『鉄男』 ダークサンシャイン池崎

 走ることに固執し、脚にエンジンを取り付けようとした男がいた。

 演じているのは塚本監督本人だ。

「やつ」は太ももを切り裂き、中にぶっといネジを突き刺す。

 いきなりグロシーンから始まる。


 脚にはウジが湧き、やつは駆け出す。

 やつを、主人公は車で跳ね飛ばしてしまった。


 そこから、物語は動き出す。



 翌朝、男がヒゲを剃っていると、頬に金属片が飛び出ているのが見えた。

 引っ張り出そうとして出血してしまう。


 駅で電車から降りると、左手が鉄くずに覆われた女に襲われる。

 どうにか女を撃退したが、今度は自分が鉄の塊になっていく。

 腕からエンジンのような部品が飛び出し、足首からもパーツが。


 主人公は、鉄パイプのような触手を持つ女に、バックで突かれる幻想的な夢を見る。

 目覚めて顔を洗っていたら、頬の金属部分が更に大きくなっていた。

 

 体じゅうが金属化し、主人公は狂気に飲み込まれていく。

 全てを忘れるため、彼女との逢瀬を重ねる。 

 だが、男の股間にドリルが生え、彼女を突き殺してしまう。


 脳まで金属化し、撥ねた男に乗っ取られているのだ。

 やつは生きていた。常に敬語で、やけに礼儀正しい。

 主人公は、やつとの最終決戦に挑む。


   現れた「やつ」の姿は、まるでサンシャイン池崎みたいな短距離走ウェアの男だった。


  本作の特徴は、アクションシーンの殆どが、写真コマ撮り連写を使っている。

 低予算なのに、この疾走感!

 終始モノクロで撮影されている映像故か、チープさより不気味さの方が勝る。

 だが、撮影状況を考えると、さぞめんどくさかっただろうと思わせる。


|創作ポイント:天才の頭の中


 やべえ。


 まったく理解できない。

 脳が分析を拒絶するほどのスケールだ。

 なのに、見入ってしまうこの魅力。


 テリー・ギリアムやキューブリックなど、オレなりにワケ分からん系は多く見てきた。


 オレ的に、あんまりこの手の「よく分からない系スプラッタ邦画」は避けてきたように思う。

 それゆえに、解析が追いつかねえ。



 個人的には、押井守作品や『ゼイリブ』的なB級アクションを想像していた。

 が、本作はいい意味で、予想を裏切ってくれた。


 アニメ映画『AKIRA』の「鉄雄」を意識したのかと問いかけに対して、「彼はまだ鉄になりきってない」と返したという。


 この次点で「何を言ってるんだ?」という疑問が湧く。


 説明はできないのだが、謎の説得力があって、圧倒された。



|まとめ


 天才の作品は、理解しようと思った次点で負け。

 むしろ勢いに任せて受け入れる。

 

  

 

 ラストを見て、


「そういえば『老人Z』もこんな終わり方やったよなー」


 と思ったヲタは、オレだけやないはずや。

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