的に最も教育に悪いビートたけし出演映画

 ビートたけし氏が、凶暴な実業家を演じた作品。


 元は、『月はどっちに出ている』の原作者、梁石日(ヤン・ソギル)の小説。第11回の山本周五郎賞を受賞。

 本作の主人公は、作者の実父がモデルだという。



 たけしは愛人に子どもを産ませようとしているが、愛人が不妊症だったためにDVを繰り返す。


 しまいにはブタを解体し、生肉を食わせるという暴挙に出る。


「これを食ってワシの子どもを産め!」

 

 と迫るたけし氏の狂気じみた演技には、震え上がってしまう。


 だって、ウジが沸いた生肉を無理やり食わせようするとか、ありえない。

 女性演者も大変だったろう。


 世間では、

「ビートたけし教育に悪い映画は?」

 といわれると、決まって


「バトルロワイヤル!」


 と返ってくるだろう。


 個人的には、あれは名作に違いないが、


「十代の若者が理不尽な法律に抗うため、武器を持って戦う」   


 といったシチュエーションこそが売りで、センセーショナルさを生んだんだろうと、オレは認識している。


「真似してはいけない暴力を表現する」

 といった、たけし氏の気持ちを汲んでいることもあるだろう。


 本作は、そんな『バトロワ』の描写すら鼻で笑えてしまうほど、危険な暴力にあふれている。

 個人的には、本作こそ「学生が見てはいけない映画」と思えた。視聴に耐えられないだろうと。


 刃物や拳銃やらそんなものはテーマとしてほとんど出ないにも関わらず、人間性こそが狂気であり、武器がなくても人は怖いのだとわかる。


 そんなものがなくても、おぞましさは描写できると、この映画は思い知らせてくれる。



 ただ「暴力描写という面で言えば」の話である。


 バトロワは

「若者が武器を手にとる行為にこそ、意味がある」

 ので。

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