『ズーランダー』 カウチポテトアクションの決定版
トップモデルだったデレク・ズーランダーは、ライバルに敗北した。
慰めてくれた友人たちも、ガソスタではしゃいだ拍子に爆死してしまう。
そのショックで、主人公はモデルを廃業する。
田舎の炭鉱で働くが、誰も彼の偉業を認めない。男の世界ではモデルの仕事など笑いの種にしかならない。
居場所をなくした主人公の元に、アーティストからオファーが来た。
だが、その男の目的は、彼を暗殺者に仕立て上げること。
マレーシアの首相は、児童労働禁止を訴えている。
彼がいる限り、ファッション業界は衰退してしまう。
その首相を暗殺するため、単細胞で洗脳しやすいモデルを殺し屋として訓練するのだ。
哀れ、ズーランダーは洗脳され、暗殺マシーンへと鍛えられてしまった。
デザーナーは、ファッションショーにマレーシア首相を呼び、殺害を計画する。
えっ、わけ分からん?
大丈夫。オレにも分からん!
本作は、ムダにキャストが豪華である。
マレーシア大統領の暗殺を企てるボスの子分が、ミラ・ジョボビッチ!
いきなりライバルとウォーキング対決を始める。
ジャッジするのは、デヴィッド・ボウイ本人!
一瞬だが、トランプ大統領まで出ている。
「ズーランダーの身に危険が迫っている」
とタレコミしてきた人物が、デイヴィッド・ドゥカヴニー!
黒幕であるマネージャーのPCがiMacなのも、時代を感じさせる。
バカバカしい設定のまま、特にシリアスな展開もなく、話は大きく膨らんでいく。
いわば、不条理コメディである。
個人的に、この時代のアクションコメディが、一番見やすいと思う。
昨今のアクションでは、なにかと無駄なシリアスを吹き込みがちだ。
だが、本作はそういったストレスを極限まで削減している。
こんな映画は久しく見ていない。
それでいて、怖さはしっかりとエッセンスとして添えられている。
ミラ・ジョボビッチ扮する幹部だけが、最後まで話を引き締めてくれるのだ。
とはいえ、本作はバカコメディを徹底している。
このような映画を「カウチポテトアクション」という。
「ソファに寝そべって、ポテチ食いながら見る映画」なわけだ。
バカコメディに、シリアスはスパイス程度でいい。
説教臭い作品は、逆に「無駄シリアス!」と、煙たがられる。
本作は、伏線の張り方が非常に上手い。
80年代の懐メロが、この映画ではガンガン掛かる。
だが、実はそれが「主人公を殺人マシーンに変えるスイッチとして機能する」
このように、小道具がただのモラトリアムで終わらない。
オバカなんだが、かなり計算された仕掛けも施されている。
頭からっぽの方が、夢詰め込める。
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