『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』 悪カワいというか、心優しいレディース

 ジョーカーと別れ、ヤケになったハーレイクインが、自立する話。


 老けた女刑事は、死んだ富豪の隠し財産の在処が隠されているダイヤを探していた。


 一方ハーレイは、自分やジョーカーに恨みをもつ連中から、追いかけ回される。

 

 あげく、マフィアに捕まって、ダイヤを盗んだスリの少女を追い回すことに。


 少女を無事に助け出し、ホームに匿うが、マフィアに見つかってしまう。


 ギャグの精度で言えば、「超能力のあんまり出ない『シャザム!』」である。

 デップーほどやり過ぎてはないけど、ユニークさはある。

 ほぼ全員が普通の人であり、武装も主に徒手空拳だ。

 とはいえ、ちゃんと痛そうであり、リアリティもある。

 


 前作『スーサイド・スクワッド』では、賑やかしのマスコットという印象が強く、チャチャ入れ枠に見えていた。

 あくまでもジョーカーの手先ポジであり、それがいい方に作用していたように思う。


 

 今回は、「男に捨てられた哀れな女」というレッテルを貼られ、度々化粧が崩れる事態に陥る。


 冒頭から化学薬品工場を爆破する騒ぎを起こしているが、表情はどこか悲しげだ。


 スリの少女と出会い、彼女を守ることによって人間的に成長をしていく。アンチヒーローではあるが、前向きで自信に満ちた女性として描かれる。


 誰が言っていたか忘れたが、

「創作内で、主人公が欠けたモノを取り返すには子育てが一番」

 と聞いたことがある。


 本作は、そのシステムが活かされているように思えた。

「ワルカワイイ」を推したかったようだが、どちらかというとハーレイは「自立を目指す女」である。「少女のよき姉」として活躍する。

「腐れ外道を、更なる底意地の悪さでシバく悪女」

 というより、

「陽気だが乱暴なレディース」

 の描写に見えた。


 全体的に時系列で話が進まず、しょっちゅう時間が巻き戻る。

 ナレーションで解説するので、事態の補完は可能かと。


 気に入っているキャラは、「ハントレス」。

 先述した富豪の娘だ。

 彼女は敵対するマフィアに家族を殺され、一人生き残った。 

 マフィアの配下の温情で暗殺組織に拾われる、暗殺兵器として育つ。

 訓練の仕方が面白い。

 鏡に向かって決め台詞を吐くシーンが、思いっきり『タクシー・ドライバー』のトラヴィスなのだ。

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